第3話 オークって美味しいの?
「えっ、冒険者しているんですか」
「おうよ。もし、この馬車が魔物に襲われたら俺が撃退してやるからな」
今は街へ向かう駅馬車の中。
駅馬車は街と街を結ぶ街道を定期的に走っている。
この馬車は2頭立てで、一般的な駅馬車。
定員は12名だけど、御者は除くと4人しか乗っていない。
「この辺りは魔物が出るんですか?」
「ああ。この辺りはオークが出たりするぞ」
「ええーーっ。オーク?美味そうっ」
「おいおい。それ、ちょっと違わないかい?」
一般人はオークと聞くと怖いというのだそうだ。
だけど、僕にとっては美味い食材のイメージが強い。
オークは直立した豚。
美味くないはずがないよね。
「オークって美味いんですよ」
「知ってるよ。塩で味付けして焼くだけですごく美味くなるな」
「はい。塩焼きも美味いですね。だけど僕はパンチ焼きをお勧めします」
「パンチ焼き?」
「特にそちらの方は、魔法使いですよね。パンチ焼きは魔法使いの方には特別でして」
オークを含めて魔物というのは、魔石が取れることがある。
この魔石、実は魔臓という臓器の中にできる。
魔臓は、体内の魔素を一定の濃度に保つ臓器で、そこには一番魔素が貯まるようになっている。
長年、魔素が貯まっていると魔素が固まり石の様になってしまう。
それが魔石と呼ばれる物だ。
魔素の塊だから、魔法使いにとっては魔力の元として使うことができる。
魔臓や魔石に限らず、オークの身体には魔素が充満している。
だから、この魔素を人間の体内に取り込むことができれば魔力が増えることになる。
ただし、残念ながら人間は魔素をうまく食べ物として取り入れることができない。
人間には、魔素を消化吸収することがとても苦手だ。
魔物にはある魔臓もない。
「パンチ焼きは料理法が特別でして。オーク肉の中にある魔素を酵素を使うことで人間にも吸収できるように変えるんです」
「魔素を人間が吸収するとどうなってしまうんだ?魔物になってしまわないのか?」
「なりませんって。魔法使いなら魔力が増える効果があります。普通の人だとパワーが上がります」
「そんな効果が・・・」
「そしてなにより、美味いんです。パンチ焼きを食べると身体がかーっと熱くなる。その瞬間の快感って本当にたまらないんですよ」
「たまらねぇ」
話をしているだけで、オークのパンチ焼き食べたくて仕方なくなってきた。
これは僕だけでなく、一緒に乗っていた冒険者の人たちも、らしい。
「おい。次の駅で降りるぞ。オークを狩ってくるから、パンチ焼きというのを喰わせろ」
口は災いの元っていいますが。口はオーク狩りの元になってしまいました。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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