第28話 なんちゃって高級料理にチャレンジ
本来3日かかるスープ料理を明日の朝までに完成する。
錬金料理人の僕に与えられた課題はちょっとハードルが高い。
「まずは、時間が掛かるところを先にやってしまいましよう」
時間がかかるのはスープベースを作るところ。
レシピでは一連の作業として書いてあったが、スープベースさえ作ってしまえば
後は具材を入れて煮込むのは時間はそう掛からない。
野菜のスープベース。
骨から作るスープベース。
干物から作るスープベース。
それぞれ平行作業で行う。
それも、錬金魔法の時短処理を行う。
これは、時空魔法という高度な魔法の応用で錬金魔法としても高度なテクニックだ。
そのために用意したのが、金貨3枚。
金貨の成分である金というのは時間経過による変化が少ない金属。
実は、その内部に時空コントロールの結合魔素が含まれている。
この結合魔素を取り出すと、金はただの銅になってしまう。
金貨3枚の金から取り出した結合魔素をリバース処理で普通の4元素の魔素に戻す。
このときに、周りの時空にひずみが生じるのだ。
本来の時間の進みの15倍の時間が経過してしまう。
そのひずみの中にスープベースの鍋を火にかけて置いておく。
3時間ちょっとで2日間煮込み続けたのと同じ効果がある。
「おっと、気を抜くと焦げてしまうぞ」
15倍の時短効果があるから、かき混ぜたり水を追加したり、火力を調整したり。
とにかく忙しい。
だけど、時短効果のおかけで2日間の煮込み時間を短縮できた。
あとは、具材を用意して、煮込むだけだ。
ただ、気づいてしまった。
このレシピには、驚くほど多くの黄金比率が使われていることを。
具材と具材。具材とスープ。スープと香辛料や調味料。
知っているだけで10を超える黄金比率を使っている。
そのうえ、私が知らない黄金比率と思われるものすら存在する。
黄金比率の新しい物をいくつも仕入れてしまった。
「だけど、ひとつだけ落ちている黄金比率があるぞ」
なぜか、メジャーとは言わないけど、サブメジャークラスの黄金比率が掛けている。
これでは、せっかくの統一した黄金比率が崩れてしまう。
「よし、勝手に調整してしまえ」
どう考えても、この黄金比率は適用したほうがいい。
それがないと、錬金料理としてのレベルが落ちる。
黄金比率をすべて調整して、最後のスパイスをふりかけて、スープは完成した。
できあがった時はもう朝になっていた。
店の開店時間の30分前。
危なかった。
ギリギリセーフだ。
「できました」
半分寝ているオーク顔のチーフに言った。
ちゃんとできたかわからないまま、お店が始まってしまうぞ。大丈夫なのか。




