第27話 大鍋担当になりました
オーク顔チーフにつれて来られた場所は、でっかい鍋が15もある部屋。
コック帽をかぶった人が10人ほど働いている。
「ここはな、いろんな料理のベースになるスープを作っているところだ」
「すごいですね。あの一番大きいの、何人前くらいつくれるんですか?」
「スープなら200人前と言ったところだ」
「へぇ。もしかして1日中煮ていたりして?」
「1日なんてもんじゃない。もう3日は煮ているぞ」
「すごいですね」
「だがな。今、ひとつ問題があってな」
「なんでしょう」
「明日のスープが足りなくなりそうなんだ」
「そうなんですか。じゃあ、さっさと作りましょう」
「それがな。2日煮込む必要があってな」
そういうことか。
絶対間に合わないってことか。
で、野菜剥きが早かった僕がなんとかしてくれるんじゃないかと。
「えっと。レシピどおりじゃなくてもいいんですか?」
「この際だ。目をつむろう」
「ばれたらクビになりませんか?チーフが」
まだ入ったばかりの僕はいいけど、ふだん何年も働いてやっとチーフになっただろうオーク顔チーフが首になってしまうのは、ちょっと問題ありかなと。
「なに。明日スープが足りないと分かった時点でクビさ」
「ええーー。そんな一回の失敗で?」
「そういうところなんだよ、ここは」
半分あきらめているってことか。
じゃあ、僕が失敗しても同じってことか。
「それならばやってみましょう」
「やってくれるか?」
「できあがったスープってあります?」
「これだ」
ほう・・・なんとも澄みきったスープだこと。
黄金色って感じだね。
このスープを作るんだね。明日までに。
「うまっ」
一口飲んだら、複雑な味が織りなす美味しさに卒倒しそうになる。
そうなんだ。僕がここに入りたかったのは、こんな料理を体験したかったからだ。
確かに錬金料理だと人々を喜ばすことはできる。
だけど、僕の料理人としての腕がまだ未熟だから限界がある。
このスープが作れる様になったら、きっと他の錬金料理にもすごい影響がでるはずだ。
「このスープ、全部で20以上の具材が入っていますよね。調味料や香辛料は以上ですね」
「ほう、分かるか。具材は24。調味料と香辛料は32だ」
うわっ、予想以上だ。
さすがに飲んだだけじゃレシピは想像しきれない。
「レシピみせてください」
「ああ。本当は極秘なんだぞ。絶対他に漏らすなよ」
だろうなぁ。
この味に行き着くまで何十年かかったのかって味だしね。
レシピじっくりと読んだだけで、この料理のすごさがバシバシ分かる。
「えっ、このタイミングでいれるのか!」
「だけど、これだと味がおかしくなるだろう・・・あ、これで中和するのか!」
とにかく複雑なレシピだ。
だけど、10分で分析完了。
「どうだ?」
「うん。やってみましょう」
錬金料理で明日の朝までに完成するのか!
スープは料理の基本です。




