第26話 野菜剥き卒業
「おいおい。そんな。今日のバイト代なくなってしまうよ」
情けない顔をしている二人。
大銅貨90枚づつ。
今は持っていないというから、貸しってことで。
「しかし、そのナイフ、いいなぁ」
「貸しましょうか」
「いいのか」
予備で作った野菜剥きナイフをふたりに貸してあげる。
「それじゃ3人で、みんな剥いてしまいましょう」
「「おおーー」」
ふたりとも面白い様に剥けるから、楽し気に野菜を剥いている。
さすがにプロだというだけあって、ナイフを貸したら僕より早く剥きだした。
「これだと普通の10倍は早いな」
「でしょ」
「ここにある分全部、30分もあれば剥けるな」
「そのくらいですよね」
「チーフに報告するのが楽しみだ」
オーク顔チーフは、びっくりするだろうなぁ。
「もう終わりました」なんて報告したら。
そんなことを話しながら楽しく30分くらいで野菜剥きを終えた。
「ふぅ、終わった」
「終わりましたね」
「チーフに報告してくるな」
「はい」
嬉しそうに出て行った。
「ミト、楽しい先輩でいいな」
「いつもはあんなんじゃないよ。怒ってばかりで」
「へぇ、そうなんだ」
先輩料理人の話をミトとしていると、扉がパタンを開く。
「ほら、見てください。剥き終わっているでしょう」
「ほ、本当だ!!!」
ドヤ顔の先輩料理人。
オーク顔でおどろいているチーフ。
「今日の分はこれで終わりですよね」
「むむむ。よし、お前ら、別のとこを手伝え」
「「ええええーーー」」
ふたりは野菜を茹でる人のとこに回されてしまった。
僕はと言うと、オーク顔チーフに別の部屋へ連れていかれた。




