第19話 ダンジョン塔の屋台
「いらっしゃいませ。ダンジョンに入る前に、腹ごしらえはどうですか?ごろごろオーク汁、うまいすよ」
朝から僕は、屋台をオープンした。
屋台と言っても、コザを敷いて大鍋と魔石コンロを置いただけ。
そこで、オーク汁を作っている。
オーク汁は豚汁のオーク版。
根菜を大き目に切って、薄切りのオーク肉の燻製を入れた物。
味噌味だ。
味噌は豆を発酵させて作った自家製。
このあたりの農家はそれぞれの家の味噌がある。
「腹が減っては冒険はできると昔から言われています。兄さん。ダンジョンに入る前にいかがですか?」
「一杯いくらだ?」
「銅貨3枚です」
銅貨は一番安い貨幣だ。銅貨が10枚で大銅貨になり、大銅貨10枚で銀貨、銀貨10枚で金貨、金貨10枚で白金貨。
銅貨1枚は、現代の価値にするとだいたい100円程度になる。
「ちょっと高いな。値引きしてよ」
「兄さん、そんなセコイこと言うのやめましょうよ。ここでガツンと精力つけて、ダンジョンで宝物一杯ゲットしてきてくださいよ。魔物の肉のドロップ品なら私が買取ますし」
「そうだな。ではオーク汁を喰って、オーク肉をゲットして買い取ってもらおう。一杯くれ」
「まいど、ありっ」
大きい木のカップにオーク汁をなみなみと注ぐ。
根菜がごろごろと入っていて、十分煮てあるから柔らかい。
オーク肉は一度燻製にしたものを水でもどして使っている。
味に深みが出ている。
そこに、南国の果物10種をブレンドして発酵させた酵素をプラスしている。
オーク肉には火魔素が含まれている。
ただ、普通にオーク肉を食べるだけでは人はオーク肉の火魔素を吸収できない。
酵素を使うことで、火魔素を含んだオーク肉を吸収しやすくしている。
見た目はただのオーク汁に見えるが、実は立派な錬金料理なのだ。
「うまいな、これ。野菜の味が汁に溶け込んでいるぞ」
「でしょう。うまいだけではないんですよ」
「うまいだけではないって?」
「ほら、身体がぽかぽかしてきて、パワー充填した感じしませんか?」
「そういえば・・・そんな感じだ」
「ダンジョンに入るんだから、最大パワーで入るのがいいよね」
「まったくだ」
最初、オーク汁を頼んできたのは、剣士をしている若い男だけ。
ほかにも、おじさん剣士と魔法使いらしい女性がいる。
3人パーティだ。
「ほら、お前たちもどうだ?」
「ええ、おいしそうね。私も」
「俺も頼む」
「毎度あり~」
うん。幸先がいいスタートだ。
屋台を始めて、最初のお客さん。
このダンジョンの塔は、なかなかの人気スポットで、1日200人くらいの冒険者がチャレンジするらしい。
そのうちの1/5として4O杯分のオーク汁を用意した。
今日は、どれくらい売れるのかな。
楽しみだ。
今日は4話アップを予定しています。
書籍化も決まったこっちもよかったら読んでくださいね。
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