第17話 聖なる泉に起きたこと
エルフの森を奥に向かって歩いていく。
途中、魔物が何体か出てきたけど、一緒に行っているエルフ兵たちの弓矢で撃退した。
一時間もあるくと、森の中にちょっと広い広場みたいなところに出た。
そこの真ん中に小さな池がある。
「あの場所が精霊が宿る泉だ。美しい湧き水がこんこんと沸いている泉とそこから流れ出る水が溜まってできた池だ」
どこまでも透明で美しい池。
そう聞かされていたんだけど・・・なんか変!
透明ではなく白濁している感じがする。
「あれ?ここ、本当に精霊の宿るという、聖なる泉なのか?」
どうみても、そうは思えない。
なんか、あまりきれいな池にも見えない。
「間違っていませんか?」
「間違うはずはない。ここが精霊が宿る泉のある場所で間違いない。しかし・・・」
エルフ王も、ここに来るまで語っていた泉と目の前の泉があまりに違うことにショックを受けている。
「なんで、こんなことになってしまっているのか?」
原因を調べようと池に近づくと池の中からどす黒い紐状の物が伸びてきた。
「!」
エルフ王の身体に巻き付いて池の中に引きずり込もうとする。
エルフ兵たちは、機敏に動きどす黒い紐状な物を剣で叩き切ろうとしている。
「切るんじゃない。こいつを引っ張って、本体を池から引き出すんだ」
エルフ王の指示で3人エルフ兵と僕はどす黒い紐を引っ張っていく。
綱引き状態で最初はこちらと池の中の何かは、同じくらいの力でピクリとも動かなかった。
引き合いを10分ほど続けていたら、だんだんと池の中の引く力が弱くなってくる。
「よし、一気に引き上げよう」
エルフ王の号令で皆、全力で引きにかかる。
池の中から大きな白い何かが出てくる。
「もう一息だ」
思いっきり引くと、真っ白いどでかいガマガエルが飛び出してきた。
「なんだ、こいつ。カエルの魔物か」
「こいつがいたから、泉が汚れたんだな」
白いねちゃねちゃな粘液をまとった大ガマガエル。
こいつを駆除しないと、聖なる泉は汚れたままだ。
「倒せますか、あいつ」
「もちろん。あのくらいは余裕で」
エルフ王を中心に3人のエルフ兵がフォーメーションを組む。
僕は戦闘は苦手だから、邪魔しないように後ろに下がる。
勝敗はあっと言う間に決まった。
最後はエルフ王が大ガマガエルの首を刎ねた。
「さすがです」
「なに、簡単なことよ。しかし、困った。こいつを倒してもすぐには聖なる泉が綺麗にはならないぞ」
「それには、僕に案があります」
要は泉の水を浄化すればいいってこと。
森の中から、手ごろなサイズの木をエルフ兵に切り出してもらう。
穴を掘って、その木を入れる。
「火の魔法を使える方、いますか?」
普通に火を使うこともできるが、火の魔法の方がコントロールできる分早く出来上がる。
「王を含めて私達4人は火の魔法は使えます」
「さすが、エルフですね」
エルフは魔法属性が高いと聞いていたが、4人とも使えるとは、ちょっとびっくり。
「この木を炭にしたいんです」
「簡単ですよ」
4人で手分けして木を炭に変えている。
これで水の汚れを取る炭は確保できる。
ただ、それだけでは不十分だ。
魔素のレベルでも浄化が必要となる。
本来、聖なる泉は純粋に水魔素だけが含まれる水なのだ。
今は、他の魔素も含まれてしまっている。
錬金料理は別名魔素料理とも呼ばれている。
料理の中に含まれる魔素で錬金効果を出すことが多く、錬金料理人は魔素コントロールに関しては専門家だ。
「これもローストしてください」
火の実、気の実、土の実。
3種類の木の実をマジックバックから取り出して並べる。
それぞれ20個づつある。
これらは魔素を吸い込む特性がある木の実。
もちろん、水の実もあるけど、今回は必要ない。
この3種の木の実をローストすると、魔素吸収能力がアップする。
さて、これで準備完了。
まずはを大量に池に入れて大ガマガエルの粘液を除去する。
これで見た目は綺麗な水に変わる。
その後に、3種類のローストして木の実で水魔素以外の魔素も除去する。
「ふぅ、完成。これで綺麗になったぞ」
「すごいですね。あんなに濁っていた泉がこんなに綺麗に」
「元々は泉の力です。こんこんと美しい水が湧き出ているんですから」




