山脈を越えて~その5~
なぜだ!!なぜ親蜘蛛戦が終わっていない!!
あと、2~3話で山越えれればいいかなとか思いだした今日この頃
「こっちは片付いたぞ!シゼル様!回復お願いします!」
現在7合目、もうすぐ8合目に入るといったところでおれ達は大量の蜘蛛に襲われている状態、コッキが蜘蛛の一角を片づけつつもやはり多勢に無勢、毒攻撃を受けてしまったようだ
「あいよ~、他は大丈夫か?」
「私は大丈夫です!リザードマン達もなんとかやっているみたいですね」
リザードリーダー達も毒や麻痺毒は受けてるみたいだが耐性が少しはあるのか我慢できる程度なら回復を頼んでこない、が、頼んできた時は結構危ない状態になってるので早めに言ってほしいものだ
「もうすぐ親蜘蛛の所って時にこれだ、結構相手さんは焦ってるのか?まだ回復しきってないのかもしれないな」
「それでしたら、蜘蛛達等相手せずに親蜘蛛を目指した方がよろしいのでは?回復しきっていないのであればこれは間違いなく時間稼ぎでしょうし・・・・・・」
「けど、無理していざ親蜘蛛と戦うって時に消耗してたら意味ないだろ?着実に進めてはいるんだから今のままでいいですよね、シゼル様」
そうなんだよな、少しずつではあるが進めてはいるんだ・・・・・・、思ってたほど毒や麻痺毒が強くない、だからリザードマン達もなんとか耐えて攻撃に参加する事ができてる・・・・・・
いや、まてそれはおかしい、ここにいる蜘蛛達は下にいた蜘蛛よりも強いはずじゃなかったか?なのになんで下にいた蜘蛛と同じくらいの毒性なんだ?強さは上がってもスキルレベルは変わっていない?・・・・・・わからん、鑑定出来ればすぐわかるんだろうけど
だが、俺たちは着実に親蜘蛛まで進んでいる、それは間違いないはずだ、だけどなんだこの違和感は・・・・・・、リザードマン達は回復はしてはいるが麻痺毒のせいか少しづつ動きが悪くなっている気がするし、コッキやシュキにしても体力、魔力は確実に消耗している・・・・・・
いや、消耗させられているのか!!親蜘蛛が回復するまでの時間稼ぎなんかじゃない!!元からおれ達を弱らせて親蜘蛛の餌にする気なんだ!!ここまで増えた蜘蛛達だ、親蜘蛛さえいればいくらでも増えることが出来るんだろう、どれだけ数が減ろうが構わない、むしろ減った方が親蜘蛛に献上する分以外の取り分は増える・・・・・・
不味いな、ただでさえ親蜘蛛には近づいているんだ、もし誘導させられてるとしたら、最悪ここに親蜘蛛が・・・・・・
きっとそれがフラグだったんだろう・・・・・・、今まで目の前にうじゃうじゃいた蜘蛛達が突然道を空けたかと思ったらそいつが姿を現したのだ
大きさからして間違いなく親蜘蛛、その大きさは今まで戦っていた蜘蛛が人1人の大きさくらいだったのだが親蜘蛛は人12人ほどだろうか・・・・・・口には鋭い牙を持ち前足はもはや刃物としか思えない程鋭く尖っている、なによりもコッキやシュキ、リザードリーダーよりも確実に強い、各上であることが見ただけでわかってしまうほど体から出る威圧が凄まじかった・・・・・・
「あぁ・・・・・・、これやばくないか?」
「シゼル様、正直どうしたら勝てるのかわからないんですけど」
「申し訳ありません、私も何も考えつきません・・・・・・」
うん、仕方ないよね、ここまでとは予想外にも程がある・・・・・・、コッキ達ではどうしようもない、ならおれなら?絶対に勝てるとは言えない、魔法だけならそこそこいけるかもしれないが、シュキ達の援護をしながらでは無理だろう・・・・・・
「フハハハ!!よもやこれ程とはな!!いやここまで違うと笑うしかできぬな!!」
ハッハッハッ!!と豪快に笑ってる場合じゃないと思うんだけどな?つーか、リザードリーダーもそうだがリザードマン達は何か楽しそうなんですけど?
「フム、どうしたのだお主等は?よもやこれ程までの力の違いがあるのだ、もはや勝ち負けの問題ではないぞ?」
「は?どういうことだ?勝ち負けの問題じゃない?」
何を言い出すんだリザードリーダー、狂ったか?
「そうだ!!勝つか負けるかそれ以前の問題だ!!もはや、今では立ち向かうか立ち向かわないかまずはそこからだろう!!と言っても我等が逃げればこやつ等はこのまま山を支配するために攻めに転じるであろうがな!!」
ハッハッハッ!!と豪快に笑うリザードリーダー、だから笑ってる場合じゃ・・・・・・
「それだと、逃げるって選択肢は最初からないも同じじゃないですか!!シゼル様!!シゼル様だけでもお逃げください!!ここは私と兄さんで食い止めますから!!」
「そうですよ!!救ってくれた恩をここで返します!!」
いやいやいや、なんでそんな展開になるんだ?逃げるなら皆で逃げようぜ?・・・・・・、そもそもおれに逃げる気はもとからないんだけどね
「いや、逃げねぇよ?」
「「は?」」
シュキもコッキもなんで?みたいな顔してるな、そりゃそうか
「逃げるわけないじゃないか、逃げたら村のリザードマン達だって危ないし、そもそもシュキとコッキを置いておれだけ逃げるとか、ない」
その選択だけは間違ってもない、そう断言できる
「そもそもさ、よく考えたらおれ達、いや、おれってさ頑張れば勝てる相手か絶対に勝てる相手としか戦ってこなかったんだよね、だからかな強くなった実感っていうのがまったくないんだ」
相手の力量がわからないから、自分は弱いから、だから不意打ちからの攻撃しかしてこなかった、だけどレベルが上がって進化もして、少しは自分も強くなっていると思ったらこれだ
今の自分では頑張っても勝てないだろう相手、もしそんな相手に勝てたら?おれは何か壁のようなものを越える事が出来るかもしれない、その壁を超える事が出来たら、何かが変わるかもしれない
おれの勘が、生存本能が告げるんだ、逃げるな戦えって、まぁ、それだけじゃないんだけどさ
「それにさ、燃えるじゃないか!今の自分の全身全霊を尽くしても勝てるかわからない相手!!負ければ死ぬだろう、だけど勝ったら?その時おれは今よりも、もっと強くなれる!!勝つか負けるかじゃない、立ち向かうか立ち向かわないか!!何言ってるかわからないだろうが、それだけおれは今の状況に興奮してるし、楽しいと思ってるんだ!!」
「フハハハ!!いいぞ!!いいぞ!!それでこそ戦士!!それでこそ男というもの!!インプ殿、いやシゼル殿よ!!我はイェーツィアのリザードマン、デルツ・イェーツィア!!この戦いが終わったら正式に我と友好の儀を結んでいただきたい!!」
「アッハッハッハ!!デルツ・イェーツィアか!!いいぞ!!この戦いが終わったらおれは!デルツ・イェーツィアと友好の儀を結ぶぞ!!」
「有り難い!!ならばこの戦い、互いに負けるわけにはいかなくなったな!!約束を違えるは戦士にあるまじきことだからな!!」
この時のおれはきっとアドレナリンや脳内麻薬のせいで最高にHIGT!!ってやつだったんだろう、あとからシュキにこの時の事を聞いてすごく恥ずかしくなった、2度と同じことはしないと心に誓った程だ
「はぁ、なんていうかそれでこそシゼル様って感じがするからどうしようもないな・・・・・・」
「諦めましょう兄さん」
なんか2匹で言ってるな、お前らだって実際興奮してるんだろ?顔がにやけてるぜ
「違いますよ、ただ、やっぱり俺達が仕えるべきお方はシゼル様だと改めて実感してるだけですよ」
「仕える主が逃げずに戦うと仰るのであれば、僕たる私たちはそれについて征くのみ」
別に主だとか僕だとかおれはどうでもいいんだけどな、まぁ、シュキ達がそれでいいならそれでいいさ、おれを主と思ってくれるならその分おれもシュキ達を守るだけだ
「それじゃ、いっちょ俺達もやってやりますか!!なんか不思議と力が沸いて来て負ける気がしないしな!!」
ドンッ!!と、音と共にコッキが大鉈を全力で振り下ろしたかと思うと、コッキの正面、直線上にいた蜘蛛達が大鉈から放たれた剣気で一刀両断されていた
「ふぅん、剣術と気闘法ってこんな使い方もあるんだな・・・・・・」
え、今のたまたまできただけなの?
「兄さんだけにいい恰好させませんよ?」
そう言って火魔法であたり一面にあった蜘蛛の糸に炎が走る・・・・・・、繊細な制御がされ蜘蛛の糸以外には燃え移らないように綺麗に糸だけを燃やしていく
「シゼル様がこれから支配される山を燃やすわけにはいきませんからね」
勝手にベルセディア山脈をおれの所有物にしないでほしい、たとえそれが許されても困る
「フハハハ!!シゼル殿の仲間もまた良い気概ではないか!!我等も負けてられぬな!!」
「あぁ!!そうだな、勝つためにもおれのとっておきを見せてやるぜ!!あの時はうまく制御できなかったが、今回は違う!!完全な状態で使ってやれる!!」
そう、あの女冒険者達に使った時はおれのせいで上手く使えなかったが、今ならいける
今おれが込めれるだけの魔力を込め、あの時よりも明確にイメージし、その姿を創造する
「我は願う、我が眼前の敵を喰らう鋭き牙を、その爪は全てを切り裂き、その瞳は見る者を恐れさせる」
「我が影より産まれ出で その咢で喰らい尽せ!! 顕現せよ!! 影の竜王!!」
親蜘蛛「出てきただけで私以上の化け物がなんかやる気だしちゃった、もう国に帰りたい」
シャッテン「私の餌になるがいい」




