目指すは山
今日は2話更新
「あぁ、森を出て聖王国マルファールを目指すのはいいんだけど、どうやっていくんだ?」
今現在おれたちは始まりの森を出て人目につかない街道から外れた場所で身を隠しながら今後の計画を話あっていた、なんで身を隠しているかは説明は不要だよな?冒険者や街道をあるく人間に見つかったら面倒だからだってのもあるが、まさか森から出てすぐそこにラーセナル王国の首都があるとは思わなかった
距離にしてだいたい半日~1日あれば着くような距離だ、これは不味いと判断したおれはとりあえず身を隠しているわけだ、なんでこんなに近いんだ、森から西へ向かったところに首都があり、聖王国マルファールはさらに西――正確には北西の方角になるっぽい――の方のため最短距離で行く場合、どうしても首都近郊の街道を横切る形になる、それでなくとも始まりの森の東には暗黒大陸とか呼ばれてる魔族の領域があり、国境線を結界で防御して魔族が入ってこないようにしているらしい
始まりの森って結構重要な場所にあるんじゃね?と思ったが正にその通りだった、ラーセナル王国は定期的に結界の確認をしているそうだが、シュキが聞いた話ではラーセナル王国が結界を用意したわけではなく最初からそこに結界があったらしい、王国はただ結界に異常がないかだけ確認しているそうだ
今のとこ結界がどうにかなる様子はないらしい、これは森の魔物達も確認している事だそうだ、森の魔物達にとってもこの結界は大切なものみたいだ、そこまでして魔族を閉じ込めておきたいのか?と思ったが魔王がいて戦争を仕掛けていると聞いたら閉じ込めている事に納得してしまった
話を戻すが、街道を横切るというか国境線に張られているその結界に沿って移動すれば人目につかないと思ったのだが、それだけ大切な結界だから当然のように巡回の兵士がいるとの事なので却下された
では、遠回りして行くか?と提案してみたのだが、始まりの森から南下するとそこにはエルフの森があり森に近付くものは人間だろうと容赦なく攻撃されて危険らしい、どうもエルフ達はかなりの引き篭もりで自分たちの領域に入られるのが相当嫌いみたいだ、なんでも過去エルフ達は奴隷として扱われていた事がありそれもあって外の者達を信用していないとの事、まぁ、そんな事があったら信用できるわけないよな
ちなみに奴隷制度は現在すべての国で廃止されてるみたい、ただシュキも昔聞いただけの話なので今どうなっているかはわからないみたいだ、ずっと森にいたんだから仕方ないよね
ただシュキに色々な知識を教えたお爺さんゴブリンは実はすごいんじゃないだろうか?シュキが言うには他所から来たはぐれゴブリンだったから外の知識が豊富だと言っていたらしいが、それだけではない気がする、コッキにこん棒術や基本的な戦闘のイロハを教え、シュキに魔法の使い方を教えたのもこのお爺さんだったらしい、ますます怪しい気がする
そんなわけで、南下するのもあまりおススメはできない、なら取れる手段は結局、極力見つからないように最短距離で突っ走る事だった、もちろんすぐに着くわけではないし、魔物である以上関所なんかは通れないので、国境沿いにあるベルセディア山脈を越えて聖王国マルファールに入る事になった
ベルセディア山脈までは首都から馬車で2~5日、徒歩だと6日くらいの距離らしい、といっても何事もなく進めて場合の話ではあるが、しかも俺たちは見つからないように街道を逸れて隠れながら進むのでもっとかかるかもしれない
そしてベルセディア山脈を越えると話したらコッキは嫌そうな顔をしていた
「えぇ、ベルセディア山脈を越えるんですか?やめません?」
なんでそんなに嫌そうな顔して言ってんだよ、越えなきゃ聖王国マルファールに行けないんだから仕方ないだろ、それともお前が関所でも壊してくれるのか?
「いや、だってベルセディア山脈って時々、白竜神が現れるって爺さんが言ってたし、なんかシゼル様と一緒だと本当に白竜神が現れる気がして」
「おい、ばか、やめろフラグを立てるな、そんな事言ったらマジで出くわすだろうが!!」
なんでそんな事言いだすだよ馬鹿野郎!!口にしたらもうだめだろうが!!白竜神とか明らかに勝ち目がないだろ!!ただの竜なら逃げれる可能性あるけど、それは逃げれる可能性ほぼ皆無だろうが!!
「はぁ、兄さん、お爺さんのそんなお伽噺まだ信じてたんですか?白竜神なんているわけないでしょう」
「は?そうなのか?シュキ?白竜神とかいないの?」
「はい、お伽噺には出てきますがそれだけです、お爺さんの話にはそういった架空の存在もよく出てきましたから」
なんだよぉ、作り話かよぉ、信じてしまったじゃなねぇか!つーかそんな事信じてるなんてコッキもまだまだ子供だなぁ
「いや、絶対白竜神はいるって!そりゃ爺さんの話はほとんど作り話だったかもしれないけどさぁー」
「はいはい、そうですねー、馬鹿な事を言ってシゼル様を不安にさせないでください」
そんな事をシュキはおれをそのたわわな果実のある場所で抱きしめながら話をしている、最近、というかシュキが進化してからはシュキに抱きかかえられているのがおれの定位置になりつつある
おれは別に飛べるから移動も楽なんだけど、だからってそれを拒否する勇気はおれにはないね、背中に感じる柔らかさとただ飛んで移動するだけならおれは恥も外聞もかなぐり捨ててでも背中に感じる柔らかさをとるね!!
なんかコッキが呆れたような目でおれを見ているが気にしない!子供にはわからんのだよ、子供には!!
そんな感じでおれ達はベルセディア山脈を目指して移動を始めたが、思いのほか問題なくベルセディア山脈まであと少しと言ったところまで進む事ができた、途中、食料にするために魔物を狩ったり、コッキが街道を歩いていた農民っぽい人に見つかりそうになったりしたが、危険な事もなく進む事ができた
ここまで何事もなく進めたのだから山越えも案外簡単にいけるんじゃないか?とか思ったのがいけなかったのだろう、その時のおれ達は知らなかったのだ
ベルセディア山脈にいる魔物が中級~上級クラスの魔物で関所を通ることが出来ない密輸や密入国者が山越えに挑戦するも悉く失敗し、運よく山を越える事が出来てもすでに満身創痍ですぐに巡回の兵士に捕まってしまうほど、ベルセディア山脈は危険な山であった事
なによりもベルセディア山脈での出会いがおれの波乱の生の幕開けになるとはこの時のおれには分かるはずもなかった
白竜神がアップを始めたようです
ベルセディア山脈の話が続きます。