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転職の神殿を開きました  作者: 土鍋
転職の神殿を開きました
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庭の主

 息を切らせながら、一人の少女が街中を走って行く。年の頃は十歳くらいだろうか。笑えば愛嬌がある娘であることは間違いないが、今はその顔を青くし、必死の形相を浮かべていた。


 彼女がちらり、ちらりと後ろを振り返るたび、自分を追ってきている男たちの姿が目に入る。少女は青ざめた顔を今度は白くすると、とっくに体力の限界を迎えている身体に鞭打って駆け続けた。


 ――どうしてこんなことになったの?


 走りながら少女は自分に問いかける。そもそもの始まりは、見知らぬ女の人に声をかけられたことだ。「人手が足りなくて困ってるんだ。お姉さんの仕事を手伝ってくれたら、お礼にお金をあげるよ」……そう言われた少女は、悩みながらも頷いた。


 知らない人に付いていってはいけない。そう両親に言われたのは覚えている。だが、それ以上に鮮明に覚えているのは、毎晩のように繰り返される「お金がない……」という両親のぼやきと、そして口論だった。


 住んでいた村がモンスターに襲われ、王都に引っ越してきたのが五年ほど前。避難民から王都の住民となった彼女たちだったが、そこで直面したのは、元難民に対する形を変えた差別意識と、そこから来る仕事の少なさだった。


 だから、少女がお金を持って帰ってくれば両親も喜ぶに違いない。「困っている人を見かけたら助けてあげなさい」とも言われているし。そう自分に言い訳しながら、女の人に付いていった少女は、じきにその判断を後悔した。


 女性に連れられた少女を出迎えたのは、怪しげで粗末な小屋と、そしてなんだか嫌な雰囲気を放つ男たちの姿だったのだ。

 やがて彼らの口ぶりから、犯罪に利用されようとしていることに気付いた彼女は、指示役の女性が去り、男たちが油断している隙をついて小屋を逃げ出したのだが、それに気が付いた男たちが彼女を追いかけてきているのだった。


 そんな彼女が建物の角を左へ曲がると、大きな建物の威容が目に入ってきた。ただ大きいだけでなく、どこか特徴的な造りをしているその建物は、少女の記憶が正しければ、何かの神殿のはずだった。


 神殿なら、勝手に入っても怒られるだけですむかもしれない。あまり信心深くない少女は、そう考えると一目散にその建物へと駆け出した。




 ◆◆◆




「あら、どうしたの?」


 建物の中へと入り、ぜいぜいと息を切らしていた少女に向かって、そんな声がかけられた。少女はびくりと呼びかけに対して身を震わせると、恐る恐る声の主を見た。


 少女に声をかけてきたのは、明るい茶色の髪を肩で切りそろえている、二十代だと思われる女性だった。おそらくこの神殿の人だろう。そう思った瞬間、少女は反射的に謝罪の言葉を口にしていた。


「ごめんなさい!」


「え? 突然どうしたの? ……えーと、あなたはここまで一人で来たのかな?」


 女性は突然の謝罪に戸惑っていたようだが、やがて少女を迷子だと判断したのか、しゃがみ込んで視線を合わせるようにしながら聞いてくる。


「あの、わたし――あっ!」


 だが、少女が最後まで言葉を発することはなかった。彼女がちらちらと気にしていた建物の入り口から、恐れていた男たちが入ってきたのだ。


――逃げないと。


 彼らの姿を認めるなり、少女は駆け出した。


「あ! どこへ行くの!?」


「マイア先輩、どうしたんですか?」


「それが、女の子が突然走り出して……」


 そんな会話を背中で聞きながら、少女は全力で走る。ありがたいことに、彼らはまだ自分に気づいていないようだった。そのことに勇気づけられた彼女は、彼らに気取られないように慎重に、そして素早く建物の外へと飛び出す。建物の中へ逃げ込んでしまっては、いつ行き止まりで立ち尽くすか分からなかった。


 しきりに後ろを確認していた少女だったが、どうやら男たちが出てくる様子はない。彼らを完全にまいた。少女がそう思った瞬間だった。


「――このガキ! ちょこまか逃げ回りやがって!」


 その怒声を聞いて、少女の表情が再び蒼白になる。どうやら、全員が建物の中へ入ってきたわけではなかったようだ。その事を悟った少女はくるりと反転すると、再び建物へ向かって走り出す。


 だが、今からもう一度建物の中へ入るのは自殺行為だ。少女は、建物の脇にある小道へとコースを逸らした。


 やがて少女が辿り着いたのは、少し大きめの庭だった。噂に聞く貴族の館のように花が咲き乱れている訳ではないが、がっしりした太い木を中心に、穏やかな緑色の空間が広がっている。できることなら、ここで一眠りしてみたい。そう思わせるような場所だった。


「――っ!」


 だが、少女にその願望を叶える余裕はない。男たちが庭の入口に姿を現したのだ。しかも、いつの間に合流したのか、建物内にいたはずの男たちもそこに含まれていた。


 逃げなければ。その思いで反射的に駆け出した少女は、自らの視線の先を見て絶望的な思いに囚われた。道がない。どうやら、この庭は通り抜けができる造りではなかったようだ。


 周囲を見回しても、彼女たち以外に人影は見つからない。先ほどは気が動転していて気付かなかったが、神殿の人に助けを求めればよかったのだ。そう気付いた少女だったが、もはや後の祭りだった。


 男たちは怒りと残忍さの入り混じった表情でこちらへと向かってくる。少女を逃がさないためにだろう、等間隔を崩さずこちらへ歩み寄ってくる姿を見て、少女は絶望と共に後ずさる。


 そんな時だった。


「キュッ?」


 場に似つかわしくない、かわいい鳴き声が聞こえてきた。その音源は少女の真後ろ。驚きのあまり後ろを振り向いた少女は、全長三十センチほどの兎が、自分の右足に触れていることに気付いた。


「……うさぎ、さん?」


「キュゥッ!」


 少女の問いかけに、兎は元気よく答える。まるで言葉が分かっているかのような兎の反応に、彼女の脅えきった心が少しだけ温められる。


 だが、それも長くは続かなかった。ついに男たちの包囲網が少女を取り囲んだのだ。


「……よくもまぁ、手間をかけさせてくれたよ」


「ったくだ。売っ払う前に、世の中ってモンを叩きこんでやったほうがいいな」


 そう会話する男たちの残忍な表情を見て、少女がぺたん、と座り込んだ。なにやってるんだろう、逃げないと。そう分かっているのに、今までの疲労が、そして男たちへの恐怖が彼女の足を縫いつける。


「まぁ、来いよクソガキ。かわいがってやるぜ」


 そう言って、男たちの一人が少女へ手を伸ばす。


――だれか、助けてよ……


 少女はそう心で叫びながら、ぎゅっと目を閉じた。


「ごべッ!」


「……え?」


 少女の耳に入ってきたのは、そんな間抜けな声だった。予想だにしていなかった展開に、少女はぎゅっと瞑っていた目を開く。すると、そこには信じられない光景が広がっていた。


 先ほど少女へ向かって手を伸ばしていた男はもういない。いや、正確に言えば、彼女から十メートルほど離れたところで寝転がっている。昼寝をするには無理のある体勢だったし、何よりも彼の周辺の地面が少し抉れている。彼が何かに吹き飛ばされたのは明らかだった。


 ――でも、誰に?


 ここにいる人間は、少女と彼女を追いかけてきた男たちだけだ。それ以外の誰に、あの男を吹き飛ばすことができたのだろう。疑問に首を捻っていた少女は、視界の隅、下の方で何かが動いていることに気付いた。


「うさぎ……さん?」


「キュゥ!」


 再び絶妙なタイミングで返事をする兎を見て、少女は目を白黒させた。そして混乱した思考は、普段なら考えることもしないだろう回答を導き出す。


「ひょっとして、助けてくれたの?」


「キュ!」


 その回答は、常識的に考えてありえないものだ。だが、自らの結論を疑う少女を力づけたのは、相手の男たちだった。


「なんだあの兎!?」


「気をつけろ! 見た目通りじゃねえぞ!」


「ありゃモンスターだろ! なんでこんなとこに!?」


 どうやら、混乱しているのは男たちも一緒であるようだった。むしろ精神的優位に立っていた分、彼らの方がショックは大きかったかもしれない。


「何言ってやがる! あんな小っこい兎にんなことできるか! それよりこのガキを逃してアジトをバラされた日にゃ、俺たちの首が飛ぶぞ!」


 だが、男たちの中の一人が檄を飛ばすと、彼らはやる気を取り戻したようだった。その形相は必死の一言であり、先ほどまでの弛んだ空気はどこにもない。


「とっつかまえろ!」


 そんな号令とともに、男たちが少女へと殺到する。その圧力に思わず身構えた彼女だったが、その目の前で、信じられない光景が展開される。


「キュァ!」


 少女の足元でちょこんと座っていた兎が、突然跳び上がったのだ。捻りを加えながら跳び上がった兎は、まるで回し蹴りをするかのように身体を一回転させる。


「がはッ!?」


 ゴウッという音と共に発生した衝撃波が、襲いかかってきた男たちをまとめて空中に吹き飛ばす。しばらく滞空していた彼らが、重力に引かれて落下する様を、少女は唖然として眺めていた。


 鈍い音を立てて地面に落下した男たちに、それ以上動く気配は見られなかった。その様子を確認すると、少女は恩人たる兎に声をかける。


「あの……うさぎさん? 助けてくれて、ありがとう」


「キュッ!」


 兎が得意げに鳴いているような気がして、少女はくすくすと笑った。そして、その頭を撫でようと手を伸ばして――そして思いとどまる。


 あれだけ凄まじい力を持った兎だ。もし気に障るようなことがあれば、何の取り柄もない少女など一瞬で殺されてしまうかもしれない。そんな思いから、少女は手を止めたのだった。


「キュゥ……」


 だが、そんなことを考えていると、目の前の兎が残念そうな鳴き声を上げながら、こちらを見る。まるで「撫でて!」とでも言わんばかりに頭を持ち上げようとする様に、少女は噴き出した。

 そして、笑いながら兎に手を伸ばす。頭を撫でられた兎は、ご満悦の様子で目を細めていた。なんて手ざわりがいいんだろう、そう思いながら少女は兎を撫で続けるのだった。


「……あら。これはどういう事態なのかしら?」


 と、一心不乱に兎の手触りを楽しんでいた少女は、そんな声を聞いて飛び上がった。見れば、黒髪を綺麗にまとめた、三十歳くらいの女性が庭に姿を現していた。彼女は見事に気絶している男たちを見ると、懐から取り出した何かのスイッチを押す。


 道具の操作はすぐに終わるものだったのか、すぐに女性の視線が少女に向けられた。その視線を浴びた少女はびくっと身をすくませるが、もう逃げ出すつもりはなかった。その服装からして、おそらく彼女はこの神殿の人間だろう。少女は、女性が近づくのを待った。


「お嬢さん、大丈夫かしら?」


「は、はい! わたしは平気です!」


 少女がそう答えると、女性はほっとした様子で口を開く。


「そう、よかったわ。私はこの神殿の司祭、ミレニアといいます。もしよければ、この状況を説明してほしいのだけれど……」


「あの、このうさ――」


 うさぎさんがこの人たちをやっつけたんです。そう言おうとした少女は、すんでのところでその言葉を飲みこんだ。「ありゃモンスターだろ!」という、さっきの男の叫びを思い出したのだ。もしこの兎がモンスターであるなら、衛兵たちがその命を奪いに来るだろう。そして、モンスター化した兎でもなければ、あんな凄まじい力を持っているはずがない。


「わたしもよく分かりません。気がついたら、わたしをおいかけてきた人たちがこうなってて……」


 少女は兎を庇うように抱きしめると、ミレニアと名乗った司祭にそう答えた。すると、彼女は困ったように頬に手を当てる。


「そう……困ったわね……」


 そう呟くミレニア司祭を見て罪悪感を覚えながらも、少女はそれっきり口を閉ざす。二人の間に沈黙が流れた。


 と、その沈黙を破ったのは少女の緊迫した声だった。


「お姉さん、うしろ!」


「え?」


 突然少女が叫び声を上げたのは、もちろん酔狂などではない。ミレニア司祭の後ろに、さっきの男が立っていたのだ。一番最初に吹き飛ばされていた男だが、手加減されていたのか、それとも頑丈な造りなのか。どちらにせよ、あまり強そうには見えない目の前の司祭にはなす術がないように思えた。


「ふざけやがって!」


 そう叫んだ男の手には、肉厚のナイフが握られていた。激昂した男は、躊躇いなく目の前にいるミレニア司祭にそれを突き刺そうとする。だが――


 ギィン、という音と共に、男が持ったナイフが中空で弾かれる。よく見ると、司祭の周囲がうっすら輝いているようだった。


「魔法障壁だと……! てめえ、まさか固有職ジョブ持ちか!?」


 そう叫びながらも、男の顔はさっと青ざめた。もし眼前の相手が固有職ジョブ持ちであれば、この後の結末は火を見るより明らかだ。


「たしかに、固有職ジョブ持ちではありますわ。……まあ、貴方のご想像通りではないと思いますけれど」


 その言葉を聞いて、少女は驚いた。固有職ジョブ持ちなんて、人生で二度しか見たことがない。それも、すごく遠くから見たっきりだ。初めて間近で見る固有職ジョブ持ちに、少女は目を見開いて注目していた。


 この後はどうするんだろう、すごいまほうを使うのかな。そんなことを考えていた少女だったが、その期待は裏切られることになる。


「うぉっ!? いててててっ!」


 いつの間にか男の後ろに忍び寄っていた体格のいい男性神官が、男の腕をひねり上げたのだ。そのまま男を組み敷くと、男性神官はミレニア司祭に向かって口を開く。


「よぉ、待たせたな」


「まったくですわ。おかげで、試作した魔道具が壊れるところでしたわよ」


 そう言うと、ミレニア司祭は神官服の内側から小さな指輪を引っ張り出した。


「見てたぜ。それが魔法障壁を展開する指輪か。案外小っちぇえもんだな。その割にいい仕事してたじゃねえか」


「たしかに、ナイフの一撃を障壁で受け止めることはできましたけれど、ぎりぎりですわね。もう少し相手の技量が高ければ、障壁を突破されていたかもしれませんわ。

 それに、魔力消費が多すぎて、これじゃもう一度起動できるかどうか……」


 そう厳しい顔をするミレニア司祭に、男性神官は軽いノリで答える。


「そんなの、魔力を補充してやればいいじゃねえか」


「作成時に魔力をこめることはできても、出来上がった魔道具に魔力をこめることはできませんもの。魔術師マジシャン治癒師ヒーラーあたりにお願いするのは大変ですし。それならもっと魔力消費効率のいいものを作りますわ」


「そんなもんかね……」


 少女は、目の前で交わされる会話に呆然とする。どうやら、ミレニア司祭は本当に固有職ジョブ持ちらしい。目の前で起きた奇跡とその後の会話を聞いて、少女はただただ目を見開いて驚いていた。


 ――こんなにきれいな人で、しさいさまで、固有職ジョブも持ってるなんてすごいなぁ。


 そんな憧憬の目で神官二人のやり取りを眺めていると、当の二人の視線が少女へと向けられた。突然のことに慌てて目を背ける少女へ向かって、ミレニア司祭が声をかける。


「ところで、貴女はどうしてこの人たちに追いかけられていたの?」


「それは――」


 その優しげな声に安心した少女は、彼らに追われることになった原因を正直に話した。見知らぬ人に付いていったところでは少し渋い顔をされたものの、二人の神官は特に何も言わず、話を最後まで聞いてくれた。


「ひょっとして、こりゃ人身売買の組織に繋がる話か……?」


「そうかもしれませんわ。元難民を中心に子供の失踪が起きているとは聞いていましたけれど……」


「立場の弱ぇ人間を食いものにしてる奴らか……おいお前、正直に答えろ。てめえらはどういう集団だ? 人攫いが仕事か?」


 表情を険しくした男性神官は、そう言うと、下敷きにしていた男にドスの利いた声を浴びせた。


「貴様らこそ、王都でモンスターなんて飼いやがって……!」


 だが、男は苛立たしげにそう吐き捨てると、少女が抱いたままの兎を睨みつけた。その言葉に、少女の心臓がどくんと波打つ。


「あぁ!? てめえ、何わけの分からねえこと言ってやがる。この女の子がモンスターだとでも言う気か」


 どうやら、神官はいい具合に視線の意味を誤解してくれたようだった。それで何かしら思いついたのか、男は少し思案顔をした後で薄く笑った。


「……へっ、なんでもねえよ。いつか吠え面かくがいいさ」


 そう言ったきり、男は口を開かなくなった。おそらく、いつか兎が狂暴化して大暴れすることを期待しているのだろう。兎の真の力を知っている少女には、それが分かった。だが、それを言い出す勇気は、彼女にはない。


「……ミレニア司祭、こいつらを衛兵に突き出してくる。すぐに他のやつらを行かせるから、それまでここを見張っていてもらえるか?」


「分かりましたわ」


 ミレニア司祭の返事を聞くと、男性神官は捕まえた男を連れて庭から出て行った。やがて、少女とミレニア司祭の間に微妙な沈黙が下りる。


「ねえ、貴女……ええと、ごめんなさい、お名前を聞いてもいいかしら?」


「あ、わたしはファーニャです」


「そう、ファーニャちゃん、よろしくね。ところで、ファーニャちゃんはずっとキャロちゃ……兎を抱いているけど、どうかしたの?」


「そ、その……」


 不意をつかれて動揺したファーニャは、思わず口ごもった。そして、必死で考えた答えを口にする。


「あの、このうさぎさんがかわいくて、モフモフしてて気もちいいんです」


 それは嘘ではない。むしろ本当のことしか言っていない。だが、モンスターだとバレて討伐されてしまうのが怖いから、という一番の理由については伏せたままだ。そんなことでごまかし通せるものだろうか。もっといい返事があったんじゃないだろうか。少女はそんな不安な気持ちを抱えて、ミレニア司祭の言葉を待った。


「ファーニャちゃん、その気持ちはよく分かるわ……!」


「え?」


 だが、目の前の司祭から返ってきたのは、彼女の言葉を全く疑わない賛同の言葉だった。思いがけない返答に、ファーニャは目を丸くする。


「キャロちゃんは本当にかわいいものね! モフモフしたくなる気持ちは痛いほど分かるわ……!」


 どうやら、この兎の名前はキャロというようだった。ファーニャは、その名前をしっかりと胸に刻み込んだ。

 そして、その飼い主はこのクルシス神殿の神官らしい。その人はキャロちゃんのほんとうの力を知っているのかな。そんなことを思いながら、ファーニャはミレニア司祭と一緒にキャロを撫で続けるのだった。




 それからというもの、クルシス神殿の庭には、とある少女が頻繁に現れるようになったという――。


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