待ち合わせ
「パジャマパーティー?」
私にその誘いがきたのは、高校の授業が終わり、放課後になって部活へ行こうとしていた頃だった。
「そ、こんどの土曜日から日曜日にかけて。どうかな」
友達に誘われて、ちょっと考える。
「明日、返事してもいいかな」
「もちろん。待ってるからね」
そういって、その時は別れた。
それから部活へ行って家に戻り、母親にそのことを聞いてみた。
「いいんじゃない?」
母親はすぐに答えてくれる。
「行きたいなら、行ってきなさいな」
そう言われたら、行かないわけにはいかない。
そもそも行く気だったから、問題ない。
土曜日、午前10時。
待ち合わせの場所は、学校の最寄り駅だ。
学校からは、歩いて10分とかからないところにある。
「お待たせー」
私が着いてから3分ほどたってから、今回の主催者、山田哉子がやってきた。
「今日は何人来る予定?」
「私たちと、愛美ちゃんと佐目」
愛美は金内愛美、佐目は柏木佐目という。
二人はとても仲が良くて、親友同士と言ってもいい。
私たちとは、かなり仲がいい友達と言った関係だ。
「まだ来てないみたいだねぇ」
「愛美ちゃん、彼氏いるし、そっちに行っちゃたりして」
笑いながら、私たちは彼女たちを待っていた。
二人がやってきたのは、しっかりと10分は過ぎていた。
とはいっても、特に二人に関しては驚く事はない。
特に佐目は、昔、一緒に遊びに行く時に待ち合わせた時に、1時間たって来なくて電話したら、今起きたと言ったという前科があるほどだ。
「おはよ~」
佐目が私たちを見つけて、すぐに手を振りながら挨拶をする。
横で疲れた顔をしているのは、愛美だ。
二人とも、なかなかに可愛い服装をしている。
ただ、愛美が持ってきたカバンから、なぞの棒状の物が見えているが、私は気にしないことに決めた。
「ちょっと遅刻だよ」
哉子が言う。
「ごめんって、でも、大丈夫でしょ」
「まだ10分遅れだからね。でも、前、なんて言ったか憶えてる?」
哉子が起こった表情をして、佐目に言ったが、当の本人は気にしている風体ではない。
「えー、なんて言ってたっけ」
「全く……」
ただ、それからは笑い声が響いていた。
「えっと、必要なのは、小麦粉、ベーキングパウダー、卵だね」
メモ帳を見ながら、私たちは買い物をしていた。
今日はスポンジケーキを作ると言うことにしたからだ。
砂糖や水は哉子の家にあるそうで、気にしなくてもいいということだった。
「そう言えば、聞いたことある?」
「何を?」
小麦粉をついでにと言いながら1kgのを入れながら、愛美が聞いてくる。
「すっごく腕のいい高校生料理人がいるっていう話。近くに手野市ってあるじゃん。そこの高校にいるらしいんだけど」
私が話しているうちに、バニラエッセンスまでかごに入っていた。
「手野市って、電車で30分ぐらいのところにある?」
「そ。文化祭に出店するって話だから、食べに行きたいねぇ」
「そんなにおいしいんだったらね」
愛美がそう言った。
愛美のことだ、きっと次の文化祭にでも行って、食べてくるだろう。
その時に感想でも聞こう。
本当は、私は中学校の同級生がその高校に通っているから、会いに行くことはできるのだが、それは黙っておいた。




