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根来寺訪問

信貴山城攻めはちゃっちゃと終わらせます。

期待した方ごめんなさい・・・

永禄5年(1562年)5月22日


筒井勢は大和や河内、紀州の国人衆の支援を受けて、信貴山城に

突如侵攻し包囲した。

「降伏し開城せよ。手向かうのであれば鬼左近がお相手致す」との勧告をした。

すると城側はあっさり降伏勧告を受け入れた。


信貴山城は、その名の通り信貴山を利用した山城である。

松永久秀が改修し二十に及ぶ曲輪を持つ日本有数の巨大城であった。

しかし今回はその巨大さがあだとなった。

本来数千の兵がいれば数万の軍勢に攻められても落ちない城だが、兵の数が少なければ各曲輪が

連携できず機能しないのだ。

また 信貴山城は、 先日の戦いのあった教興寺からわずか数キロの距離で、見下ろす位置にある。

城兵はつぶさに戦況を見ることができた。目の前で三好方が敗れ、城主である松永久秀が負傷し松永隊も敗走した。これを見た城内の士気は低下。とても戦えないと判断し開城を受け入れたのである。


信貴山城には、ひとまず松倉右近ら千五百をいれ守備をさせ、その他の部隊は筒井城に帰還した。



***


俺は、この前の招待を受けた、島左近らを伴い根来寺にむかっていた。


「左近よ。こたびの戦は辛いものであった。戦っている時は必死だったから、何も感じなかったが、人を殺めたのは初めてだった」

現代人であった俺は、もちろん人を殺したことはなかった。人を刺した時の感触は今でも残っている。人の悲鳴が耳に残り、ほとんど眠ることができない。改めて血を血で洗う戦国時代にいることを実感していた。


「殿は心優しいのでございますな。わしは戦いと聞くと心が踊るのでござるがの」


「わしはまだ十三なのだ。忘れるでない」


「はは、そうでございましたな。つろうござろうが、戦国の世のならいにござる」


この世界に来てしまったからには、割りきるしかないのか。

誰か癒してくれる人はいないかな。俺の心が晴れることはなかった。



数日後、俺達は根来寺に着いた。

根来寺は想像を遥かに越える巨大な寺であった。寺と言うよりはひとつの都市に近い。

山門の前には大きな門前町があり、さまざまな商店や宿が軒を連ねている。中には武器を扱う店もあるし、もちろん鉄砲鍛冶も見受けられた。多くの人が行きかい、笑い声さえ聞こえる。

戦国の世とは思えぬほど平和であった。武士らしき姿も見られたが、その表情は穏やかで、殺気などは感じられなかった。


「根来がこれ程の町あるとは・・・、いや驚いた。しかもこれ程豊かであるとは」


「さようでございますな。根来の底力を見た感じがいたします」


寺の山門で、津田算正殿を訪ねて来たこと告げると、杉ノ坊に行くように言われる。

根来寺は、高野山と同じく山全体に末子寺や僧坊が点在する。その数は全盛期には二百にも及んだという。

杉ノ坊もその一つであるが、山門から遠く離れている。鉄砲を持った僧兵が目につく。

現在のように道も整っておらず歩きにくい。しかも険しい山道である。

結局杉ノ坊に着いたころには日が暮れていた。


「筒井藤勝と申すが、津田算正殿は御在中であろうか?」


「あいにく算正様は不在にしておられますが、筒井様のことはお伺いいたしております」

「明算様にお取次ぎいたします。どうぞ、こちらへ。」


根来の中の一僧院といっても、さすがは根来の僧兵を束ねるだけのことはある。その敷地は広大で並の寺の規模を超えていた。案内がなければ、迷いそうなほどだ。


小さな書院に案内される。そこには、七十近い老僧がひかえていた。


「初めてお会いいたしたします。筒井藤勝と申しまする。後ろに控えるのは、家臣島左近でございます」

深々と頭を下げ、挨拶をする。相手は根来最大の勢力を持つ院主。失礼があってはいけない。


顔を上げると、老僧は目を細め俺の顔を見つめている。おれもじっと老僧の目を見つめていた。

少しの間の後、


「うむ。なかなかの面構えをしておられる。拙僧は明算と申す」

「筒井殿のことは算正殿からお伺いしておる。あいにく算正殿は急な用で麓に行っておってな。

明日には戻られるであろう」


「急な訪問にも関わらず、明算様自らお迎え頂けるとは、誠に痛み入ります」

重々しい雰囲気で会話が続かない。心の奥底まで見つめられているように感じる。


「随分とお疲れのご様子。今日はもう遅い。軽い食事と部屋を用意するゆえ、ゆっくりなされよ」

再度深々と頭を下げ、明算殿の元を辞去し、一息をついた。

一体あの圧迫感、心を見透かすような視線は何であったのであろうか。



空いていた宿坊に案内され、一汁一膳の食事を頂く。簡単なものであったが、殊のほかおいしく感じられた。


布団に横になると、疲れていたのであろうか、すぐに眠気に襲われた。


一度、風が当たったような感覚があり目が覚めたが、人が入った様子はないし、気配もない。

何か懐かしい温もりのようなものを感じながら、深い眠りに落ちていった。





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