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筒井城攻防戦 上

大変お待たせいたしました。

しばらく、リハビリ更新ですが、何卒ご容赦くだされ。

永禄8年(1565年)10月 筒井城


*物見櫓*

「来たぞ!すぐ、お館様に伝えろ」



*大広間*

「申し上げます」


「うむ」


「松永勢の軍勢が北方より迫っております。その数約3千」


「恐らくは先方だろう。それだけではあるまい。物見を出して後方をしかと調べろ」


「ははっ」


「それから、信貴山城の藤勝殿に急使を」


「はっ」


筒井順政が立ち上がり、見渡す。

「皆の者、聞いた通りだ。松永と雌雄を決する時が来た」


皆が頷く。


「だが、心配はない。我らの準備は万端」

「手筈通り、時を稼ぎ、徐々に城内に引き込む。各部隊の統率は

各自に任せる。皆の者、頼むぞ!」


「ははっ」

各将が、急ぎ持ち場に戻って行った。



「藤勝様は大丈夫でしょうか?」

森好之が呟いた。不安そうな顔で、順政を見る。


「なに、上手くやってくれるさ。やってくれないと困るがね」

順政は笑っていた。




***


筒井城郊外


松永久秀は輿に乗り、ゆっくり筒井城に向かっていた。

念入りな調略の上、大和北部の国人衆のほとんどを味方につけており、

松永本軍を含めると1万に迫る勢力。

対する筒井城に約3千。


南西にある信貴山城に約3千がいるとはいえ、援軍に来るのは早くても明日以降。筒井城を明日までに落とす。

援軍が来れば、迎え討てばよい。


大和を取り返し、力をつけた上で、憎き長逸らを討つのだ。

そして、三好家の実権を取り戻す。

松永久秀は、ずっと先を見据えていた。


「申し上げます」


「うむ」


「全軍、配置完了致しました」


「よし、先陣に邪魔な田畑、町を焼き払うように命じろ」


「はっ」



***


筒井城の周りの田圃には、稲穂がたわわに実っているように見えた。

そこには、忍びが潜んでいた。


「敵が刈田に参りました」


「民の大事な田畑を焼こうとする不届き者を燃やしてやれ」


「はっ」


この時代、攻城の前の焼畑、刈田は常套手段である。

火をつけることで、相手を挑発し、自部隊の昂揚にも繋がる。

松永が攻めてくることを予期していた筒井は、周辺の農民に命じ、稲の穂だけ収穫させ、それ以外の部分を残させておいた。

こうすることで、まだ収穫していないように見せかけていたのだ。その上、油をまいておいた。


ところどころから、火が上がる。

折からの風にあおられ大きく燃え上がり、刈田に来た松永勢に襲いかかった。


「うわーっ、なんだー」


「ぎゃー、たすけてくれー」


松永勢は思わぬ奇襲を受け、大きな被害を受けてしまった。



***


「一体、何事だ!」


「刈田にあった部隊が焼き討ちにあいました。被害は甚大でございます」


「馬鹿者!直ぐに火を消して進軍しろ!」


「それが・・・、油をまいていたようで、火勢が強く手が出せまぬ」


「おのれ!ふざけた真似を!何としても火を消すのだ」

「消したら、全力で攻めかかれ!今日中に攻め落とす!」


「ははーっ」


家臣は一斉に飛び出して行った。

松永久秀は、怒りに打ち震えていた。


「伯父上、落ち着いてくだされ。筒井如き、恐れることはございません。

所詮、無駄なあがきです。我等の優勢は変わりませぬ。」

内藤忠俊が水を差しだした。

先に戦死した弟、長頼の息子も手勢を率い参戦していた。


「すまぬ。取り乱した。筒井には苦渋を舐めさせられているのでな」


水を飲み、一息ついた。


「お前の父のためにも、是が日にも松永家を復興させねばならぬ」



***


筒井城物見櫓


「まずは、うまく行ったようだな」

杉谷善住坊は、ひとりごちにつぶやいた。

先程の焼き打ちは、彼の手の者が仕掛けたものである。


「松永勢が、今に怒りにまかせて襲ってくるぞ。各隊に準備を怠らぬようにつたえろ。」


「はっ」


「それから、例のものを」


「ははっ」


「くくくっ。やっと、あれを試せるときが来たな」


善住坊は、不気味な笑みを浮かべていた。



***


「本当にこんなもんが役に立つんですか?」


見かけは、紐がついた入れ物である。


「この中には油と炭の粉が入っている。敵が堀に入ったら、ここに火を付けて、投げつけろ。そしたら、奴らは火の海だ」


「えげつねー」


「そうか?あんな大軍が乗りこんできたら、わしらの命はないぞ」


「いや、死にたくないっす」


「だったら、しっかりやってくれよ~」


白井浄三は、ニヤニヤと笑っていた。

いろいろと、えげつない仕掛けを作っていたのだが。



***


午後やっとのことで、火を消した松永勢は、空堀を乗り越え、城壁へと突き進む。


「かかれ~。所詮、古い平城。恐れるに足らん!」


パパーン


「ぐわ!」

部隊長は、胸を打たれて倒れた。


「殿!しっかりなされよ」


時折、鉄砲音が響き、その度に部隊長クラスの侍が倒れる。

統率を失った部隊は、右往左往し、格好の矢の的になる。

松永方は、多くの部隊長を失い、遅々と前に進めなかった。



「ふふふ。いいぞ~、これは。面白いように当たるわ。侍大将は兜で

目立つでな~。良い的よ」

杉谷善住坊は悦に入っていた。先程の狙撃は、全て彼の仕業だった。

使っているのは、近江国友の鉄砲鍛冶に特注した狙撃銃である。

通常の1,5倍近い長さを持つお化け銃で、内部に軽く溝も掘ってあった。

そのおかげで、通常よりのはるかに長い射程を持つ。

これを4丁用意して部下に弾込めをさせて、取り換えながら狙撃を続けた。



***


「何をしておるか!まだ、城壁にとりつけぬのか!」


「そ、それが・・・。思いのほか、空堀が深く、乗り越えるのに難儀しておりまする。上から油や火を投げつけられ、負傷者が続出しておりまする」

「その上、鉄砲で狙撃され、侍大将がやられております。統率がとれませぬ」


先駆けである大和北部の国人衆では頭領など多くの名の有る者が討ち死にし、足並みが乱れていた。


「えーい、情けない。やはり、国人衆は役に立たん。本軍も投入せよ。夕方までに大手門をやぶれ!」






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