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只今、城を差押えられ中

作者: 腕無

魔王妃:ベル

見た目キンピカゴージャス、中身オバサン。(マンモンの眷属)

魔王:マーク

全身まっくろくろすけ。(ヘタレ眷属)


砂っぽく、岩がゴツゴツと剥き出しの空間で薄暗い空間の中、

何も装飾も無いシンプルなデザインの木で出来た机に向かい、

パチパチと木で作られた珠を弾き、一つずつ数を数える♀がいた。


「マイナスゥー、ゼロがひとーつ、ゼロがふたーつ、ゼロがみぃーっつ、

ゼロが・・・ゼロがっゼロが多い、多すぎるわ!!」


異世界一平和ボケしてる国から得た算盤を壊れない程度に力を込めて

机に叩きつけたのは、黄金の用に髪と瞳を輝かせる下に、

低めの鼻とローズピンクに染めた小さな唇をヘの字に歪め、

20代前後の人間の女に見える容姿の持ち主、

魔者で魔王の嫁、ベル魔王妃だ。


ここは、魔界の中で上級の中の上級が魔の頂点に君臨する王に仕えるものが集い、

魔界の王が鎮座する絶壁に建つ城・・・の地下に掘られた洞窟奥深くの最下層。

頂点とは、反対の地に潜り居る。

何故、魔王の王妃たるものが地下の、それも洞窟などに居るのか・・・


それは、夫である魔王が借金王でもあるからだ。


ベルの夫こと魔王マークは、浪費家で人間界に赴く度に

魔者には、不要な物ばかり購入していく無駄遣いをし続けている。

態々、人間が使用している通貨を使って。


魔界に人間用は愚か、通貨さえない。

光り物を好む魔者なら宝石など所有しているだろうが

人間が生きるのに必要な衣食住は、魔者にとっては、不必要な物。

魔王は、光り物を好む趣味は無く、

だからと言って、自分の配下や民から手に入れるのは、

魔界のトップとしてのプライドが抵抗する。

借金してる時点でプライドもDQNもないことに気付け魔王よ。


魔者が人間的に人間界の金を手に入れるのは、奪うか借りるかの二択。

光り物を好み、所有している魔者は、オヤジ狩りならぬ人間狩りで手に入れました戦利品。

今日も、どこかで魔者の言葉が聞こえてくる。

「ひと狩り行こうぜ」

お前らは、どこぞのハンターだ。


それに、魔者は人間と人間のように働くと言う考えはない。

え?お仕事?なんで魔者(我ら)が人間に奉仕しないといけないの?意味分かんない。

むしろ、人間なんぞ魔者(我ら)の玩具だろ?(ドヤァ

が、通常運転。悪気は、まったくもって無いんです。善意も無いけど。

人間、超可哀想。人間、超気の毒。


で、借りる選択肢をとった魔王が

通貨、資金を借りた人間界の金融機関、貸金業者が悪かった。

よりにも寄って魔王が利用した金融機関は、

犯罪によって産業が成り立つ犯罪大国にある

叩けば埃以上のモノもゴロゴロ出てくるブラックなヤミ金融で、

そのヤミ金融に勤めている一人が魔王を打ち負かす力を持つ唯一の人間、

人間からして見れば“勇者”と呼ばれる者がいたのだ。

裏の業界に勤めてる時点で“勇者”と呼んでいいものか悩みどころだが

“勇者”と言う名の取り立て屋により

力に力を見せつけて脅したり、踏み倒しという強行突破も出来ずに

魔界頂点のシンボルでもある城が“差し押さえ”にされているからだ。

それ故に、城に住んでいた者は外に追いやられてしまった。

かろうじて、仕事部屋は働かなければ返してもらう金は稼げないだろうと貸出状態にされている。

元は魔王の所有地なのに貸出扱い。

魔族にとって何と屈辱的な事か


抵抗にもならない足掻きで、絶壁の崖上に建つ城の真下、地中に穴を掘り、

頂上ではなく下層どころか地下に潜るだなんて、

地上に城が建ってる下の空洞にとか崩れてきそうで危ないと人間なら言いそうだが

魔界の城は、人間界の脆い城と違う特別製で魔界の物質と魔の力で出来ているのだ。

人間の考える設計どころか、そもそも材料も作りが根源から違うし、

城の建つ地も城以上に魔界の土地柄、特別仕様。

城の建つ地の下をいくら空洞にしても城が崖が崩れることは一切無い。


そんなこんなで、地下生活なう。な魔王夫婦に付き合い、

一緒の地下で魔王に仕える家臣は、文句ブータラ言いつつも

魔王兼借金王と人間臭い節約家凸凹コンビ夫婦、見てて飽きないので

何だかんだ言いつつ魔王夫婦から離れない。だって面白いんだもの。

最高位の位に着く夫婦を娯楽扱い。

強かすぎるのは、性格うんぬんではなく魔者特有である。

色々と酷過ぎる国民性。


「高級食品、高価な家具に変な絵に変な置物、怪しい壷以外にも

魔者の力に合ってない弱い素材でできた人間用のスポーツ器具、

魔界の空気に合わずに直に死んでまう愛玩動物に他もろもろ、

まだ武器なら許せる気がするのに、魔界、魔者に

必要無い物ばかり何で手をつけるかな」


「いいじゃないですか。

夫の好きな事をさせてあげるのが貴方の目指す良妻なのではないのでは?」


愚痴愚痴言う魔王妃の疑問に声をかけたのは、

実は、何気に王妃の傍に控えていた魔王の家臣である

レヴィアタン…魔王夫婦は、レヴィと呼んでいる♂

頭は、きめ細やかな鱗がテカるデッカイ蛇で、

鎖骨辺りから下は、人間のように二本足で立ってるが、

姿は人間とは異なり、獣、茶色い毛のイヌ科に似た身体の持ち主。

本来の姿は、別にあり、身体のサイズも大きいのだが、

今は、所在地に合わせて人間サイズに近付けているが巨体は巨体の2m超え。

160cmにも満たないベルは、レヴィを見上げるしかなく首が痛い。

ヘビ顔の表情は、読み取れないが呆れているというのは、空気で分かる。


「ぅっさいわねぇ!借金は、無いにこしたことないじゃない。」


「相変わらず我が魔王妃は、人間みたいなことを言うね」


「人間産なんでね!」


やれやれだぜと言わんばかりに溜め息をつくレヴィに応え返す魔王の王妃ベルは、

過去に産まれたてホヤホヤのところ捨てられてたのか知らないが

道端に落ちていたのを人間に拾われ、育てられた魔者という過去がある。

拾った人間は、人間界では下層位に当たる農家で貧乏で、

人手が足りないけど雇う資金もないところに魔者であるベルを見つけ、

魔者は、成長も早く育ち、食事も人の感情的な物を食らう=(イコール)食費はいらない

家族に給料はいらないよね☆という奴隷一歩手前な考えでベルという名を授け、拾われたのだ。

奴隷一歩手前の位置なのかは、

一応、人間的には愛情は注がれてたからだ。

魔界で暮らすようになった現在の生活にとっては、

その愛情が、魔界での生活で人間の常識が邪魔になっているのだが

それは、また別の話。


今は、減らそうとしてるのに減らないマイナスなゼロの数もとい借金。


「大体、借金返金する為に異国を落とすなら

買い物も強奪すればいいじゃない」


借金してまで支払うとか意味わかんない!とベルは、頭を抱える。


力に力を言わす魔界。

もっぱらのお仕事は、力を奮い見せつけるお仕事ですと言えば、

ただの力仕事に聞こえるが

実際は、主に人間を陥れ、略奪したり苦しめたりする非道なお仕事。

ターゲットは、何時も苦餌クジで決めてます。

DEAD OR ALIVE.人間にとっても運試し。ただし人間に引く引かれないの選択権は無い。


ベルが魔界に来る以前の魔界事情等は、知らないが

嫁いでから知った魔王による意味のない借金は、魔界が異国を落とす時に金品などの光り物、

時には、落とした国の人間を他国に奴隷として売ったりして借金返済をしている。

最近では、頻繁に異国を落とすものだから、

とある人間の国から指定された国を落としてくれと依頼がきたりする。

それでいいのか人間よ。

まぁ、その汚い人間の欲は、一部の魔者にとっては、美味しいので

依頼を受けて国を落とし、喜ばせた後に依頼してきた国も落とします。

人間の絶望メシウマー

人間で言う兵士であり部下の魔者は、ド鬼畜です。

ベルも依頼金と略奪した金目のものをGetし、二度どころか三度おいしいく

借金返済できるなら部下の性癖など眼をつぶるTHE見ない振り。

別に私に被害が無ければ問題無。

キャラ濃ゆい部下に一々、突っ込み入れるのもシンドイし、メンドイし

こっちは利益が上がればイイの!好きにヤッちゃってー


ただし、勇者のいる国は除く。

勇者を従業員として雇うヤミ金会社がある国とか何それ超こぁい。

勇者の所在地は、犯罪によって産業が成り立つ犯罪大国以前に

元々、勇者は、性格が悪い外道なので国とか関係ないけど、

あんな外道を雇う人間がいる国も嫌だと愚痴を零す魔王妃も言うことは結構な外道だ。

実は、同族嫌悪なのではと噂される今日この頃。

そんな魔界のトップと敵事情。


「いや、先ほどの「人間みたい」は訂正させて下さい。

貴方は立派な悪魔です」

むしろ鬼・・・鬼嫁の階段を順調に登って行っている。


近いうちに、尻にひく姿を拝めるかもしれない

二重の意味で


「・・・と、魔王妃は、元気に魔王家計簿(笑)をつけておりました。」


魔王が作った負の会計の仕事をベル魔王妃が全て引き受けており、

その書類をレヴィが提出、報告している相手は、

ベル魔王妃の夫で、魔界の頂点に立つ王、レヴィの上司で城主でもあるマーク魔王。

上から下まで漆黒の服を纏い、

褐色の肌に黒髪、怪しげに紅く染まった切れそうな程に鋭い眼は、

報告をしている家臣、レヴィには眼もくれず眺めているのは、

手に持つ、人間界で出回っている5cmくらい分厚い通販雑誌。

魔王妃がギャンギャン言ってるのに全然、懲りてない。

これは、また近い内に魔王妃の雷が落ちるな

人間的に言うと見た目は、クール系なのに中身は、残念系。

そんな魔王に家臣は、憧れもしないし、痺れない。

だが、魔王の周辺は、面白い事ばかりで止められない止まらない。

魔界一面白いのが魔王夫婦。面白ければ全てよし!

魔者に漫才を進めると意外とハマりそうだ。


「今は、自室で休まれてるでしょうが(借金の事で)気が荒れているようですので

少しは、大人しくしてあげたらどうですか?」


家臣だけど魔界一の娯楽である魔王夫婦の仲が拗れて別れることになるのは、

面白くなく避けたいことなので忠告はするレヴィの報告を咎めない魔王は、

ちゃんと聞いてたのか聞いてなかったのかは、不明だが

チラりとレヴィに視線を横目にだが向けた。


「そうか・・・もう、良い。下がれ」


「はっ」


レヴィが一礼し、退室した部屋で魔王は、

受け取った書類の作成者でもある妻、ベルのことを想う。

お互い静かな部屋に一人、お互いの事を想い浮かべ、

二人は、別々の部屋に居ながらも同時に憂いを込めて呟いた。


「お金を貯めて新婚旅行したいのに・・・」


「金などあるとベルは、余を置いてどこかへ行ってしまうのだろう」


人間で言う結婚をしたベルは、人間に育てられたこともあり、

結婚式に、ドレスに、ロマンス溢れる新婚旅行に憧れていたが

魔界での結婚式は人間界と違うので諦めていた。

ドレスは、魔王が借金王に成り下がるまで着ていたが貧乏な人間に育てられた故、

貧乏性が根付き、落ち着かないので己に合わないのが分かっているのでいい。

だけど、最後の憧れで希望の新婚旅行を

人間の振りをして人間と育った時でさえ行ったことのない

人間界一の観光都会で新婚旅行をしたいと言う乙女心。


そんな妻の心境を知らずに

人間界を旅行したいという話を「一人で魔界を出て人間界に行きたい」と

魔王を置いていくと勘違いをしている妻にベタ惚れヘタレは、

どうでもいい出費をし続ける不器用さんに、同族どころか

勇者も呆れて、取り立ての仕事は、心なしか手加減している。

だが、お得意様が居なくなるのも仕事がなくなるので教えてやらないド鬼畜。

周りの配下たちは、賭けの対象にして、

手出し無用ルールなど作って楽しんでいる悪趣味しかいない。

だってドS民族の代名詞、魔者ですから☆


魔王夫婦の擦れ違いは当分、続きそうだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 価値観の違いと文化の違いは、埋まるのが大変だし、誤解が多いですもんね。 魔王さまの借金理由が笑えました。
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