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「嫁候補は…1番有力な噂だぞ?」
「はぁ???」
「前理事長枠はその時の担任数学担当と結婚したらしいからね。もう、彼は学園を去っているから噂だけど」
「たっ…ただの噂じゃないんですか?たまたまじゃないんですか?」
「偶々だったとしてもな、卒業と同時に教師と結婚なんて学園側が普通だったら許すわけねえだろ?」
「…許されないから学園を去ったんじゃ?」
「結婚式には前理事長も出席したらしいしかなり盛大に祝われたみたいです。」
「で、この学園を辞めてアメリカの大学の研究室に入ったんだったけか?」
「可愛いお嫁さんを貰って好きな事を研究し放題です。羨ましいかぎりですよね」
「羨ましいですか…。でも財前先生や柳先生は若くてカッコいいですし、もてそうだから生徒口説かなくても困らないんじゃ・・?嫁候補とか必要なさそうです。」
むしろ候補とか迷惑そうだ
「こんな学園に勤めてますしね、休日もクラブだ委員会だ会議だので呼び出されますし、自分の時間もままならないのに出会いなんか皆無なんですよ」
「べつになー結婚願望があったわけじゃないんだがな…溜まった洗濯物とか汚れた部屋とか何もない台所を見ると嫁欲しいなぁって、最近思うんだ」
それはあんた、嫁が欲しいわけじゃない!家政婦が必要なだけだ!
「去年の年末に独身の職員達全員にアンケートがあったんですよ」
「あーあったな!理想の嫁みたいなやつ、相手に求める事を3つ書けみたいな事だったな」
…なにしてんだこの学園 必要か?その情報必要か??
「名前は無記名でよかったですけど、大体筆記でわかりそうですよね」
「柳先生は何を書いたんだ?俺は…家事、地味、ポニーテール」
ポニーテール… 財前先生…
あんた本当にどうでもいい情報をちょこちょこ投げてきやがるな!
「財前先生、あなたの好みなんてどうでもいいんですよ。まあ、家事能力と地味な子と言うのは同意しますけど、ポニーテールは同意しかねます。黒髪ストレートセミロングでしょこの場合はっ!!!」
「は?ポニーテールで項が見え隠れするとこがいいんじゃねえか!」
「あえて見せずに、たまたま見えてしまったり自分にしか見せない首筋がいいんじゃないですか!」
聞きたくなかった。編入初日にどーでもいいこと聞いた。
・・・帰りたい。
家に・・
というより昨日に返りたい。
叶うのなら先週くらいに戻りたいよ!!
今朝、私を気遣い声を掛けてくれた春日先輩
初対面で頬にキスした和久井
私を取り合っていた委員会の委員達
「理事長枠」の効果に期待して私に優しくしたり近づいたり取り合ったり…か。
別に優しくして欲しくもないし、近づいてほしくもないし
もちろん取り合って欲しくもないから、痛くも痒くもなくなんとも思わないはずなんだけど
でも
なんだか
ちょっと悔しい・・・・
(私の知らない効果を)期待して利用しようとしたって事だよね?
あーちょっとムカついてきた
委員会も部活も絶対入らない!入ってなんかやらない!
予算優遇?知ったこっちゃない
特に保健委員会は絶対に関わらない!!!
春日先輩と和久井の2人も接触してきやがったなんて…どんだけ予算欲しいのよ!!
副理事長枠?とやらお嬢様引っかけて援助してもらえばいいじゃない!
あーお嬢様達は許嫁がいるんだったけ?学園の男が言い寄っても無駄なのか・・?
頭の中がぐるんぐるんする
完全にキャパシティーオーバーだ
「枠」も「先生達の女性髪型談議」も私には関係ない話のはず
前者は、関係ないと言いきれないけれど私はそんな事実しらない
行けと言われたから、この学園に通う選択枠しかなかったから…
あーぁ 日本で暮らす事しか考えてなかったけれど
これ、あれじゃね?
両親にくっついて海外に行った方が…まともに暮らしていけたんじゃ…?
そんな思考をぶった切ったのは
「どんな女性より1番美しく可愛らしくステキな女性は私の姪の百合亜(3歳)ですけどね!」
女性髪型談議がヒートアップし、女性の好み談議に発展していたらしい先生方
口調はさっきまでと一緒だが、声の大きさが5倍ほど大きくなった柳先生の言葉だった
…そうか。柳先生 姪っ子命のタイプか。
イケメンだけど、ロリコンですか? ただの家族愛ですか?