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「次回」の意味を理解した(したくなかったけど)のは
先生3人が食事を終えお皿をお水につけていて
もごもごもご 私だけまだナポリタンを食べている最中
「じゃ、斎賀 来週もよろしくー」
「斎賀さん、次は和食がいいです」と言う言葉を残し財前先生と柳先生が立ち去った
「???????????」
口の中にナポリタンが入っているので言葉を発することは出来かねる
ただ、先生達のいう来週?和食?の意味がよくわからない
いや、単語の意味はわかるよ? ただ何を意味してんのか・・・嫌な予感がしてならない
「あ、そだそだ。斎賀さんこれにサインしといてー」
佐伯先生はそう言いながら私の前に1枚の紙切れを置いた
ん?と思いながらちょっと行儀は悪いけど 咀嚼しながらそれを覘くと
「家庭科同好会入部届」と書かれていた
ちょ・・・・・っ なにこれっ!!!
「君、前の学校で家庭科部だったでしょ?この学校はさ、家庭科部ないからさ、人数居ないから同好会からだけど作ってみたよー」
「えええっ わざわざ作ったんですか?」
「顧問は僕ね。家庭科部って言っても男子には敬遠されがちだし、女子はほぼ部活動なんてしてないし…本当に少人数で とりあえずは僕と君の2人なんだけどね」
2人っって!! 嫌だよ!!!! っていうかそこまで家庭科部にこだわってないし
他の女子が部活動してないんじゃ 私も部活に所属しなくてもいいんじゃ・・・???
「ふ・・二人…しかも生徒一人しか居ないのに同好会とはいえありなんですか・・・?」
「有りか無しかで言ったら普通は無し。ただ君は特例だからね」
「…これも理知長枠特権とか言うんですか?」
「正解」
「生徒1人の為に同好会まで立ち上げなくてもいいんじゃないですか?部活動も強制じゃないんだったら、どこにも所属する気ないんですけど…」
「あーまあ、強制ではないけどね、でもこれは君の為だよ」
「私の為? …家庭科部とかそんなに思い入れあるわけでもないですよ?」
「君が無所属の場合さ、毎日色んな部から勧誘あると思うよ?それも相当シツコイのばっかり」
「…予算目当てですか」
「うんうん、本当の所予算が優遇されるのかは僕も知らないけど、噂の一つだからね」
「どっか適当に名前だけ所属して幽霊部員とかダメなんですかね?」
「んー適当にって言っても部が決まるまで、クラブ同士で血みるぞ?そもそも野郎ばっかの部に入りたい?」
「血みる・・ってそこまで大事ですか?」
「大事だね、スポーツ系ならなおさらだろうな 血の気の多い連中ばっかだから」
「はぁ・・・」
「で、この家庭科同好会が必要なわけさ。他が争わないように創立しちゃえばいい」
「創立して…2人でなにするんですか?」
「毎週土曜日ここで昼飯を作る!」
「あ?」
「さっきしたことを毎週土曜日するだけだよ?」
「さっき・・・ってまた来週もお昼ご飯作るんですか?えっ財前先生や柳先生の分も?」
「そうそう。それだけでいいよ、僕ら独身者は昼食に困らない、君は面倒な勧誘をかわせる」
…独身者って3人だけなのかな?もっと居そうな気もするんだけど
勧誘をかわせるのは 助かりそうだ
週に1回っていうのは無理なくていいよね。
同好会 入っちゃった方がなにかと楽・・?
うううううううううううん
あっ でもこれだけは言わせてほしい
「佐伯先生」
「ん?どうしたサインする?」
「サインします」
「理解の早い子は嫌いじゃないよ」
「でも・・・ですね」
「でも?」
「これってただの料理部じゃないんですか?」
まあ、正確にいえば料理部でもないだろう。昼飯同好会ってとこかな
「…内容なんてどうでもいいんだよ?僕はね、前々から家庭科部がないのが不服だったんだ
この学園はね、一応共学だから…家庭科の教科がある癖に 女子は勉強漬けか学園に居ないかの2通りしか存在しないし、野郎共は皆「家庭科」ってだけで敬遠しやがるし 時間割には割り振ってあるもののほぼ潰される!!!!!! おかげで僕は仕事が少ないよ?楽は楽だけど 暇なんだよ!!!社会人なのに、仕事中が暇ってどーいうことだよ!! そこへ君がこの学園に来た、理知長枠、しかも前は家庭科部 もうこれは運命だと思ったね!!! 理事長枠の君を取り入れて同好会を作ったら、きっと委員会の連中が君に近付く為に同好会に入り出す そこを君の手料理で胃袋を掴み 噂を広げ人数を増やす 人数が増えたら同好会から部に格上げ!!! どう?良い作戦だろ?」
愚痴から始まった佐伯先生の言葉は後半へんな野望に変わってた
私の手料理で胃袋を掴み・・・って 掴める自信などないよ
っていうか、他力本願すぎだろ!!!
私の為・・・などではなく 先生に野望の一環だと聞かされた時
すでにサインをし終えていた
ペンを持った私の右手を上から佐伯先生が掴みそのままサインを書かされるという詐欺みたいな方法だったけどね!!!!
ちくしょおおおおおおおおおおおおおおお
という心の叫びは 佐伯先生の黒い笑みを前に呑みこんだ
どうしよう。佐伯先生恐い。