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ぐぅ~~
財前先生のお腹が鳴ったのは
柳先生がサイドボードから取り出してきた「百合亜ちゃんアルバムNO7」を見せられてた時
お宮参り、お食い初め、誕生日からありとあらゆる記念日、
ある意味私的にはお腹いっぱいのタイミング
時計を見ると昼を随分と過ぎた頃だった
「なぁ、俺腹減ったよぉー昼飯行かないか?」
「…あぁもうこんな時間でしたか、百合亜の可愛さを語ると時間がいくらあっても足りないですからねぇ また次回にしましょうかね」
…もう少し早いタイミングで助けて欲しかったな。財前先生。
そして次回という機会はないと願いたい。もう百合亜ちゃんは十分です 柳先生。
欲していた情報はあいまい程度にしか入手できなかった
むしろいらんミニ情報を聞かされた気がするけど、家に帰ったらきれいさっぱり忘れたい
財前先生がポニーテール好きとかまったく興味ない
百合亜ちゃんの名前の由来とか乳歯の生えた記念日とか…今後役に立ちそうにない情報だ。
柳先生はローテーブルに並べた百合亜ちゃんアルバムを引きだしに戻し
財前先生は私達が飲んだコーヒーカップを片付けている
ん。いいタイミングだろうな。
「私の為に時間を割いていただきありがとうございました。失礼します。」
ペコっと頭を下げお礼をいいつつドアに手を掛ける
私もお腹空いたなぁ。
朝時間がなくって朝食の食器シンクに残したままなんだよなぁ…
昼の準備はご飯を炊くところから始めなきゃだ 面倒くさいな
そんな事を考えながら化学準備室を出ようとしたとき
「あ、ちょっと待て」
掛けられた言葉と同時に引っ張られる右手
振り返ると私の手を掴んでいる財前先生
「斎賀、頼みあるんだ」
「私からもぜひお願いします」
「・・・・・・・・?」
ぐつぐつぐつ トントントントン ジャージャー
ただいま4人分のナポリタンを作っております。
今まで3人分のご飯を毎日用意してたから別に4人分とか苦ではないけれど
さすがに4人前のパスタを入れたフライパンは重いね。片手じゃちょっとキツかった…
断わる間もなく引きずられるように連行された家庭科調理室(科学準備室の隣)
「ちょっと、昼飯作ってくれよ 俺らと斎賀の分」と財前先生
「え?」事の成り行きがよくわからない私に
「簡単なものでかまいませんよ。材料は色々ありますからお任せします。あーでも私は薄味が好みです」決定事項のように声を掛ける柳先生
「はぁ????」
「おおーい 何を勝手に好き勝手言ってんですか?お二方共家庭科関係ないでしょ?使うんだったら僕の分もちゃんと加えてくれないと材料も場所も提供しないですよ?」
あっけにとられてる私の後ろから掛けられた新しい声に振りかえる
「あー君が噂の理事長枠?よろしくねー僕は家庭科担当の佐伯亮太です。よろしくー」
「はぁ よろしくお願いします」
こげ茶色のゆるいパーマの掛かった短めの髪、黒目がちな奥二重 爽やか風です。
中身しらないからあくまで風だけど… ちょっと軽そうだと思ったのは内緒
また新キャラかよ…後何回くらいこんなやり取りを交わせばいいのか…
とりあえず流石に今日はもう飽きました。あとの新キャラは後日にして欲しい
つうか家に返りたい!!! と熱望したところで
イケメン先生3人に囲まれてる私に逃げ道などあるわけがなく
しぶしぶ4人前の料理を作りだしましたよ
ご飯を炊く時間がないからパスタって安直な発想です
…佐伯先生、担当教科家庭科なんだからあんたが作ればいいじゃないか!!!と
心で思っていても声に出せない小心者ですみません
(美味しくなあれw)とか念じながら作ると美味しいとか
料理の隠し味は愛情とか言うよね
(帰らせろ!)
(なんで私が!!)
(ちくしょうイケメン滅べ!)
(ていうか、誰か手伝え!!!)と ちょー念じながら作ってみました。
もちろん愛情なんか1ミクロンも入っちゃいませんよ?
ない物は入れられるわけがないからね!
隠し味は醤油です。
薄味がいいと言った柳先生の言葉なんかしったこっちゃありません
濃くする前に1人前取り分けておけばいいだけの話ですが、それすら面倒臭いのでしませんよ。
誰も手伝ってくれなかったし!!
さぁ食え、早く食え、そして私を帰せ!!!と言わんばかりに
お皿に適当の盛り付け3人へ差し出す
色合いも栄養バランスも全部無視 味は普通だとは思う(味見してないけど…)
初対面の先生、しかもイケメンとかに食べてもらう手料理ではない
もー少し可愛く盛り付けるとか、スープやサラダも作るとかやりようはあったかもだけど
へんに気に入られてまた作れとか言われたくないから めっちゃ手抜き
「私には、少し濃いですねえ」
「なんつうか普通だな」
(うっしゃ!!)
柳先生と財前先生の感想を心の中でガッツポーズ。思惑通りです。
これでまた作れという命令はそうそう出ないはず…
その空気を壊したのは家庭科担当佐伯先生だった
「野菜の切り方とかいいし、手際は申し分なかったよ。」
「…ありがとうございます?」
「斎賀さん…君さぁ」
「はい?」
「あきらかに手抜いたでしょ?本当はもっと美味しく作れるよねえー?」
「えっ?」
「ねぇ、なんで手抜きしたの?出来ない子が頑張って作って普通なら褒めるけどさぁ、出来る子がわざと手抜いてこんなもんでいっかっていう適当なもの出されるの、ちょっと腹立つんだけど」
…やべえ、見抜かれてる。そしてご立腹?
「まっ 今回は見逃す。でも次回はちゃんと作ってね? 次こんなの許さないからね」
許さないからね と言った佐伯先生の目はちょー恐かった…
っていうか次回ってなに!!??