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21 一日の終わり

微妙に下品な表記があります。

苦手な方、食事中の方、ご注意下さい。

何だかんだであの後は降ろして貰い、片付けと食事提供にキリを付けて厨房と食堂を封鎖した。

食堂封鎖前に駆け込んで来た人達で本当にパン以外の食事が全部消費されてしまったのには驚いた。皆様、良い食べっぷりでした。




トイレに寄ってそのまま調理部隊の面々に連れて行かれたのは、大浴場。トイレのすぐ側にお風呂があった。何でも、ここが調理部隊専用の大浴場なんだとか。掃除中以外はいつでも使用可なんだって。

因みに個別のお風呂は魔王様専用か、客室か、医務室にしかないとの事。

………もういいよ。子供だもん。今更、黒歴史の一ページが増えた所で痛くも痒くもないわーっ!(泣)


開き直ってオッジさんに続いてお風呂に飛び込むと、オッジさんが普通に世話してくれたので、お礼にオッジさんの背中を流してみました。気分はおじいちゃんとお風呂だ。


少し遅れて他の面々が入って来る頃には、オッジさんと湯船の中です。微妙にあぷあぷしそうだったので、オッジさんが抱っこしてくれてます。あー、いい湯だなぁ。


それにしても、皆様良い筋肉してますな。見せる筋肉じゃなくて、実用的な筋肉。贅肉なんか一切無い。オッジさんはしっかり筋肉で厚みが凄いけど。

…自分のポッコリお腹をちらりと見て切なくなってしまったのは気のせいだ。だって、子供だもん!


三馬鹿トリオの兄さん達はまだ懲りずに何度もアタックしてきたけど、周囲の人々の鉄壁の守りで私に近付けなくさせられていた。

余りにもしつこくて諦める様子が見られない三人にオッジさんが誅殺せんばかりの状態になった時にはアルフ少年に預けられた。アルフ少年はまだ他の面々に比べて線が細い。体質もあるだろうけど、年齢的にこれからだね。

途中で何故かアルフ少年にお湯に浮かべられてしまったが、バタ足をしたらお行儀が悪いし、皆様にお湯が掛かる。どうしていいのか分からず、遠い目をしてプカプカ浮いていた。

何だか騒がしさが近付いて来たなーと思ったら、アルフ少年に慌てて回収されたが。

どうもオッジさんに追われているにも関わらず、三馬鹿トリオの兄さん達はまだ諦めていなかったみたい。これにはオッジさんに加勢すべくシュナスさんが動いていた。

それにしても三馬鹿トリオの兄さん達、オッジさんとシュナスさんから逃げ切ってる辺り、逃げ足の速さは相当な物だね。


そんな騒がしくも楽しい(?)お風呂を終えて上がると、ディルナンさんにタオルで包む様にして拭き上げられ、預けていた着替えの袋を渡された。

昨日と同じ寝巻のワンピースを着終えると、ラダストールさんが水の入ったコップをくれたのでご好意に甘えて頂いた。水が美味しいなー。


一息吐いていると、オルディマさんが魔術で全員分の服を洗濯していた。タオル一枚を腰に巻いた状態で。

三分クッキングならぬ三分洗濯。…三分と言えば、カップラーメンだよね。仕事上がりの夜食によくお世話になったなー。あの、昔ながらのオーソドックスなのが好き。

ってカップラーメンの事を考えてたら、オルディマさんが綺麗になった服を畳んで渡してくれた。


「オルしゃん、ありがとーなの」

「どういたしまして」


受け取った服を、ワンピースを入れていた花柄の袋に入れていると、三馬鹿トリオの兄さん達によるコントが始まった。

サムさんがバースさんの腰に巻かれたタオルを引っ張りながら「良いではないか、良いではないか」の台詞を口にすれば、引っ張られてるバースさんがタオルを押さえて甲高い声で「あーれー」って。最後の一人であるカインさんは囃し立てているし。

…凄い既視感を覚える。こういうのってどこでもあるんだね。

あんまりにも三人が楽しそうだったから、思わず側にいたオルディマさんの腰に巻かれたタオルをそっと掴んでつんつんしてみた。


「よいではないかー」

「………三馬鹿」


遊んでみたら、オルディマさんが笑顔のまま物凄く低い声で三馬鹿トリオの兄さん達を呼んだ。怖っ。

その声に、盛り上がっていた三馬鹿トリオの兄さん達が一斉に沈黙して恐る恐るオルディマさんを見た。他の面々も一緒にオルディマさんを見る。

その視線の先には、オルディマさんと、オルディマさんのタオルをつんつんしている私。


「ユーリちゃんがおかしな事を覚えるだろう?君達、そんなに抹殺されたい訳??」

「よいではないかー」


お怒りモードのオルディマさんの迫力に、思わず台詞が口をついて出てしまった。笑ってくれたのはアルフ少年だけで、大人な皆様は目を吊り上げて三馬鹿トリオの兄さん達を見る。


「「「よ…良いではないかー」」」


顔面蒼白で震え上がりつつ三馬鹿トリオの兄さん達が漏らした台詞に、他の面々の目が増々吊り上る。

それを見たアルフ少年は何かを察したのか慌てて私の所へやって来た。オルディマさんからそっと引き離すと、その手で目を塞がれる。

その直後、三馬鹿トリオの兄さん達の悲鳴が盛大に上がったが、少ししてアルフ少年の手が外される頃には三馬鹿トリオの兄さん達は脱衣所の隅っこに積み上げられていた。

この人達はこういうキャラクターなんだね。…何だかカインさん、凄く恍惚としてる気がするんだけど(汗)






結局、三馬鹿トリオの兄さん達はそのままに、それぞれ着替えて大浴場を後にした。

大浴場とトイレを挟んで、食堂と反対のお城の隅っこの方にある部屋が調理部隊の隊員に与えられている部屋らしく、各自部屋へと入っていく。


「ユーリ、お前はこっちだ」


ディルナンさんに連れて行かれたのは奥の方にある、他の部屋より立派な扉の部屋。


「お前じゃ隊員用の部屋のノブに届かないからオレの部屋に居候だ。扉に手を当ててみろ」


ディルナンさんの指示に従って扉に両手を当ててみると、何やらディルナンさんが呟いた気がした。ディルナンさんを見上げようとしたら途端に扉が青白い光を放つ。

え、何これ!?


「…押してみろ」


ディルナンさんの言葉通りに扉を押してみると、立派で重そうな扉が少し力を入れるだけでいとも簡単に開いた。

開いた先には、ディルナンさんのらしい実用的でシンプルかつ最小限の家具と、反対側にサイズが半分の同じ一揃えが置いてあった。さり気無く部屋の隅には折り畳み式の仕切り。

北の魔王城に子供は私以外いない。つまり、私サイズに用意された物は特注品って事なのはもう分かってる。

だから、何でこんなに早く出来上がってるのー!?


「見ての通りだ。お前のスペースはそっち」

「…たいちょ、ボク、ここいていーの?」


部屋に入る時、皆それぞれ自分の部屋に入って行った。つまり、部屋は個人のプライベート空間の筈だ。


「どうせ無駄にスペースの余ってた、寝るだけの部屋だ。問題無い。時々気晴らしに飲みに行くしな」


…この人、どうしてこんなに優しいんだろうか。もういいや。序でに甘えてやる。

ディルナンさんの足元に思い切って抱き着いてみると、優しく頭を撫でてくれた。


「明日も仕事だぞ。さっさと寝ろ。……それとも添い寝してやらないと寝れないか?」

「たいちょと寝るー」


からかいかもしれないけど、今日は乗っちゃうもんね。どうだっ。

細やかな意趣返しのつもりだったけど、軽々と抱き上げられた先にあったディルナンさんの表情は凄く優し気だった。


「よし、今日は一緒に寝るか」

「あい」


ディルナンさんが私の小さなベッドから枕を取ると、自分のベッドに歩いて行く。

寝やすい様にベッドを整えてから降ろしてくれたので、靴を脱いで下に落とした。ディルナンさんも靴を脱いでベッドに上がる。手に持っていた袋はベッドサイドのテーブルに置かれた。

自分の枕に横になると、ディルナンさんも横になって上掛けを掛けてくれた。うん、微妙に恥ずかしいけど居心地いいなぁ。顔がにやけて凄い事になってそうだ。


「おやしゅみなさいー」

「あぁ、おやすみ」


寝る前にちゃんと挨拶してっと。


ベッドのぬくぬく感と、ディルナンさんの絶妙な力加減のポンポンは効果絶大な睡眠魔法です。


お休み三秒で、私の意識は眠りへと落ちて行った。

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