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70 本日の予定その12 オマケの方が豪華ってどういうこと??

北の魔王城のドラゴン舎の横に降り立つと、着陸前にその姿を捉えていたらしいヤハルさんが出迎えてくれた。


「おかえり。よう戻った」

「ただいま戻りました」

「ただいまでしゅ」


ツェンさんと一緒に出迎えの挨拶に答えていると、ヤハルさんと一緒に待機していた騎獣部隊の隊員さん達が手際よく手綱や鞍を外す手伝いをし、ドラゴン以外を獣舎へと誘導していく。


「収穫はあったかの」

「とんでもなく。ただ、その意味が分かってるのがドラゴンだけなんですよ。物凄く阿鼻叫喚状態だったせいで理由はまだ聞いてません。取り敢えず日暮前に北の魔王城に辿り着けるように帰ってきた感じなので、これからそれを詳しく聞く所でして」

「ふむふむ。またユーリかの?」

「大当たりです、隊長」


迷いなく私の関与を疑うヤハルさんに、ツェンさんが苦笑して頷く。

何かあると私が関わってるって思われてるのかしらん。


「凄いですよ。大人達が島までの移動のアレソレを相談している間にちょっと一人と二頭で歩き回っただけで恐らく何らかの理由で来れなかった雷属性以外の精霊姫を次々と口説き落としてましたから」

「………………は?」

「恐らく、ただ偶然通りかかっただけの精霊姫達だったと思うんですけど。気づいたら一人と二頭が可愛くナンパしてました。いや、まさかと思ったんですけど、最後の闇属性の精霊姫だけは我々大人達の前で口説き落とされたので間違いないです。調理部隊の三馬鹿トリオの悪い教育(ナンパ術)をキッチリ飲み込んでたみたいで」

「…………。ディルナンに報告じゃの。それにしても精霊姫を口説き落としたか」

「えぇ。その上で、精霊姫から“精霊の祝福”なるものを受けていたんですけど。それにドラゴン達が大興奮でして。それが何かをその場で聞くには時間が無かったまま戻ってきたと言うのがざっとしたあらましです」


ツェンさんが物凄くザックリとヤハルさんに事情を説明する。


あ、ヤバい。お説教案件かもしれない。私もだけど、それよりも主に三馬鹿トリオの兄さん達が。


「“精霊の祝福”というのが肝なんか」

「何となくセリエル殿は知っているみたいですね。それ以外の面々はよく分かってません」


そこまで騎獣部隊の二人が話していると、話に出てきたセリエルさんが二人に視線を向けた。

そんなセリエルさんはシエルさんとルートヴィヒ少年と何かを話していたみたい。


そこへ私の指導係の二人にソフィエさんも合流してくると、長老や母竜達も漸く落ち着いてきたのか合流した。


「ほんで、騒ぎになっとる“精霊の祝福”っちゅうのはどんなモンなんじゃ?」


揃ったのを見て、ヤハルさんが一番に口火を切った。

その視線の先は、セリエルさん。


これにはセリエルさんが少し考え、それからドラゴンの長老達に視線を向ける。


「オレの知識は恐らく触り程度だろう。だが、人型に説明するには一番とっかかりやすいはずだ。必要があれば補足を頼めるか」

〈それで構わんよ。細かい所となると、それこそ古の暗黒戦争時代の歴史の話にまで遡るからの〉


そんなやりとりをすると、自然と場の視線はセリエルさんに集まる。


「精霊がそもそも各属性の魔力や魔素の集合体として生まれた存在(モノ)だと言うのは先に説明した通りだ」


恐らく私にも分かりやすいように一番初歩の初歩とも言うべき所から説明してくれているのだろう。


「だがそんな力の集合体である精霊は今では精霊自身の意思で姿を現さねばその姿を認識することは通常難しい。ただ、ごく稀に波長の合う幼子や特殊な視る目を持つ者がいる」

「それにユーリが該当した、と?」

「恐らく。ユーリが申し出るまで、誰も精霊姫の存在に気付かなかった。そして代表として光の精霊姫がユーリを指名してその願いを問うた。それはつまり、ユーリが一番最初に光の精霊姫をその目で捉え、誘ったと考えられる」


おおう。セリエルさん凄い。大正解。


「元々精霊はごく普通にそこらにいたとされる。力の大小でその姿はまちまちで、知能や感情もその大小に応じて異なったようだがオレが子供の頃には既にその姿は見えなくなっていた故本当の所は知らない。あくまで年寄りから聞いた御伽噺にすぎない。……その中で精霊は生涯に一度だけ、好意を持った相手に己の属性の魔力の消費効率を高める精霊だけの特殊なまじないが使えたと言われている。それがいわゆる“精霊の祝福”と呼ばれるものだ。精霊姫の力はただの精霊の比ではないだけに、一度限りではないようだが。恐らくそれは精霊王も同じだろう」


セリエルさんの淡々と続く説明に、今のところドラゴンの長老達の補足は入らない。


ふむ、つまりゲーム風に言うと特定の効果……この場合は属性別の魔力効率の上昇ってなバフをかけてもらったってことね?


「あくまでも好意を持った相手の助力となるよう願ったまじないだったであろうその祝福の力を巡り、勢力下へ加わった祝福者を兵器と同等に利用し、祝福者を奪い合って争い、果ては更なる力を求めて精霊に祝福を強要までするようになった。それがかの暗黒戦争だ。天界や魔大陸とは違う大陸の、人間の古き闇の歴史により精霊は全世界からその姿を消したとされる」


そしてちょこっとドラゴンの長老から話が出ていた歴史にも触れて教えてくれる。

セリエルさんの知識はとても深い。


……ところで、セリエルさんって何歳なんだろう。

疑問に思いつつ、お話は続く。


「精霊達へのそんな姿を数多見聞きしているどころか酷ければ自身や精霊王へ刃を向けられたことさえあっただろう。精霊姫は、精霊王の伴侶にしてその代行者となり得る存在(モノ)。それだけの力ある存在だけに、永く存在する精霊姫ほど人型への感情は複雑だろう」

「……それが精霊そのものが物語でしか語られんようになった理由、かの」

「その存在を識ることはあれど、その姿を視ることはない。それこそが今では滅多に語られなくなった過去の証明そのものだ。そんな中で、ユーリの元にその姿を見せたことがどれだけ僅かな確率と言えるか」


……大きすぎる力が良いばかりではないのは世界は違えど一緒なのか。


つまり、精霊姫に会えただけでもとんでもない奇跡的状況だったんだ。

チャンスの神様って、本当にいるのかも知れない。


「そしてユーリの純粋で真っ直ぐな願いだからこそ、その失われたに等しい“精霊の祝福”が白い子竜に与えられた。それにより白い子竜は光属性の魔力の消費効率が上がった。それはつまり、僅かな光属性の魔力であってもその何倍もの量として成長に繋げ、より確実に生存率を高めることに成功したことを示す」

「なんと! 光属性の魔力の補充先の確保だけでも僥倖じゃったが、それ以上の成果じゃ!! そりゃあドラゴンが阿鼻叫喚にもなろうて」

「そんなとんでもないことだったんですか!?」

「こんな奇跡が続くのか……!」


セリエルさんの見解にヤハルさんが興奮気味に食らいついた。それはツェンさんも、何よりもソフィエさんもで。


逆に、指導員の二人は顔を見合わせて何やら頷いている。

更に二人がセリエルさんを見れば、セリエルさんも二人に頷き返していた。


「ちなみに、“精霊の祝福”はユーリが願った白い子竜だけでなく、赤い子竜とユーリ自身にも与えられている」

〈そうじゃの。子竜達のそれぞれの主属性の祝福だけでもとんでもないと言うのに、愛し子自身には集った六人の精霊姫全員からの祝福じゃ〉

〈その昔、誰もが欲しがった力はキッパリ拒否しておったの。巨大な力を持つ恐ろしさをこの幼さできちんと理解しておる。その上であくまでも白い子竜(いもうと)の健やかな成長しか望まんかった〉

〈先に弟妹だけが祝福されても、妬むどころか誰よりも喜んで真っ先に礼を述べた。その言葉に一切の偽りは無かった。それがどれだけ精霊姫達の心を癒したことか〉

〈精霊姫としての圧力で全員で押しまくって出てきた願い(ワガママ)が不在だった雷の精霊姫含めてまた一緒にお茶したいでは、さぞかし外見と相まって愛しさしかなかったであろう。だからこそ、愛し子に精霊姫全員が祝福したんじゃろ〉


セリエルさんの言葉に、長老達がニコニコ上機嫌に伝える。


あれ。精霊姫一人だけでもとんでもないバフなのに、私ってばそれを雷を除いた属性分頂いたってこと?

しかも、効力は期限なしのずっとな感じ??


それでもって指導員二人のあの反応ってことは……。


「次の“循環”時は所持魔力に対する各属性の魔力の消費効率の検証が必要だろう。それまで他属性は兎も角、治療薬への光属性の魔術の添加……いや、光属性の魔術自体を使用不可とする」


恐る恐るセリエルさんを見上げると、深々と溜息混じりにキッパリと結論を出されてしまう。


やっぱり、要検証ですか!


〈子竜達は我々が先に様子を見させてもらおう〉

〈そうすれば、愛し子の検証にも役立とう〉

〈特に白い子竜は優先的に見んとなぁ〉

〈まずは明日の日向ぼっこからじゃな〉


うわーん、周囲の余計な仕事がまた増えたー!!

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