水月
決して、
掴めないと解っていても
手を伸ばすモノがあるのだと
お前は云うのだな
そうだな
お前は正しいよ
けれどな
お前は間違っているよ
掴めないと解っていても
手を伸ばすのではない
掴めないと解っているから
手を伸ばすのだ
何処までも、
何処までも、
ただひたすらに伸ばすのだ
海底に沈む月を救い上げ
その手から零れる水に
誰もが、
届かないと解っているからこそ
我らが安心して手を伸ばすのだと
お前は愚かだと嗤うのだな
そうだな
お前は正しいよ
けれどな
お前は間違っているよ
誰もが届かないから安心しているのではない
誰にも奪われないから
我らは安心して手を伸ばすのだ
何処までも、
何処までも、
誰のものにもならない
誰のものでのない
美しいその海底の月に