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Prologue

 人は「愛されたい」と思う。僕だって例外じゃない。誰かに必要とされたいと思ったこともあるし、誰かのためなら何にでもなれると感じた瞬間だって、きっとあった。


 ただ一つだけ、どうしても理解できない感情がある。


 僕はそれなりにうまくやれている。少なくとも周りはそう言う。目立つわけではないが、困ることもない。与えられたことはそれなりにこなし、期待されれば応えようとする。


 人から頼られることも多い。それが嬉しくないわけではない。むしろ、自分が誰かの役に立っていると実感できる瞬間は、この上なく安心できる時間だ。


 時折、都合よく扱われていると感じることもあるが、深く考えないようにしている。役に立てるなら、それでいい。そう思うことで、自分の位置を確かめているのかもしれない。


 けれど、どうしても腑に落ちないものがある。


 それが「恋愛」だ。


 誰かを好きになること、その人の言葉一つで気持ちが揺れ動くこと、会えないだけで寂しさを覚えたり、たった一言で救われたような気持ちになったりすること。


 そういう感情の動きが、僕にはどこか遠い世界の出来事のように思える。その感覚を口にすると、たいてい理解はされない。驚かれるか、冗談だと思われるか、あるいは少し困ったような顔をされる。その反応を見るたびに、自分が見ている世界と、周囲が見ている世界は違うのだと実感する。別に今に始まったことではない。昔から、どこかで少しだけずれている感覚はあった。ただ、それを問題だと思ったことはなかった。


 それでも、気づけば心の奥に「置いていかれている」という感覚が静かに積もっている。


 理屈では不要だとわかっている。必要だと思い込んでいるだけだと、自分に言い聞かせることもできる。それでも、その感覚は消えない。まるで蛇が獲物を締め上げるように、ゆっくりと、確実に、僕の内側を締めつけてくる。抗うことも、受け入れることもできないまま、僕はただ、その存在を見ないふりをしている。


Prologue読んでいただき、ありがとうございます!

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