②悪魔将ヘカトンケイル
月に代わる刻――――
オルグらは一斉に黒い戦士に襲い掛かる。
まさに「かッ飛べ!」と言わんばかりのオルグの大群に黒い戦士はドラゴンスレイヤー一振りで一気に肉塊にして野に散らす。
まさに血の雨。
驚愕して動きが止まったオルグは、その瞬間に弓矢が突き刺さる。
鋼鉄の籠手に装着されたガトリング式ボウガンによって遠くにいても、その命を奪われてしまうのだ。
「な、なんだ? あの戦士……ひとりで戦争でもする気なのか?」
兵士が逃げるのも忘れ、見入っている。
「休ませるな! どんどんいけ!」
だが、ヘカトンケイルの目には圧倒的な数で挑んだにも関わらずに黒い戦士に斬り〇されていくオルグたち。
それは上位種の肉体的に巨躯で強いオルグレスラーも同様だった。
たった一撃、それも棍棒ごと真っ二つにされてしまう。
こんなはずではなかった……。
リーザスを橋頭堡にし、自分の王国をつくるはずだった。
地下迷宮の最上級悪魔も悪魔将も多くの魔素を必要とする。
地上では活動は制限される。
だが、俺はもともとは一介のオルグだった。
何度も何度も死にそうになった。
たくさんの戦士を食らった。
子分を持つ頃に人間どもが戦争を始めた。
天獄だった。
村には兵がおらず、略奪が自由だった。
そのとき、目の前の黒い戦士のようにたったひとりの剣士が現れた。
子分どもを〇され、俺自身もほぼ相打ちのような形になって死ぬ寸前だった。
這いずって逃げた。
戦場では死体がゴロゴロあった。
強い聖騎士も、賢者も食い放題だった。
コイツを〇せば、ギルティ―様が秘宝をくださると仰った。
秘宝を使えば、俺は悪魔将になれる。
そのために古の時代に最弱のオルグから悪魔将にまでなったヘカトンケイルの名を語っているのだからな。
悪魔将になれば、ギルティ―なんぞに頭を下げる必要はない。
奴を〇す!
幸いにもオルグだった俺は、まだフィールドで活動できる。
地上は俺が支配する!
エスタミルも!ローザリアも!グランベルも!滅ぼして、オルグの国を作るんだ!
そう、俺は魔神ネメシス様の使徒なんだ!
否!
俺は悪魔王になり、神になるのだ!
目の前には既に血を失い、力尽きようとしている戦士。
その装備は痛んではいるが、歴戦の強者であることは間違いないだろう。
たったひとりで戦争しちまうような戦士だ。
とりあえず、ギルティ―の命令だ。
コイツを〇して、リーザスを制圧する!
「さぁ、もう一息だ! このゴキブ……っ!?」
ヘカトンケイルが我に返ると、そこにはオルグの死体で血の海となっていた。
「ば……バカな! たったひとりで1000体のオルグどもを斬り〇したのかッ!?」
舌打ちをひとつ。
ヘカトンケイルが斧を取り出す。
目の前の敵が戦士であることは幸いだった。
フィールド上でもこれだけの魔素が漂っていては、魔導師がいたら負けないにしろ、厳しい戦いになっていた。
だが、そのとき――――――
「焼けてサッパリしな! A級炎撃魔法!」
ヘカトンケイルらオルグたちをを巨大な炎の波が襲う。
「お前ら、よくも! あたしの男に手を出したなッ!」
銀髪のエルフィン娘が縦横無尽に戦斧を振り回し、オルグどもを薙ぎ払っていく。
突如、乱入した黒い戦士の仲間と思われる戦士と魔導師にオルグらは離散し始める。
オルグの統率は、騎士や兵士と比べて何十倍も難しい。
奴らに忠誠心などない。
自分たちのボスが欲望を楽しませてくれるか?
エンジョイ&エキサイティングなのだ。




