表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】退魔師JKに拾われた俺、生霊のまま同棲することになりました  作者: 秋夜紙魚


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/30

第26話

「……どうやって、里見を助けるというの?」


 不意に冷静になった銀の口調に、雅兎は慌てて答えた。


「そ、そりゃあ、出来るかぎり過去の状態に戻して、」

「それでは無理だったでしょう? 頭を使いなさい。貴方は、どうして『それが出来る』と悟ったの」

「……勘、とは違うけど」

「そんな証拠も根拠もないものを信じるのは、他に打つ手が無くなって、諦めてしまった馬鹿だけで十分よ」


 お互いに答えは見えていない。

 しかし、銀も雅兎も感じていた。『何かに近づいている』という感覚を。


「貴方に使える力は、対象を過去の状態へと回帰させる事、だったかしら」

「吸血鬼もサツキも、大方そうだろうって。僕自身もそう思ってる」

「だったら、いっその事一年も二年も前のサツキに戻してしまえば? 災厄の成長まで戻せる保証はないけれど、試してはいないのでしょう?」

「いや、それはもう試した。できなかったんだ」

「……出来ない?」


 銀の中で、何かが閃いた。


「……僕自身、何がどうなって、っていうのがわかりきってはいないんだけど……少なくとも、僕はずっと前の状態に戻せればと思って力を使った。だけど、どうもうまくいかないっていうか、その時は能力自体が発動しなくって」


 銀は思考を加速させる。

 雅兎の能力が発動した時の状況を、全て洗い出す。


 夜雀に片足を斬り落とされた夜。

 気絶した直後に能力が発動。以後、後遺症は無い。


「本当に、無かったの?」


 雅兎の怪訝な顔を無視し、銀は思考の森を突き進む。


 銀自身が雅兎の頬を突風で斬り裂いた時。

 あの時の雅兎の言葉。


『意味がわからないのは僕だけですかっ。そ、それより早く手当を……て、あ、……れ? 何の、手当だ?』


 落ち着きを取り戻すに従って、『雅兎自身、自分の身に何が起きたのか分からなくなっていた』

 そして今しがたの言葉。「戻そうと思ったけれど戻せなかった」。


 違和感の正体。


「――貴方は、能力を使う際に、どういう感覚に襲われるの?」

「え? どういうって」

「何かが見えたり聞こえたり、あるいは感じたりだとか」


 雅兎は少し考え込み、答えた。


「旅、みたいな感じですかね」

「旅?」

「はい。……もっと別の、夢みたいな世界を見て、聞いて……そしたら、いつの間にか力が使えているというか」


 カランッ。

 銀は持っていた漆黒の刀を放り投げた。

 重い音を立てて、刀は雅兎の足元を転がる。


「え?」

「拾いなさい」


 雅兎が刀を拾い上げた瞬間。

 銀は正面から雅兎に斬りかかった。


 ガキンッ!

 慌てて刀で受け止める雅兎。鍔迫り合いの火花が散る。


「質問をするわ。……貴方の力の正体は、何?」

「え?」


 ザシュッ!

 雅兎の背中を、鋭利な刃物が切り裂いた。

 気づけば銀は正面に居ない。力を押し合っていたはずの相手が消え、バランスを崩した雅兎の背後に回り込んでいたのだ。


 雅兎はよろめきながら銀から離れ、力を使った。

 背中の傷は消え去り、痛みも消失する。

 残ったのは、『今自分はどうやって攻撃を避けたんだっけ』という、曖昧な記憶だけ。


「貴方の力の正体は?」


 再度、問いかけられる。

 雅兎は「過去への回帰」と答えた。


「おそらく、不正解だわ」


 ドスッ!  雅兎の右肩から左の脇腹にかけて、純白の日本刀が走った。

 声にならない声をあげ、雅兎は地面に倒れる。


「……霊体は時間の概念に左右されない。でも、だからこそ、純粋なタイムスリップを使えるだなんて、あり得るわけがなかったのよ。だって、貴方は完全な霊体ではなかった」

「どういう、こと」


 能力が発動する。

 雅兎の身体を青白い光が包む。

 その瞬間、銀が叫んだ。


「集中しなさい! 貴方の力が発動する時、何を見て、何を聞くのか!」


 雅兎は薄れゆく意識の中、銀の声に耳を澄ませた。

 何を見て、何を聞くのか。  その答えを掴むべく、感覚を研ぎ澄ませる。


 ――見えた。


 覚醒する意識。

 立ち上がる雅兎。傷は癒えていた。


「さあ――答えは?」


 銀の問いに、雅兎は確信を持って答えた。


「……違う世界の僕を、連れて来た」


 それが、答えだ。

 雅兎には見えたのだ。


『間一髪で後退し、銀の斬撃を避ける。そして、無傷のまま同じ時間軸に至った自分の姿』が。


 銀は満足げに頷くと、再び姿を消した。

 今度は右側からの斬撃。

 雅兎の肩に大きな傷が刻まれる。


 しかし、雅兎は痛みに耐えつつ、再び『能力を発動させた』。


 仕組みや原理が分かった瞬間、世界は一変する。

 今の今まで見えてこなかった真理が、クリアに見えてくる。


 柴石雅兎が使える力とは、対象を過去の状態に戻す事などではなかった。

 彼は時間を操作することなんて出来ない。

 彼が干渉出来るのは、あくまで『現在』の時間軸においてのみ。


 無数の並行世界。

 その中から、『望んだ結果』に至った自分を上書きする力。


 雅兎は刀を中段に構え、大きく深呼吸をした。

 目を見開き、すり足で踏み込む。

 刀を振り上げ、誰もいない虚空へ向かって、縦に大きく振り下ろした。


 三歩は離れた位置にいたはずの銀。  しかし――。


「っ」


 迫りくる刃を、銀はすんでの所で受け止めた。

 気づけば銀は刀が振り下ろされた場所に立っており、雅兎の一撃を防いでいた。


 雅兎は、銀が『そこに移動してくる未来』を選択したのだ。


**************************************


応援コメント、レビューが励みになりますので、お時間があれば是非。


☆評価もお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ