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臨床心理士記録 少年の告白、退院直前
――つまり。 夢ではない、実際に体験した『過去』で、雅兎君はトラックの前には飛び出さなかった。 そういうことかな?
S)……はい。でも、たぶん、夢を見ていたんだと思います。
――それはどうして?
S)だって、現に僕はトラックの前に飛び出したと、運転手さんが言っているんですよね?
S)なら、白昼夢でも見ていたんだって、思うことにしました。いつまでもこんな調子じゃあ、千代さんも心配しますし。
――……なら。 もう一度だけ、キミのその『白昼夢』を聞かせてはくれないか?
S)どうして、ですか?
――キミは二つの異なった記憶に苛まれている。 だから、キミが切り捨てた方の記憶を、僕が貰い受けよう。
――こうやってカルテに記載することで、別の世界の事だったんだって、割り切るんだ。 さあ、話してごらんなさい。
S)……僕は。
S)トラックがあの子に迫っているのを見て、飛び出そうとしたんです。
S)でも、躓いてしまって……。
S)あの子がトラックに撥ねられて、ぐちゃぐちゃになる様を……見ていることしか、できなかった……っ。




