15/30
臨床心理士記録 少年の告白、入院直後
――それじゃあ、聞かせてもらえるかな。
S)……夢を見るんです。僕が体験した過去とは違う、別の過去を、夢として。
――なるほど。そして、周りの皆はその夢こそが、正しい過去であると語る、か。
S)はい。おかしい、ですよね。
――そんなことはないさ。記憶が混濁してしまうのは、事故直後はよくある事。ただ、状況的に見れば、キミが語った夢の方が現実の過去である事は明白だ。
――だからもう一度、教えてもらってもよいかな? キミの見た夢とやらを。
S)……はい。あの子に向かって突っ込んで来たトラックの前に飛び出して、手を広げました。
S)そのまま撥ねられて死んでしまう、と思っていたんですけれど……トラックがハンドルを切って、どうにか僕らは轢かれないで済みました。
――うん、そうだね。その後は?
S)気絶してしまって、覚えていません。
――なるほど。
S)……でも、僕が実際に体験したものはっ。
――うんうん、また、話を聞きに来るから。きっとその頃には、記憶の方も整理できているさ。




