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18.週末のイベント 前




 遠回しの制しが効いたのか、それ以降皇太子殿下は姿を見せなくなった。おかげでハリス会長の顔色がみるみるよくなっていた。私も仕事に集中することができ、いいペースで刺繍をこなした状態で週末に入ることができた。


 そして週末。今日はジネットと一緒に申し込んだイベントの日である。


「今回は広い庭が会場なんだって」

「ということはガーデンパーティーでしょうか」

「みたいなものだと思う。立食形態で、参加者同士自由に話すことができるもの、みたいな」


 会場に向かう道中、話題はイベントの詳細だった。


「こういう形式のイベントに参加したことがあるんだけど、時間があっという間なんだよね。気になる人がいたらすぐ話しかけに行った方がいいよ」

「わかりました。積極的に行動せよ、ですね」

「うんうん。初めての参加者だと、場の動きが流れが早いのに驚いて、気を取られている間に終わっちゃったり、萎縮して行動できずに時間が過ぎたりするから、それは本当に大事」


 イベントの心得をジネットから教わると、ぐっと胸の前で手に力をいれて気を引き締めた。


「……でも心配だな。もしかしたらルネ、楽しめないかもしれない」

「?」

「だって今日のルネ、綺麗すぎるんだもん。絶対色んな人が寄ってくるよ」

「ありがとうございます。ジネットもとても素敵ですよ」

「ルネに言ってもらえると嬉しい。ありがとう」


 「変な人は無視だよ!」と念押されると、わかりましたと深く頷いた。


 寮から会場の距離はそこまで遠くなく、話をしているとあっという間に到着した。会場の入り口には案内人らしき人がいて、手続きをしていた。私とジネットも列の最後尾に並んだ。


 手続きが終わり会場入りした時点で、イベント開始とのことだった。


「よしっ。頑張ろうね、ルネ!」

「はい。ジネットもお気を付けて」


 私の心配ばかりするジネットだが、彼女は凄く可愛い。人が寄ってくるのはジネットも同様だった。お互いの健闘を祈ったところで、ジネットは早速気になる人を見つけて近付いていった。


(さすが経験者。動きが早いわ)


 自分もこうしてはいられないと、辺りを見渡した。


(……初心者は戸惑うというのは本当ね。誰に話しかけていいかわからないわ)


 ジネットは少しでも気になったなら行動すべしと教えてくれたが、視界に映るのは他の女性と話している男性だった。

 割って入る勇気はないなと思っていれば、視界が遮られた。


「失礼します。よければお話しませんか」

「え、えぇ。お願いします」


 突然の出現に驚きながらも、良い機会だと思いながら会話を交わし始めた。自己紹介を終えると、男性が話を始めた。


「メロリウスに店があるんですよ。宝石店を営んでいましてね」

「店主なんですね」

「えぇ。個人店でしてね。お客様には貴族の方が多いので、パーティーに参加することもあるんですよ」

「……とても素敵ですね」

「それほどでも。この前は、ある公爵主催ののパーティーに参加を──」


 それからというもの、長々と男性の自慢話が始まった。自分がいかに貴族と繋がりがあるか、それがどれほどまでに凄いことかを延々と語っていた。


「ということなんですよ。ルネさんはどこの家のご令嬢ですか?」

「いえ、貴族ではありません。平民です。ハリス商会で働いております」


 それを聞いた途端、男性から笑顔が消えた。


「そうなんですね。本日はお互い楽しみましょう」

「はい」


 それを最後に、男性はくるりと背を向けて去っていった。口ぶりからして、貴族かそれなりの地位がある平凡ではないお相手を探していたのだろう。


(お喋りするだけしていなくなったわ……)


 あまりにも雑な対応に呆気にとられていると、再び声をかけられた。


「お一人ですか?」

「は、はい」


  こうして、色々な男性と会話をすることになるのだった。


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