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第11話 ノバリスク逆召喚、そして再会

 11.ノバリスク逆召喚、そして再会




「後のことは任せたわ。お願いします」


「確かに承知いたしました。どうかご無事で」


 そんなやり取りの後、魔法陣の上に立った僕は、姫三人と共にノバリスクという世界へ旅立つ。


「勇者」とか「選ばれた人間」なんていうのは、すでに()りている。

 でも、もし僕が本当に力を持っているのなら、この世界のためになりたいと思った。

 幼いトリエッティまで頑張ると言ってるのに、いつまでも僕がウジウジしてるなんて、恥ずかしい。自分に出来るだけのことは、したい。


 逆召喚は、神殿魔術師たちが大勢集まって、かなり長いこと魔法を唱える。

 だが、詠唱が終われば、もうそこは新しい世界だ。


 ノバリスクは、今までいた世界と、見た目はほとんど変わりはないよう。

 街の様子も、似たようなものである。

 となれば、向かう先は情報が集まってくる冒険者ギルド。


 前回は貴族たちばかりで、自分からなにも動こうとしない人たちだった。

 僕も初めてのことだったし、どうしていいか分からなかった。街の人たちから色々と話を聞いてみてようやく、とにかくギルドへ行くべきということがわかったのだ。それまで時間がかかった。

 だが今回はもう二度目。迷わずに行ける。


 初心者であるGランクからの登録ということで、一からの振り出し。


「ここに名前と、なりたい職業を書いてね! 依頼内容は壁に貼り付けてありますので、やれそうなものがあれば、カウンターまでお持ちください」


 ギルドの仕組みも、どうやら同じもののようだ。怪しまれないように、なるほどーなどと相づちを打っとこう。


 資金稼ぎのために、少しずつクエストはこなすが、ここに来た目的はランクを上げるためではない。固有スキルが手に入りそうな情報を聞き出すこと。そして、元の世界に戻るための最終的なボスを見つけること。

 前回も僕はそう考えて、毎日のようにギルドに顔を出していた。


 僕のは予想外だったけど、他の人のは、ある程度、アタリをつけられた。この世界の固有スキルには、どんなものがあるかということを、神話のエピソードや人々の噂から聞くことができた。あとは、それに見合いそうな敵を探し出す。

 一年という短期間でクリアできたのは、この考えがバッチリ当たったことが大きいと思う。


「まったく、ここに来るまで、どんだけ日数かかってるのよ! それに、わたくしも来なきゃいけなかったのかしら、こんな汚いところに。もうっ!」


 なにやら聞き覚えのある声だ。

 あっ、隠れよう!


「すいません。色んな人に聞いてみたのですが、まずは冒険者登録をするといいと言われまして。すいません、すいません」


 しきりに頭を下げている大男は知らないが、その他の三人は間違いない。

 僕が前にいた勇者パーティのメンバーだ。


 そういえば、前の時も僕はみんなを連れて行ったな。その時は文句を言われなかったけど、そうか、本心では、そんなことを思ってたのか。


「パオロ。貴族の僕が、なぜ下等な冒険者登録をしなければならないのかな?」


 その場にいた面々が、一斉に声の主を振り返る。

 声の主はドレッドだ。そういえば僕も同じことを言われたな。

 あの時は、仕方なく僕だけ登録した。みんなが登録してくれれば、報酬ももっと貰えたかもしれないのに……。


 やはり同じことになったようだ。パオロと呼ばれた男だけが登録するらしい。


 ただし、前回と違うところが、ふたつある。


 ひとつはもちろん、パオロと呼ばれた大男。

 盾役が欲しいと言ってたので、恐らくそうなんだろうと思う。ブレードアックスという大きな斧を持っているところをみても、かなり力が強いはずだ。


 持っている盾は僕には見たことのないもの。マレッタが詳しいというので聞いてみると、エレメンタルシールドと呼ばれるものらしい。物理だけでなく魔法にも強く、かなり強力なものだという。


 もう一つは彼らが身につけている装備。


 ドレッドの盾は、変わらず鉄の盾のまま。だが、ダークネスソードという黒く光る細長い剣に変わっている。

 クレシアは水色の小さな宝石が先端に散りばめられているバムケード。

 メディバはラディカルメイスという、先端に白い玉がついている短い棍棒。


 どれも神器レベルほどではないが、以前に比べてパワーアップしている。


 防具も大きく変わっていた。

 なんとなく、全体的に金色で、ピカピカな感じ。

 高そうだし、もちろん防御力もかなり高いだろう。入ってきた瞬間から、それだけで目立っていた。


 パオロだけは銀の縁取りがついた、真っ白な重鎧(ヘヴィ・アーマー)。一般的な神殿騎士の姿だそうだ。金ピカの中に一人だけが浮いている。


「ねぇパオロ。なんであなた、わたくしたちと一緒に座ってるわけ?」


「は?」


「まったく、気が利かないわね。ずっと食べてないんでお腹空いてるのよっ。全員の食事くらい持ってきたらどうなの?」


 きっとパオロはこの後、クエストを受け、一人で薬草を取りに行くことになるだろう。そして、そのお金でみんなに食事を出すことになる。

 彼らの会話を聞いているだけで、気分が悪くなりそうだ。

 気づかれないように、僕は姫たちと、そーっとギルドを出た。


 ここに来る前、王家に伝わるという特殊なポーチに、あらかじめ僕は薬草を入れて来た。ポーチには、大きさは関係なくなんでも入るらしい。

 薬草なんてきっと、こんな凄いものには入れたことがないはずだ。姫たちは「なんでなの」と不思議そうに聞いてきたが、もしかしたら役に立つかもと思ったのだ。


「こ、こんなにたくさんですか?」


 受付嬢が驚いていた。

 薬草はこの世界でも同じで、登録の際に納めたら、ランクはFに上がり、お金ももらえた。

 どこかで食事でもしながら、これからのことを話そうと思う。


 僕が負傷してしまったせいで、出発は彼らより遅れてしまっていた。だが、彼らの様子からは、差はつけられていないようだ。

 先に、固有スキルをゲットすることが、僕たちの目標である。


「もし僕たちが先にゲットして、最後の敵を倒したら、彼らってどうなるのかな?」


「多分、ずっとこの世界に居続けることになるんじゃないかしら?」


 もしそうなら、元の世界も脅威が減るし、魔王にだって一歩近づく。

 とにかく一刻も早く、手に入れなければならない。


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