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第1話 勇者パーティ帰還、そして追放

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ノベルピアでリニューアル連載中です。

お読みいただけましたらと。

https://novelpia.jp/novel/129

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 1.勇者パーティー帰還、そして追放




「ぶわっはっはっ!」


 いきなり笑われた……。


「さすがは平民というわけか。どこまでも楽しませてくれるヤツだな!」


 もちろん、楽しいと言われて喜んでいる場合ではない。

 僕は国王や貴族たち、そして苦楽をともにしたはずの三人の()パーティ・メンバーによって、王の間に引きずり出されていた。


 僕の名前はアレクという。

 なにか特別な力を持っていたというわけでもなければ、決して勇敢というわけでもない。

 ただ国の命令により、僕は無理やり参加させられることになっただけだ。


「笑わせてくれるにも、ほどがあるぞ、ん? 平民め。んんん? どわっはっは」


 先ほどからから延々と僕のことをあざ笑っているのは、貴族出身のドレッド。

 パーティのリーダー。……元か。

 転移先で【流星技剣(スターゲイザー)】というカッコいい固有スキルを身につけた剣士である。


 妙に口がデカい。そのデカい口で、ツバを飛び散らしながら、「平民、平民」と僕のことを(ののし)っている。


「お前はどれだけ国に迷惑を与えたか、分かっているのか?」


 僕の住むメリデン王国の国王、ワグナー。

 旅立つときは、でっぷりしたオナカを揺らしながら「お前は国の英雄だ」などと笑顔で送り出してくれたのに……。


「虫けら以下の分際が、わたくしのそばにいたかと思うだけで虫唾(むしず)が走るわ!」


 黒魔導士のクレシア。

 長い髪を優雅に揺らしながら、優雅に強力な黒魔法を撃つ。

 持っている武器は、炎の威力が増す、真っ赤な両手棍エンファイトス。

 だが、実際には、雷系の【雷磁結界(サンダーガルム)】を身につけた。


 【雷磁結界(サンダーガルム)】をゲットした時に突然、「虫けらと一緒だとこうなるのよ」と怒ったように叫んでいた。炎系の固有スキルが欲しかったんだろうな。

 その時には、よくわからなかったが、僕のことを言っていたんだと気づく。


「やはり、無用な者ということでよろしかったのではないかな」


 白魔導士のメディバ。

 片手棍の固有スキル、【残波絹棍(シルキーバスター)】を身につけて戻った。

 パーティでは最年長で、普段はめったに喋らないが、話し始めると難しい言葉を使うので、なにを言っているのかよくわからないことが多かった。


 だが、今回は言っている意味が、すぐにわかる。

 メディバの言う通り「無用」という言葉が僕には似合っていた。


 転移先で僕が身につけたのは【空気(アトモ)】という固有スキル。


 三人のような戦闘で使える技ではないのはもちろんだが、いったいなにに役立つのかもわからなかった。

 唱えると、気配が消せるようではある。


 ところが、なにかに触れたり、喋ったりすると、その瞬間に元に戻ってしまう。


 一度、モンスターが大量にいる場所にスイッチがあり、空気(アトモ)で気配を消して押してみたのだが、押した途端に襲われて、ひどい目にあったことがある。


「パーティ構成としても役立たずだしねぇ。使えない虫けらめ!」


 まさにクレシアの言う通り。

 ドレッドは剣士。一応、盾も持っているが、飾りみたいなもの。

 他のメンバーは強力な魔導士。

 つまり盾役がいないのだ。


――僕が盾役として、なにか有効な固有スキルをゲット出来ていれば……。


 間違いなく、もっと楽に戦えたことは言うまでもないだろう。


 それでも、帰って来るまでは、みんな、僕のことをここまでヒドくは言わなかった。

 もちろん、唯一の平民なんで、使いっ走りなどはさせられたけども普通に話しかけてくれたし「頑張ろう」って応援もしてくれた。


 僕だってドレッドの動きを見ながら、見よう見まねで戦い、モンスターを倒したこともある。

「よくやったね」ってみんなから褒められたし、必死になって強くなろうともしたんだ。


 たしかにドレッドからは、たまにさげすむようなことも言われた。

 でも、「ドレッド貴族として生まれてきたんで、なかなかクセが抜けないのよ、ごめんなさいね」なんてクレシアから謝られたこともある。


 僕の固有スキルが戦闘に役に立たないのはわかっている。

 その分、食事の用意や、みんなの武器や防具の整備なんかも必死にやった。

 みんなが寝ている間も、寝ないで、明日行くところの地形なんかを、あらかじめ頭に叩き込んだりもした。


 実際に順調に進んだし、ありがとうとも言ってくれていたので、感謝されているものだと思い込んでいたんだ。



『全員が固有スキルを得た後、最後の敵を倒すことで、転移先から戻れる』



 僕のことを応援してくれたのは、この理由だけだったのだ。

 帰るためには「僕」がいなければならない。

 そばに居ることさえ嫌だと思っていながらも、帰るためには仕方ないので一緒にいたということ。


 しかも、今日になって鑑定したら、僕の固有スキル【空気(アトモ)】は、跡形もなく消えてしまっている。


 もはや彼らにとって、僕は一切、必要のないものになっていた。


「虫けらと今まで一緒にいたなんて思うと、吐き気がするわ!」


 いや、必要ないというだけじゃないかも。

 彼らが今まで我慢してきたことを考えれば、この世に生きていることさえ許しがたい存在なのだろう。


 罵声を浴びせられている間、僕は頭を一切上げられなかった。

 くやしくて涙が出そうになるが、仕方ないことかもしれないとも思う。

 平民出身の僕が、こんな大役を任されたこと自体、なにかの間違いだったんだと。



 こうして僕は、勇者パーティから、その日のうちに追放されてしまった。


【恐れ入りますが、下記をどうかよろしくお願いいたします】


「面白かった!」

もしそう思っていただけましたら、

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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ。

もちろん、正直な気持ちで付けていただければと。


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