第1話 勇者パーティ帰還、そして追放
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ノベルピアでリニューアル連載中です。
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1.勇者パーティー帰還、そして追放
「ぶわっはっはっ!」
いきなり笑われた……。
「さすがは平民というわけか。どこまでも楽しませてくれるヤツだな!」
もちろん、楽しいと言われて喜んでいる場合ではない。
僕は国王や貴族たち、そして苦楽をともにしたはずの三人の元パーティ・メンバーによって、王の間に引きずり出されていた。
僕の名前はアレクという。
なにか特別な力を持っていたというわけでもなければ、決して勇敢というわけでもない。
ただ国の命令により、僕は無理やり参加させられることになっただけだ。
「笑わせてくれるにも、ほどがあるぞ、ん? 平民め。んんん? どわっはっは」
先ほどからから延々と僕のことをあざ笑っているのは、貴族出身のドレッド。
パーティのリーダー。……元か。
転移先で【流星技剣】というカッコいい固有スキルを身につけた剣士である。
妙に口がデカい。そのデカい口で、ツバを飛び散らしながら、「平民、平民」と僕のことを罵っている。
「お前はどれだけ国に迷惑を与えたか、分かっているのか?」
僕の住むメリデン王国の国王、ワグナー。
旅立つときは、でっぷりしたオナカを揺らしながら「お前は国の英雄だ」などと笑顔で送り出してくれたのに……。
「虫けら以下の分際が、わたくしのそばにいたかと思うだけで虫唾が走るわ!」
黒魔導士のクレシア。
長い髪を優雅に揺らしながら、優雅に強力な黒魔法を撃つ。
持っている武器は、炎の威力が増す、真っ赤な両手棍エンファイトス。
だが、実際には、雷系の【雷磁結界】を身につけた。
【雷磁結界】をゲットした時に突然、「虫けらと一緒だとこうなるのよ」と怒ったように叫んでいた。炎系の固有スキルが欲しかったんだろうな。
その時には、よくわからなかったが、僕のことを言っていたんだと気づく。
「やはり、無用な者ということでよろしかったのではないかな」
白魔導士のメディバ。
片手棍の固有スキル、【残波絹棍】を身につけて戻った。
パーティでは最年長で、普段はめったに喋らないが、話し始めると難しい言葉を使うので、なにを言っているのかよくわからないことが多かった。
だが、今回は言っている意味が、すぐにわかる。
メディバの言う通り「無用」という言葉が僕には似合っていた。
転移先で僕が身につけたのは【空気】という固有スキル。
三人のような戦闘で使える技ではないのはもちろんだが、いったいなにに役立つのかもわからなかった。
唱えると、気配が消せるようではある。
ところが、なにかに触れたり、喋ったりすると、その瞬間に元に戻ってしまう。
一度、モンスターが大量にいる場所にスイッチがあり、空気で気配を消して押してみたのだが、押した途端に襲われて、ひどい目にあったことがある。
「パーティ構成としても役立たずだしねぇ。使えない虫けらめ!」
まさにクレシアの言う通り。
ドレッドは剣士。一応、盾も持っているが、飾りみたいなもの。
他のメンバーは強力な魔導士。
つまり盾役がいないのだ。
――僕が盾役として、なにか有効な固有スキルをゲット出来ていれば……。
間違いなく、もっと楽に戦えたことは言うまでもないだろう。
それでも、帰って来るまでは、みんな、僕のことをここまでヒドくは言わなかった。
もちろん、唯一の平民なんで、使いっ走りなどはさせられたけども普通に話しかけてくれたし「頑張ろう」って応援もしてくれた。
僕だってドレッドの動きを見ながら、見よう見まねで戦い、モンスターを倒したこともある。
「よくやったね」ってみんなから褒められたし、必死になって強くなろうともしたんだ。
たしかにドレッドからは、たまにさげすむようなことも言われた。
でも、「ドレッド貴族として生まれてきたんで、なかなかクセが抜けないのよ、ごめんなさいね」なんてクレシアから謝られたこともある。
僕の固有スキルが戦闘に役に立たないのはわかっている。
その分、食事の用意や、みんなの武器や防具の整備なんかも必死にやった。
みんなが寝ている間も、寝ないで、明日行くところの地形なんかを、あらかじめ頭に叩き込んだりもした。
実際に順調に進んだし、ありがとうとも言ってくれていたので、感謝されているものだと思い込んでいたんだ。
『全員が固有スキルを得た後、最後の敵を倒すことで、転移先から戻れる』
僕のことを応援してくれたのは、この理由だけだったのだ。
帰るためには「僕」がいなければならない。
そばに居ることさえ嫌だと思っていながらも、帰るためには仕方ないので一緒にいたということ。
しかも、今日になって鑑定したら、僕の固有スキル【空気】は、跡形もなく消えてしまっている。
もはや彼らにとって、僕は一切、必要のないものになっていた。
「虫けらと今まで一緒にいたなんて思うと、吐き気がするわ!」
いや、必要ないというだけじゃないかも。
彼らが今まで我慢してきたことを考えれば、この世に生きていることさえ許しがたい存在なのだろう。
罵声を浴びせられている間、僕は頭を一切上げられなかった。
くやしくて涙が出そうになるが、仕方ないことかもしれないとも思う。
平民出身の僕が、こんな大役を任されたこと自体、なにかの間違いだったんだと。
こうして僕は、勇者パーティから、その日のうちに追放されてしまった。
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