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課題はしっかりとやってます


 朝練も終わり、一人で教室に向かう。

教室に入ると、時間が早かったのか一人しかいない。

クラス委員長はいつもこんな時間に来ているのだろうか。


 しかし、同じクラスとはいえ女子に話しかけるのは難しい。

ここはいつもと同じようにスルーしていくことにしよう。


 だがしかし、委員長の前を通りかかったとき声をかけられた。


「お、おはようっ! 一ノ瀬君も朝早いんだね」


 ど、どう答えたらいいんだ?


「お、おおぅ。朝練あるから……」

「そ、そうなんだ。あ、あのさ今日の課題やってきた?」


 課題? あぁ、数学の課題か。

いつもよりも少しだけ量が多かったな。


「やってきたよ」

「そ、そうなんだ。あ、あのさ良かったら答え合わせさせてもらえないかな?」


 答え合わせ? 委員長はクラスでも成績上位。

俺もそれなりだけど、俺の答えって参考になるのか?


「いいけど、参考になるのか?」

「うん、参考になるよ」


 俺はバッグからノートを取り出し、委員長に渡す。


「ありがと。すぐに返すね」


 そう話すと委員長は席に戻り、自分のノートを広げ始めた。

俺のノートが、委員長に……。


「何ボケっとたってるのよ、早く進んでよ」

「おおぅ!」


 いきなり声をかけられた。


「由美か……。いきなり声をかけるな、びっくりしたじゃないか」

かえでとなに話してたの?」

大森おおもりさんと? あぁ、昨日の課題を見せてもらえないかって」

「課題?」

「数学の課題。由美もやってきただろ?」

「も、もちろん」


 由美は少しだけ額に汗をかき、小走りで大森さんの方に走っていく。


「楓! ノート見せて!」


 ……やっていないのね。


「あ、ごめん。私も今ノート使ってて……」

「あうー。じゃぁ、晴斗のノート写させて!」


 大森さんが俺に視線を送ってくる。

俺は無言でうなづく。


「はい、隣に座って。一ノ瀬君もいいって言ってくれてるし」

「あったりまえじゃない! 晴斗はいつでも私に優しいんだからっ!」


 このやさしさは、このままでいいのか。

それとももっと厳しい方がいいのか。

きっと、由美の将来の為には厳しくした方がいいんだろうな。

俺は二人に近寄って、声をかける。


「えっと、由美さんや」

「なに?」

「ノート写すの今日が最後な。明日からは見せない。自分でやってくれ」

「な、な、何でよ!」

「自分を磨くんだろ。これも練習練習」


 少し歯を食いしばりながら由美はしぶしぶ納得する。


「一ノ瀬君、由美と何かあったの?」


 どきーん!

な、な、なにもないんだからねっ!


「何にもないよ。ほら、こいつっていっつも忘れるし、ダメダメだろ? 少し厳しく──」


 突然わき腹に痛みが走る。


「う、うぐぅぅ……」

「晴斗、言い過ぎ。そこまでダメダメじゃない」

「この、暴力女……」

「あら、まだ声が出るのね」

「ノート、回収するぞ」


 由美は席を立ち、俺のわき腹をさすってくる。


「ごめん。痛かった? 本当にごめん……」


 突然しおらしくなる。

な、なんだこの変わり身の早さはっ!


「も、もういぃ。大丈夫だ、痛みはない」

「さっすが男の子! 回復も早いね!」

「由美は一ノ瀬君と仲がいいね」

「そうよ、私たち仲いいの!」


 そう、俺たちはいつもこんな感じだ。

由美とは気軽に普通に話ができるのに、ほかの女子とは……。


 絶対に、絶対に俺は克服する!

練習して、ナイスガイになって、もてキャラにジョブチェンジだ!


「……晴斗、ここ間違ってる。あ、あとここも」

「へ?」

「ほら、ここ」


 由美の顔の隣から自分のノートをのぞき込む。

あ、石鹸の香り……。


「うーん、単純な計算ミスしてる。サンキュ、後で直しておくよ」

「まったく、晴斗は私が付いていないとやっぱり駄目なんだからっ」


 いやいや、お前は課題そのものしてないだろ?


 朝から騒がしい教室。

その入り口で雄平がずっとこっちを見ていたことには、誰も気が付かなかった……。



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