二人で登校しました
朝食も適当に、由美と家を出て学校に向かう。
いつもと同じ朝、同じように学校へ向かうがなんとなく違和感を感じる。
「……なぁ、なんかお前近くないか?」
朝は一緒に学校行くことが多いが、今日はいつもよりも距離が近い。
隣を歩く由美を見下ろすと、由美は俺の頬をつねってきた。
「いふぁい」
「痛い? そうね、痛くしているんだから当たり前ね。よかったわね、痛覚がしっかりとしていて」
「やめろって。なんだ、お前今日は朝から様子がおかしいぞ?」
「そう? 私なりに頑張っているんですけどね、晴君」
ドキっ。
な、なんなんだこの気持ちは。
今まで感じたことのないこの違和感。
「それと! 私の事をお前って呼ぶの禁止にしたわよね?」
あー、そうだった。ついつい慣れてしまっている呼び方で呼んでしまうわ。
「わかったよ。で、ゆ、ゆ、由美はなんか俺に近くないか?」
「そう? いつもとおんなじだと思うけど?」
「あ、それに昨日ライム送ったのに返事よこさなかったじゃないか!」
「ごめんごめん、先に寝ちゃって……。ほら、早くしないと朝練に遅れるわよっ」
由美は俺の腕をつかみ引っ張っていく。
こいつ、こんな奴だったけ?
※ ※ ※
晴斗の腕をつかみ、恥ずかしさを隠しながら走る。
昨日は晴斗からのライムがなぜかうれしくて、どう返事をしていいかわからず、結局返事ができなかった。
なんでだろ? いつもだったら返事ができたはずなのに。
きっと、これが私に与えられた試練なのね。
この気持ちを打破できれば、きっと私も理想の彼氏に出会うことができる、と思う。
朝も少しだけ髪をいじってみた。
いつもとは違うことに晴斗はきっと気が付くだろう。
そして、朝起こしに行って私にこう言うはず。
「今朝はいつもと違うね。似合っているよ」
なんてねーーー!
あいつも少しは私の事を意識するはず。
これはお互いに必要な試練、一緒に乗り越えていくわよ!
朝食もすっかりお世話になってしまったし、今度何かお礼をしないと……。
そうだ、今度夕飯でも作ってあげようかしら。
晴斗の家は共働きで、両親の帰りは結構遅い。
私も彼女として料理の腕を上げていかなければ。
晴斗には実験台になってもらおう。
「晴君、今日は学校何時に終わる? 一緒に帰ろうよ」
「終わる時間はいつもと同じだけど、何で一緒に帰らないといけないんだよ。おま、由美だって部活あるんだろ?」
「あるわよ。でもそこは時間を合わせて帰ろう。うん、そうしましょう」
「はいはい、わかったよ。先に終わった方が正門で待機な」
「かしこまりっ」
晴斗の腕を引きながら今夜のおかずを考える。
確か、晴斗は肉じゃがが好きだったはず。
私の料理レパートリーに肉じゃがもある。問題ない。
「帰り、ちょっと付き合いなさいよ」
「は? まっすぐ帰らないのか?」
「ちょっと寄り道よ。これも練習練習」
「はいはい、わかりましたよ」
きっと、晴斗はおいしいって言ってくれるはず。
おいしい料理は男の胃袋をつかむって聞いたことがある。
私の料理で骨抜きにしてあげるわっ! ふふふっ……。
※ ※ ※
俺の腕を引きながら、にやにやしている由美。
絶対に変なことを考えている。昔から変なことを考えるときの顔だ。
絶対に今夜何かある。用心しなければ……。
が、何をどう用心すればいいのか。
推測しろ、今までの経験と勘。今日の会話から推測するのだ!
小難しい顔をしながら由美に手を引かれていく晴斗。
そして、今夜は勝負だと内心燃えている由美。
この状態で学校についてから、何も起きないわけがない。
そう、ゆっくりと時計の針は進んでいくのだった……。
こんにちは、紅狐です。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
毎度のことながらノープロット、書き溜めなしでのスタートです。
その場のノリで進んでおります。
不定期ですが、適度に更新していく予定です。
晴斗と由美のドタバタ日常を、これからも見守っていただければと思います。
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