1.私は芽衣
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私は今日、学校をサボる。
学校に行くフリはしたが、学校へは行かないのだ。
さて、これから何処へ行こうか……。
サボる理由は特に無いのだが、強いて言えば行くのが面倒だからである。
朝日が当たる中、私は背伸びをしながら歩く。
すると……前方には、同じクラスの萌永がいた。
ボサボサの髪で、丸眼鏡を付けた女の子である。
「私、あの子なんだか苦手なんだよなぁ……」
登校中の萌永を見付けた私は、咄嗟に身を隠した。
**********
蝉が喧しく鳴いている夏の朝。日差しがしつこく窓を通して部屋に入ってくる。
「めいちゃん〜朝だよ起きなさーい!」
「うぅ……もうちょっとだけ……」
私、佐藤芽衣は眠気に負け、朝になっても体を起こせずに布団に横になっていた。
階段をダッダッダッ、と登る音が聞こえる。
――ガタッ。
部屋のドアが勢いよく開いた。
「こらめいちゃん、学校遅刻するでしょうが〜」
「別にいいの、遅刻しても……」
私はよく、不良と言われる。遅刻が多かったり、サボりが多かったり、髪の色を染めていたり、ピアスの穴を開けていたり……
私がしている不良要素と言えば、そのくらいだろう。
私自身、あまり悪い事はしてないとは思ってる。
でも、世間一般的には不純な行為らしい。
『なんで高校生が髪染めてるの!』
『学生は学校に行くのが仕事なんだからサボるな!』
このように、子供が何かをすると必要以上に騒ぐ大人が居るのだ。
ただ、その人数が少なくないと言うのは、やはり世間の考えも大体そうなのだろう。
だから、私は不良と呼ばれても否定はしないし、自分自身、不良なのだろうと思っている。
「だーめ! 昨日だってサボったでしょ〜? めいちゃんの友達に聞いたんだからね、もうっ!」
「げっ……知っていたのママ……」
ママは珍しくプンスカと怒っていた。片手にしゃもじを持って。
ただ、ママの怒り方は全然怖くないのだ。そのせいあってか、私はママに怒られるのはあまり苦ではない。
ただ、ママに悲しい思いをさせるのはあまり好きではない。
ママの事が、大好きだからだ。
「仕方ないわねぇ……そんなに眠たいなら、もう少し寝てから学校行きなさい! 遅刻しても良いから、サボりはダメよ、良い!?」
「はぁ〜い……」
このように、ママは私に対してとても甘い。それが原因で私は不良になったのだろうか?
いや、そんな事は無い。ママのせいにはしたくない。
「ママはもう仕事に行くから、家出る時はちゃんと鍵閉めて行くんだよ〜!」
「はぁ〜い……」
慌ただしく動くママに対し、私は気の抜けるような声で返事をする。
……今日はサボらないでちゃんと学校に行こう。だけど、眠いからもう少しだけ……。
そう思い、私は再び目を閉じた。
「……あれっ!? もう十時!?」
私が目を覚ました時には、時計の針は十時を回っていた。
学校では、二時間目が始まる頃だ。
夏の日中。日差しが強く私の部屋の中に入り、熱が籠っていた。
窓も開けずに寝ていたため、部屋はまるでサウナのようになっていて、私は起きた時には汗だくとなっていた。
「……お風呂に入んなきゃ」
汗だくになった私は、乱れまくった寝巻きを正し、着替えの服を準備しお風呂場へと向かう。
どうせ遅刻なら何時に行っても変わらない。
それが私の考えであり、座右の銘である。
シャワーを浴び、気持ち良くなった私はお風呂に浸かる。
だが、ここでママの言葉を思い出す。
『遅刻してもちゃんと学校には行くのよ!』
……やっぱり早めに学校行くか。
そう思った私は、お風呂に浸かってすぐお風呂から出て、身体を拭き、下着を着た。
ただ、それでも欠かせないことがある。
それは、髪のセット。
仮にも私は花の女子高生。身だしなみは大事にしたいし、男子には可愛く思われたいのだ。
そんな私は、金色の髪をドライヤーで乾かし、髪をセットした。
「……よしっ! 今日は巻き髪で行こう! 今日も私、可愛いっ!」
私は鏡に写った自分を見て、満足気に頷き笑顔になった。
この後は……制服を着て学校に行こう。
えっ、朝ご飯は食べないのかって?
私は、朝ご飯は食べない派なのだ。
お腹は空いているけど……面倒くさいと言うか、なんと言うか。
言葉では上手く表現出来ないけど、ダイエットにもなるし一石二鳥だと思ってる。
そして私は制服を着て、家を出た。
家の外の風鈴が、気持ち良さそうに鳴っている。
自転車に跨り、さあ出発!
芽衣ちゃん、ちゃんと学校行くよママ!
「行ってきま〜す!」
私は元気よく行ってきますの挨拶をし、自転車を発進させる。
挨拶と言っても、相手は誰も居ないけど。
そして自転車に乗ってる私は、風を切っている。
私は結構、自転車が好き。
体の隙間を風が通っていくのを感じるのが心地良い。
なんて言うか、「生きてるっ!」って思う。
だけど正直、真夏に自転車に乗るのはあまり好きではない。
非常に暑いからだ。
自転車を漕ぐことによって体温が上がるし、体をすり抜ける風は、もはや熱風である。
そういう訳で、私は自転車を非常にゆっくりと漕いでいる。
暑くなると言う理由もあるけど、一番の理由はそれでは無い。
思いっきり漕ぐと、私の髪が崩れてしまうのだ。
花の女子高生である私にとって、髪より大事なモノはあまり無いかも知れない。
誰も見ていないなら、私は薄い格好で自転車に乗るかもしれない。
だけど、そう思ってるだけで実際にはしないだろう。
不良だけど、私は気が弱い方なのだ。どちらかと言うと、だけど。
『チリンチリン』
何も考えずに自転車のベルを鳴らす。ベルは、日差しを浴びて光り輝いている。
そのベルを見ると、どれ程の高温になっているのだろうか、と想像するだけで暑くなる。
ただ、ベルの音はとても好き。何だが涼し気な音だし。
蝉の『ミーン』と鳴く音と、ベルの『チリンチリン』と鳴らす音が、何とも言い難いメロディーを奏でている。
そんなこんなで、私の学校が見えてきた。
「はぁ、やっと着いたよ……」
自転車を降り、スカートをパタパタとし熱を逃がしながら、私は教室へと向かった。
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