表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

1.私は芽衣

新作始めました。よろしくお願いします。

ブックマークと評価をして頂けると励みになります。

 私は今日、学校をサボる。

 学校に行くフリはしたが、学校へは行かないのだ。


 さて、これから何処へ行こうか……。


 サボる理由は特に無いのだが、強いて言えば行くのが面倒だからである。


 朝日が当たる中、私は背伸びをしながら歩く。


 すると……前方には、同じクラスの萌永(もえ)がいた。

 ボサボサの髪で、丸眼鏡を付けた女の子である。


「私、あの子なんだか苦手なんだよなぁ……」


 登校中の萌永を見付けた私は、咄嗟に身を隠した。



 **********



 蝉が喧しく鳴いている夏の朝。日差しがしつこく窓を通して部屋に入ってくる。


「めいちゃん〜朝だよ起きなさーい!」


「うぅ……もうちょっとだけ……」


 私、佐藤芽衣(めい)は眠気に負け、朝になっても体を起こせずに布団に横になっていた。


 階段をダッダッダッ、と登る音が聞こえる。


 ――ガタッ。


 部屋のドアが勢いよく開いた。


「こらめいちゃん、学校遅刻するでしょうが〜」


「別にいいの、遅刻しても……」


 私はよく、不良と言われる。遅刻が多かったり、サボりが多かったり、髪の色を染めていたり、ピアスの穴を開けていたり……

 私がしている不良要素と言えば、そのくらいだろう。

 私自身、あまり悪い事はしてないとは思ってる。

 でも、世間一般的には不純な行為らしい。


『なんで高校生が髪染めてるの!』

『学生は学校に行くのが仕事なんだからサボるな!』


 このように、子供が何かをすると必要以上に騒ぐ大人が居るのだ。

 ただ、その人数が少なくないと言うのは、やはり世間の考えも大体そうなのだろう。

 だから、私は不良と呼ばれても否定はしないし、自分自身、不良なのだろうと思っている。


「だーめ! 昨日だってサボったでしょ〜? めいちゃんの友達に聞いたんだからね、もうっ!」


「げっ……知っていたのママ……」


 ママは珍しくプンスカと怒っていた。片手にしゃもじを持って。

 ただ、ママの怒り方は全然怖くないのだ。そのせいあってか、私はママに怒られるのはあまり苦ではない。

 ただ、ママに悲しい思いをさせるのはあまり好きではない。

 ママの事が、大好きだからだ。


「仕方ないわねぇ……そんなに眠たいなら、もう少し寝てから学校行きなさい! 遅刻しても良いから、サボりはダメよ、良い!?」


「はぁ〜い……」


 このように、ママは私に対してとても甘い。それが原因で私は不良になったのだろうか?

 いや、そんな事は無い。ママのせいにはしたくない。


「ママはもう仕事に行くから、家出る時はちゃんと鍵閉めて行くんだよ〜!」


「はぁ〜い……」


 慌ただしく動くママに対し、私は気の抜けるような声で返事をする。

 ……今日はサボらないでちゃんと学校に行こう。だけど、眠いからもう少しだけ……。


 そう思い、私は再び目を閉じた。



「……あれっ!? もう十時!?」


 私が目を覚ました時には、時計の針は十時を回っていた。

 学校では、二時間目が始まる頃だ。


 夏の日中。日差しが強く私の部屋の中に入り、熱が籠っていた。

 窓も開けずに寝ていたため、部屋はまるでサウナのようになっていて、私は起きた時には汗だくとなっていた。


「……お風呂に入んなきゃ」


 汗だくになった私は、乱れまくった寝巻きを正し、着替えの服を準備しお風呂場へと向かう。


 どうせ遅刻なら何時に行っても変わらない。


 それが私の考えであり、座右の銘である。


 シャワーを浴び、気持ち良くなった私はお風呂に浸かる。

 だが、ここでママの言葉を思い出す。


『遅刻してもちゃんと学校には行くのよ!』


 ……やっぱり早めに学校行くか。

 そう思った私は、お風呂に浸かってすぐお風呂から出て、身体を拭き、下着を着た。


 ただ、それでも欠かせないことがある。

 それは、髪のセット。

 仮にも私は花の女子高生。身だしなみは大事にしたいし、男子には可愛く思われたいのだ。


 そんな私は、金色の髪をドライヤーで乾かし、髪をセットした。


「……よしっ! 今日は巻き髪で行こう! 今日も私、可愛いっ!」


 私は鏡に写った自分を見て、満足気に頷き笑顔になった。


 この後は……制服を着て学校に行こう。


 えっ、朝ご飯は食べないのかって?

 私は、朝ご飯は食べない派なのだ。

 お腹は空いているけど……面倒くさいと言うか、なんと言うか。

 言葉では上手く表現出来ないけど、ダイエットにもなるし一石二鳥だと思ってる。


 そして私は制服を着て、家を出た。


 家の外の風鈴が、気持ち良さそうに鳴っている。


 自転車に跨り、さあ出発!

 芽衣(めい)ちゃん、ちゃんと学校行くよママ!


「行ってきま〜す!」


 私は元気よく行ってきますの挨拶をし、自転車を発進させる。

 挨拶と言っても、相手は誰も居ないけど。


 そして自転車に乗ってる私は、風を切っている。

 私は結構、自転車が好き。

 体の隙間を風が通っていくのを感じるのが心地良い。

 なんて言うか、「生きてるっ!」って思う。


 だけど正直、真夏に自転車に乗るのはあまり好きではない。

 非常に暑いからだ。

 自転車を漕ぐことによって体温が上がるし、体をすり抜ける風は、もはや熱風である。


 そういう訳で、私は自転車を非常にゆっくりと漕いでいる。

 暑くなると言う理由もあるけど、一番の理由はそれでは無い。

 思いっきり漕ぐと、私の髪が崩れてしまうのだ。

 花の女子高生である私にとって、髪より大事なモノはあまり無いかも知れない。


 誰も見ていないなら、私は薄い格好で自転車に乗るかもしれない。

 だけど、そう思ってるだけで実際にはしないだろう。

 不良だけど、私は気が弱い方なのだ。どちらかと言うと、だけど。


『チリンチリン』


 何も考えずに自転車のベルを鳴らす。ベルは、日差しを浴びて光り輝いている。

 そのベルを見ると、どれ程の高温になっているのだろうか、と想像するだけで暑くなる。


 ただ、ベルの音はとても好き。何だが涼し気な音だし。


 蝉の『ミーン』と鳴く音と、ベルの『チリンチリン』と鳴らす音が、何とも言い難いメロディーを奏でている。


 そんなこんなで、私の学校が見えてきた。


「はぁ、やっと着いたよ……」


 自転車を降り、スカートをパタパタとし熱を逃がしながら、私は教室へと向かった。

お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ