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天魔の子(仮)  作者: タロさ
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王都騒乱 誤算

アンデットオオカミを先頭に、王城に向かって大通りを歩くエンデたち。

暫く進むと、その正面に、ソリウド率いるハーネス家の私兵たちが、道を塞いでいた。


「私は、ソリウド ハーネス。

 これ以上、先には進ませぬ。

 大人しく捕まるか、この剣の錆びになるか選べ」


口上を述べるソリウドだが、エンデたちが立ち止まる事はなかった。


「おい、聞いているのか!」


『グルルルルル・・・・・・』


アンデットオオカミが返事をするように、唸り声を上げると、

ソリウドの私兵たちが後退りした。


1人だけ、突出する形で、その場に取り残されたソリウド。

自分の置かれている状況に気付き、部下である私兵に命令を下す。


「怯むな!

 奴らは、ただのアンデット。

 一度は死んでいる者たちだ!

 準備したアレを使え!」


ソリウドの言葉に反応し、私兵たちは、ポケットから小瓶を取り出し、

持っていた剣に垂れ流すようにかける。


仲間同士で、顔を見合わせ、『ウン!』と頷くと声を掛け合う。


「行くぞ!」


ソリウドと共に、アンデットオオカミに向かって一斉に駆け出す。

アンデットオオカミたちも牙を剥き、ソリウドたちに襲い掛かった。



『ギャン!』


私兵たちと衝突した途端に聞こえて来たのは、アンデットオオカミの鳴き声。


「流石、聖水だ、効果があるぞ!」


その言葉に、どよめき立つ。

勢いに乗り、アンデットオオカミに怯むことなく襲い掛かるソリウドたち。


溶解し、半身を残したまま動かなくなったオオカミたちが、地面に横たわっている。


「このまま、奴らを殲滅せよ!」


勢いに乗り、大声を上げて盛り上がる私兵たち。


しかし、水を差すように私兵の1人の首が飛んだ。


「!!!」


首が転がって来た方向に、視線が集まる。


「殲滅だと?

 やれるものならやってみろ。

 その前に、貴様らの命を頂く」


そこに立っていたのは、ダバンだった。


「ふんっ!

 この戦場に、武器も持たず参戦するとは・・・・・愚かな奴だ」


ソリウドは、自ら剣を取り、ダバンに立ち向かう。

武器を持っていないことをいいことに、余裕の表情で

笑みを浮かべ、大声で叫びながら走る。


「これで貴様も終わりだ!」


下段に構え、勢いのまま突進したソリウド。

切り殺しにかかったが、ダバンは、いとも容易く剣を躱し、

そのまま首に蹴りを入れ、頭部を吹き飛ばした。


私兵たちの足元に、ソリウドの首が転がる。


「ひぃ!」


思わず悲鳴を上げ、仲間達の視線を集める。


「ソリウド様・・・・・・」


私兵たちの動きが止まる。

その瞬間、生き残っていたアンデットオオカミたちが、一斉に襲い掛かる。

主を失った事で、戦意を失くした私兵たちは、アンデットオオカミの餌食となり

あっという間に戦況がひっくり返ってしまった。


ダバンとアンデットオオカミたちだけで一掃し、エンデが手を出さずとも決着がついた。


死体の転がる大通り。

その中を、アンデットオオカミに囲まれたエブリンとダバンは歩く。


今の戦いを、密かに監視していたガルバンの放った密偵。


「ソリウド男爵は、敗れたか・・・・・

 おい、報告に向かうぞ」


仲間に話しかけるが返事がない。


「おい」


振り向くと、そこに立っていたのは、エンデだった。


「隠れて、何をしているの?」


「えっ!」


思わず、先程迄エンデの居た場所を見るが、当然、エンデの姿は無い。


「貴様、いつの間に!」


戦うより、逃げる事を優先した密偵。

その場から走り出そうとしたが、足に何かが嚙みついた。


「ぐわぁ!」


その場で転倒する。

慌てて上半身を起こし、噛みつかれた足を見る。


噛みついたものの正体、それは、ソリウドの頭。


「アンデットにしちゃった」


可愛く言われても、密偵にとっては、恐怖でしかない。


「ひぃぃぃぃぃ!!!」


悲鳴を上げ、足をバタつかせるが、

『ガジガジ』と密偵の足を噛み続けるソリウドの首。

噛まれた足は血だらけになり、使い物にならなっくなっているが

恐怖が勝って、痛覚がマヒしている。


「や、やめてくれ・・・・・」


ズルズルと後退るが、何かにぶつかり先に進めない。


思わず振り返る密偵。

そこにあったのは、首の無いソリウドの体だった。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」


密偵は、意識を失い、その場に倒れた。

すると、ソリウドの首が密偵の体を這い上がり、喉元に喰らい付く。


『うぐっ!

 ガハッ・・・・・・・』


口と噛まれた喉元から血を拭き零しながら、密偵は動かなくなった。





エンデは、ソリウドの首を持って、エブリンの元に戻る。

出迎えてくれたエブリンだが、エンデの手元にあるものを見て

表情を歪める。


「その首、捨てなさいよね」


「えーーーー

 これがあると、みんな驚くんだよ」


「それでも、気分のいいものではないから、捨ててきなさい!」


エブリンに叱咤され、仕方なくエンデは、ソリウドの首を放り投げた」


「先を急ぐわよ」


「うん!」


3人とアンデットオオカミたちは、王城を目指して歩き出した。







その頃、王城では、ガルバンと貴族たちは、密偵からの連絡を待っていた。


「まだ、戻らないのか?」


『イライラ』した様子で、兵士に尋ねる。


「申し訳御座いません。

 まだ、戻って参りません」


「何をしているのだ・・・・・・」


玉座に腰を掛けているガルバン。

重鎮たちは、ガルバンの振る舞いに、苦虫を嚙み殺したような表情をしている。


━━━あそこは、陛下のお席だというのに・・・・・・


ガルバンは、重鎮たちの表情に気付いていたが、気付かないふりをしていた。

だが、報告が無い事に不満を持ったガルバンは、

八つ当たりで、重鎮の1人に声を掛ける。


「【ダックマン】殿、何かご不満でもあるのか?」


「いえ、そのような事は・・・・・」


目を逸らし、下を向く。


「そうなのか、だが、気に入らないような表情をしておったではないか?」


「・・・・・そのような」


言いたい事は、山ほどある。

しかし、この場でそれを口にすれば、殺されることは、容易に想像出来た。

その為、口籠ってしまう。


「何か言いたい事があるなら・・・・・・」


ガルバンの言葉を遮るように、扉が叩かれた。


「入れ!」


視線をダックマンから扉に向ける。


ガルバンは、待っていた報告が来たと思ったが、

齎された報告は、全く違うものだった。


「アンデット連れた者たちが城の前まで、迫っております!」


玉座から立ち上がるガルバン。


「何故、何故だ!

 何故、今まで報告が無いのだ!」


「申し訳御座いません。

 それが・・・・・全く、連絡が取れず・・・・・・」


イライラが募るガルバン。


「もういい!

 お前たちも配置に付き、敵を殲滅しろ!」


ガルバンの命令に従い、貴族たちは謁見の間を後にする。

一人残ったガルバンは、玉座に座りなおした。



ブックマーク登録、有難うございます。


不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。

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