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天魔の子(仮)  作者: タロさ
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覚醒・・・・流れ込む力

男達の正体は、山猫族の男達。

深夜の警備を兼ねて、辺りを探索していたのだ。


そこで見つけた怪しい光。

そっと近づくと、光は木の枝の上で眠るエンデから発していた。


「おい、あいつ・・・・・」


ミーヤが連れてきた少年だと気が付いた。


「あのガキ、何者なんだ・・・・・」


小声で話し合う山猫族の男達。

そんな中、リーダーと思われる男が命令を下す。


「急いで里に戻り、この事を伝えるんだ」


数人が監視の為、その場に残ったが、他の者達は里に戻る。


里に戻った男達の報告を受け、

ヒューイは、部下を引き連れ、エンデのもとに向かう。


「やはり、ただのガキじゃなかったな」


山猫人達は急ぐ。

男達の手には、それぞれの武器が握られていた。

そして、エンデの眠る木の側まで来ると、監視をしていた者達と合流を果たす。


「どうだ、動きは、あったか?」


「いえ、眠ったままです」


「そうか・・・・・」


ヒューイは、報告の通り、枝の上で光に包まれて眠るエンデに目を向けた。


「あれは、魔法なのか・・・・・」


「わかりません、どうしますか?」


「素性の知れぬ者など、生かしておく必要はない。

 やるぞ」


ヒューイは、慎重を期して、木から離れた所に、魔法が使える者達を配置し、

接近戦が得意な者達は、エンデが眠る木を取り囲んだ。


ヒューイは目配せをし、仲間達に合図を送った。

ヒューイに従い、魔法が使える山猫人達が、一斉に風の魔法を放つ。


『ウインドカッター』


逃げ道が無いエンデは、眠っている為、気が付いていない。

その為、このままウインドカッターで、切り刻まれると思われた瞬間、

エンデを覆う光が、魔法を弾き返した。


「え・・・・・」


驚きを隠せない山猫人達が声を上げた。

その声で、エンデが目を覚ます。


━━なんか、頭がふらふらする・・・・・


寝ぼけた顔で、辺りを見渡す。


木の下で、武器を持ち、待ち構えている猫人達。

その光景に、狙われている事を理解した。


━━逃げなきゃ・・・・・


そう思った時、フラフラする頭の中に、次々と魔法の呪文が刻まれる。


━━僕に、何が起きているの!?・・・・・・


覚醒しつつあるエンデだが、

本人は、戸惑うばかり。

しかし、悠長に戸惑っていてもいられない。


覚えたての魔法を言葉にする。


『フライ』


すると、背中に6枚の翼が生え、エンデの体が宙に浮いた。


「わっわっ!」


慌てるエンデ。

その光景を、地上から見上げている山猫人達。


━━逃げる気だな・・・・・


ヒューイは、再び命令を告げる。


「もう一度、もう一度だ!

 あいつを逃がすな!」


「は、はい!」


再び放たれた風の魔法。

エンデは、脳裏に刻まれていく魔法の中から

防御の魔法を使う。


『マジックガード』


エンデの右手から繰り出した魔法、マジックガードにより、

風の魔法は、塞がれた。


「へへへ・・・・俺の出番だな」


接近戦を得意とする者の中から、

1人の男【コフィー】が、木に登り始める。


「魔法が駄目なら、直接攻撃すれば良いだけだ」


スルスルと木に登ると、エンデに一番近い枝に飛び移る。


「へへへ・・・・」


コフィーは剣を鞘に戻し、背中に担いでいた矢筒から、1本の矢を抜き取った。


「これで、終わらせてやるぜ」


狙いを定めるコフィー。


「あばよ」


矢が放たれた。


矢は、真っ直ぐエンデ向かっている。

だが、エンデの目には、放たれた矢がスローに見える。


「?」


エンデは、飛んできた矢を手で掴んだ。


「嘘だろ・・・・・」


再び弓を構えるコフィー。

しかし、エンデの姿を見失う。


先程と同じところに、姿は無い。


「チッ、何処に行きやがった!?」


コフィーがキョロキョロしていると、

地上の仲間達が、必死に叫んでいる姿が目に映る。


全員が、同じ方向を指で示していた。


「上?」


コフィーが空を見る。

そこに見えたのは、エンデの足の裏。


「がっ・・・・・」


コフィーの顔面に、エンデの蹴りが入る。

勢いに押されて、地上に叩き落された。

枝の上に、降り立つエンデ。


「今度は、僕の番だね」


エンデは、覚えたての魔法を放つ。


『エクスプロージョン』


ピンポン玉ほどの炎が、山猫人達の中心に落ちた。

同時に、爆音が響き渡る。


『ドゴォォォォォ・・・・・!』


そして、大爆発が起こった。

風圧と爆炎に絡まれ、木々と一緒に、山猫人達も吹き飛ばされる。


「う、ぐわぁぁぁぁぁ!!!」



辺り一面が焦土と化し、火が燻る中、エンデは、地上に降り立つ。

焼けた大地を見渡すが、そこに山猫族の姿は無かった。


「凄いな・・・・・」


思わず言葉が漏れる。

自身の覚えた魔法に感心し、眺めていると、遠くの方から声が聞こえて来た。


「こっちだ!

 早くするんだ!」


「不味い、逃げなきゃ」


声の主は、わからないが、此処にいるべきではないと判断し、

急いで、その場から離れる。




再び、空に舞い上がったエンデは、あてもなく飛んでいた。

太陽の位置から、おおよその方角を知る事も出来るが

エンデは知らない。


その為、気の向くまま飛ぶ。

1つの山を越えた所で、道を見つける。


その道筋に従い、空を飛ぶ。

暫く進んでいると、遠くに街が見えた。


エンデは、門兵に見つかる前に、地上に降りて歩く。

荷物も持っていない10歳の少年は、街に向かう人々にとって不思議に見えるらしく、

行き交う人々の視線を集めた。


そんな中、エンデを通り越した辺りで、馬車が止まる。

馬車は、装飾が施してあり、いかにも貴族が乗っていそうな馬車だった。


御者が急いで扉を開けると、一組の男女が降りて来た。


「君は、この街の子か?」


「多分、違うと思う・・・・・

 すいません、ここは何処ですか?」


「ん?

 ここは、ゲイルドの街の手前だ。

 そして、あそこの門を潜れば、ゲイルドの街だ」


男は、時折、笑顔を見せながら話した。

その間、女性はエンデを見つめたままで、視線を離そうとはしなかった。


「あの、僕に何か?」


女性に尋ねる。


「あ、ごめんなさいね」


女性は、微笑みながら謝罪を口にした。

女性の笑顔が、エドラと被り、エンデの動きが止まる。


「母様・・・・・・」


思わず、口から洩れた言葉。

その言葉は、女性の耳にも届いた。

 

「母様ですか?」


再び笑顔でエンデに話しかける。


「あっ!

 ごめんなさい」


「ううん、良いのよ、気にしないで。

 ところで貴方、ご両親は?」


「・・・・・・いません。

 父の事は知らないし、

 母様は、先月亡くなりました」


女性から、笑顔が消える。


「ごめんなさい。

 私としたことが・・・・・」


丁寧に対応してくれる女性に、エンデは好感を持った。


「ところで、貴方は、これからどうするの?」


「街に行こうと思いますが・・・・・あの・・・・・

 街に入る為には、お金が要りますか?」


気まずそうに問いかけるエンデ。


「どうしたの?

 もしかして、あなた、お金を持っていないの?」


エンデは、恥ずかしそうに頷いた。

女性は、男性の方に向き直る。


「ねぇ、あなた・・・・・」


女性の言いたいことがわかった。


「君が決めたのなら、文句は無いよ」


「ありがとう」


女性は、エンデに近づく。

そして・・・・・


「街の中まで、一緒に行きましょう」


エンデに、そう告げると、女性はエンデの手を取り、馬車に向かった。



不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。

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