ゴンドリア帝国へ 3人での侵攻
全ての山猫族の治療を終えたエンデが戻って来た。
「お帰り。
皆は、もう大丈夫なのね」
「うん。
でも、どうしてこんな事になっているの?」
エンデの問いにエブリンが答える。
「私も気になって、そこのところを聞いてみたら
山猫族が、ゴンドリア帝国の兵士に捕まって奪い返しに来たみたい。
そこに、マリウル様たちが、鉢合わせになったみたいよ」
「じゃぁ、傷つけたのは、ゴンドリア帝国の兵士?」
「うん、一部では、アンドリウス王国の兵士とも争ったみたいだけど
山猫族が捕えられて事に関しては、知らないって」
━━━また、ゴンドリア・・・・・・
ゴンドリア帝国が駐屯地にしていた村。
村人の姿は無い。
残っているのは、地面に伏したまま動かなったゴンドリア帝国の兵士たちの屍だけ。
その光景を見た後、エンデは無言のまま、
食料をその場に置き、何処かに向かって歩き出す。
村の広場から離れて行くエンデ。
その後ろから、ダバンが馬の姿のままで、ついて歩いている。
村の外に出かけた時、エブリンが声を掛けた。
「何処に行くの?」
振り向くエンデ。
「ちょっと、ゴンドリア帝国まで」
近くに買い物にでも行くような気軽さで、言葉を返してきたが、
見せた表情は、笑顔で取り繕っていても、怒りは、隠しきれていない。
「そう・・・・なら、私も同行するわ。
これは、決定事項よ。
あんたたちだけだと、何をしでかすかわからないもの」
この時エンデは、ゴンドリア帝国の王都を崩壊させるつもりでいたのだ。
なので、エブリンが声を掛けなければ、
エンデは、勢いのままゴンドリア帝国の王都まで飛んで行き、
見境なく人々を殺しただろう。
しかし、エブリンが声を掛けたことで、エンデの気持ちが落ち着き
王都で起こり得た惨劇を回避することが出来た。
エブリンは、エンデの頭を撫で、抱きしめる。
「1人で行っちゃ駄目。
お姉ちゃんだって、同じ気持ちなんだよ・・・・・・
でもね、感情のまま、動いたら駄目よ」
エンデを宥めたエブリンは、顔を上げる。
「エンデは、ゴンドリア帝国に行きたいのね?」
「うん、やられっぱなしは嫌だ」
「そうね、このままだと、同じことが繰り返されそうだし、
いなくなった村の人たちの事もあるしね」
エンデたちは、ゴンドリア帝国に向かうことを決め、村の広場に戻る。
広場では、マリウル、ガリウス、ヒューイが、エンデたちを待っていた。
「あの時の事を改めて謝罪する。
また、我らの同朋を救ってくれたことに感謝する」
ヒューイは、村から追い出し、襲撃を掛けたことを詫びた。
同時に、今回の治療について、感謝を述べ、頭を下げる。
すると、ヒューイの後ろには、生き残っていた山猫族者たちが連なり、
同じ様に頭を下げていた。
その敬れるような感覚に、恥ずかしさを感じる。
「ぼくは、ミーヤを助けたかっいただけ。
後は、ついでだから・・・・・それだけだよ」
素っ気なく返事をするエンデ。
それでも、ヒューイの態度は変わらない。
「そうか・・・・・それでも、仲間を助けられたことに変わりはない。
本当に、ありがとう」
ヒューイは、再び、エンデに対して頭を下げた。
治療された山猫族、ここまで休憩なく進み、戦闘に巻き込まれたマリウルとガリウスの軍。
お互いに、疲労が溜まっている。
その為、休戦協定を結び、この村で休むことにした。
食料は、エンデが運び込んだおかげで、不自由なく全員に行き渡った。
その間、お互いの代表者であるマリウルとガリウス、山猫族のヒューイは、
今後の事を話し合う。
「我らは、このまま奪われた村や街を奪還に向かうが、貴殿らはどうする?」
マリウルとしては、今後の事も考え、仲良くなっておく方が得策だと思い、
声を掛けた。
しかし、ヒューイには、ヒューイの事情がある。
里からの命令に従わなければならない。
「申し訳ないが、我らは、怪我人を里に連れ帰るという義務がある。
なので、ここでお別れだ」
「そうか、残念だが、ここでお別れだ。
だが、もし、王都を訪ねて来る事があったら、私の名前を出してくれ。
歓迎しよう」
そう言って、手を差し出すマリウル。
ヒューイは、その手を握り返した。
「まさか、人族と手を握り合う日が来るとはな・・・・・」
握り合う手の上に、手を乗せるガリウス。
「俺の事も忘れないでくれよな」
「ああ、勿論だ」
その夜は、3人で酒を交わした。
翌朝、目を覚ましたマリウル。
2人は、まだ寝ている。
1人テントから抜け出し、広場に向かうと、
そこには酔いつぶれた兵士と山猫族の姿があった。
━━━今日の侵攻に響かなければ良いが・・・・・・
苦笑いを浮かべる。
マリウルは、広場を抜け、村の中を歩く。
だが、幾ら歩いても、肝心な者たちの姿が見当たらない。
「彼らは、何処に行ったのだ?」
軍のテント、廃屋、何処にも見当たらない。
日が昇り、他の者達も起きて来たが、やはり姿が見えない。
「おい、エブリン嬢と弟のエンデ殿は、何処に行った?」
近くにいた兵士に問いかけるが、やはり『見ていない』との返事しか帰って来なかった。
その頃、深夜のうちに、村を旅立ったエンデたちは、次の街の近くまで来ていた。
「主、起きてくれ、街が見えるぞ」
ダバンの言葉が耳に届き、ダバンの背で寝ていたエンデとエブリンは、目を覚ます。
「ん・・・・・・ほんとだ。
あそこで、朝ごはん食べれたらいいね」
「何を言っているのよ。
あの街も、多分、ゴンドリア帝国の兵士が支配している筈よ」
「そっかぁ、ならご飯は、お預けだよね」
エンデのその返事に、違和感を覚えるエブリン。
「あんた、まさかと思うけど、食料を全部置いてきたの?」
「えっ!
駄目だったの?」
「!!!」
その言葉に、一番反応したのは、ダバン。
夜通し走り、空腹と疲労で一杯だった。
「あ、主、俺の食事は?」
足を止め、悲しそうに見つめるダバン。
「・・・・・ごめん、ちょっと待っていて」
エンデは、そう言うと翼を広げ、飛び立つ。
「ちょっと!
何処に行くのよ!」
『直ぐ戻るから』
それだけ言い残し、エンデは飛んで行く。
『何処に行くつもりなのか?』
一瞬だけ、そう思ったが、エンデの飛んで行った方向にあるのは、街。
「あの子、まさか!?」
「お嬢、しっかり掴まって下さい」
ダバンは、エブリンを乗せ、急いで街に向かった。
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