ゴンドリア帝国軍 侵入
ゲイン率いるゴンドリア帝国軍を破ったメビウス率いるアンドリウス王国軍。
ゴンドリア帝国軍に、占領された村の奪還の為に、前進した。
メビウスたちが次の村に到着する。
だが、家屋は破壊され、人の姿は無い。
あるのは、年老いた人々の死体だけ。
「・・・・・」
無言で、廃墟と化した村を見つめるメビウス。
部下たちに、村の探索を命じたマリウルが近づく。
「父上・・・・・・」
「ああ、どうやら連れ去られた後のようだ・・・・・・」
「そのようですね、それに、畑には、火を放った後が残っています」
「我が国を食糧危機に陥れるのも、目的の1つだったようだな」
メビウスの一言で、マリウルも気が付く。
「もしかして、この先も?」
メビウスは頷き、答える。
「間違いなく、同じようにされているだろう」
メビウスたちも、多くの食料を持っているわけではない。
元々、村を取り返せば、現地調達で食料が手に入ると考えていた。
しかし、それが無理だと悟る。
ゴンドリア帝国軍が田畑にまで、火を放つとは思ってもいなかったのだ。
メビウスたちが、この先の村に進むことは、困難な状況に陥った。
━━━敵の大将は倒した。
この先、多くの敵が潜んでいるとは思えんが・・・・・・・
軍を分けて、調査に行かせることも考える。
しかし、村民を助ければ、それだけ食料も必要になる。
現状、それだけの食料がある筈も無い。
だが、生きている者や捕虜になった者達を助けたい気持ちもある。
葛藤するメビウスの前に、膝をつくマリウル。
「父上、先程の戦闘での失態を、挽回する機会を、この私にお与えください」
「マリウル・・・・・」
ここで引き返すことは可能だ。
しかし、国王から命じられたのは『奪還』。
まだ、1つ目の村にしか辿り着いていない。
理由を語れば、国王は、わかってくれる。
だが、他の貴族たちからは、責任追及の声があがることは明白。
そして同時に、罵詈雑言の嵐。
状況もわからず、『役立たず』だの『腰抜け』だの、
好き勝手に、メビウスを責め立てるであろうことは、わかっている。
父親であるメビウスを、そんな場所に立たせるわけにはいかない。
そう思い、理由をつけてマリウルは志願した。
その思いは、メビウスにも届いていた。
しかし・・・・・
先へ進めば、食料も満足に得られないどころか、
村人を助ける事が出来ても、その先に待ち受けるのは困難しかない。
それに、予想が外れ、大勢の敵が待機していれば、命を落としかねない。
『本当に、そんな任務を息子であるマリウルに与えていいのか?』と
葛藤するメビウスの前に、もう一人の息子ガリウスが姿を見せる。
「俺もついて行くぜ」
悲壮感のかけらもない笑顔で、同行を口にするメビウス。
「食料が無いなら、狩りでもなんでもするさ。
それに、大将が兄貴なら、副将は、俺が務めるしかないだろ!?」
そう言って、マリウルの横に並んだガリウスは、
マリウルと同じ様に、メビウスの前で膝をついた。
「父上、今回の任務、兄様と、この私にお与え下さい」
真面目な表情で、メビウスを見る。
息子たちの成長を嬉しく思う反面、このような任務を与える事に、
申し訳なく思うメビウスだったが、2人の真剣な表情を見て、決心する。
「わかった。
2人に任せる。
編成もお前たちで決めるがよい」
「有難う御座います。
この任務、我が一族の誇りに賭けて、全うしてみせます」
2人は直ぐに立ち上がり、兵の編成に向かった。
その2人の後ろ姿を見て、メビウスは呟く。
「そろそろ、儂も引退かのう・・・・・・」
編成を終えたマリウルの軍は、72名。
志願した兵士たちで構成された軍だ。
マリウルは、軍を編成する際、食料が少ない事や、
困難な任務であることを話した。
そして、兵士たちに問いかけたのだ。
「勲章や、褒美がある訳では無い。
あるのは『名誉』だけだ。
それでも、ついて来てくれる者は、手を上げてくれ」
その言葉を聞き、真っ先に手を上げたのは、
メビウスが若かった頃から従っていた者達だった。
「坊ちゃん、老い先短い儂らだが、構わないかね?」
笑顔で問いかける兵士に、思わず顔が綻ぶ。
「年寄りみたいな事を言うな、柄でもないぞ。
宜しく頼む」
「ああ、任された」
そんな2人のやり取りに、触発されたかのように、
次々と名乗りを上げる兵士たち。
おかげで、編成は、あっという間に集まった。
大将は、マリウル。
副大将に、ガリウスが就任し、編成軍は、全ての食料を持って、進軍を開始する。
「父上、行って参ります」
「ああ、頼んだぞ」
「はい!」
マリウルたちが出発した後、メビウスも行動に出る。
王都に戻る気など、更々無い。
メビウスは、この場所に拠点を築くことに決めていた。
そして、残った兵士たちを、王都に食料を取りに戻る者、
山に入り狩りをおこなったり、作物を探す者、
廃墟となった村の一部を修復し、拠点となる小屋を建てる者たちに振り分けた。
その頃、商人などに変装し、王都に侵入することに成功した暗殺部隊の者たちは、
約束していた商人の屋敷で落ち合っていた。
屋敷の持ち主である商人の名は、【ギドル】。
ギドル商会の会長である。
アンドリウス王国内では、中堅に位置する商会だが、ゴンドリア帝国では、
名の通った大手の商会なのだ。
チェスター エイベルの事件の時、多くの貴族や商人たちが逃げ出し、
アンドリウス王国の兵士に捕まったが、
ギドルは、『今、行動するのは愚策』だと判断し、他の仲間たちとの接触を避け
大人しく、屋敷に籠って時が過ぎるのを待った。
そのおかげで難を逃れ、今もアンドリウス王国で商売をしている。
落合場所となった屋敷の一角では、暗殺部隊のリーダーモンタナが、
全員そろったことを確認する。
「全員、揃ったようだな」
一通り仲間たちの顔を見渡した後、告げた。
「では、作戦に入ろう」
不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。




