王都 『闇』
「それで、何処に行こうとしているんだ?」
キングホースの問いかけに、『闇』のメンバーたちは警戒を強めた。
「お前には関係ない。
とっとと何処かに行ってくれ」
冷静さを保ってはいるが、怪しい男の出現で、ジェイクは判断に迷う。
━━今、ここでチェスターの手の者が現れたら、不味い。
それに、突然現れたこの男は、何者なのだ?・・・・・・
一瞬の迷いであったが、それを見抜いたキングホース。
「もしかして、あの屋敷に用があるのかい?」
わかっているが、ジョエルの屋敷を指で差し、ふざけたように問う。
その物言いに、ジェイクは剣を抜いた。
「貴様、あの屋敷の者か!」
「ああ、そうだ。
最近、羽虫が飛び回って五月蠅かったのだが、
今日で、最後になりそうだな」
キングホースの言葉から、『闇』のメンバーや
チェスターの雇った冒険者達を屠ったのが、この男の仕業だと理解する。
「そうか・・・・・・お前の仕業だったのか・・・・・」
ジェイクの顔つきが変わる。
そして、『闇』のメンバーも、一斉に動き出し、キングホースを取り囲む。
「手始めに、貴様の命をもらう」
ジェイクが、合図を送った様子はなかった。
しかし、『闇』のメンバーは、阿吽の呼吸でタイミングを合わせ、一斉に襲い掛かる。
一糸乱れぬ攻撃に、キングホースの逃げ出せるような隙間が無い。
だが、キングホースは、人型をしていても、もとは馬。
1人の男をターゲットに定めると、一気に距離を詰め、
人並外れた脚力で、低い姿勢から、蹴り上げた。
『ぐはっ!』
鳩尾に蹴りを受け、吹き飛ばされる。
男が吹き飛び、逃げ道が出来たが、キングホースは、逃げようとはせず、
そのまま他の『闇』のメンバーに向かった。
低い姿勢から足を使い、次々と『闇』のメンバーに攻撃を加える。
だが、『闇』のメンバーも、黙ってやられているわけではない。
剣を振り、反撃を試みたりして、
必死に、キングホースの隙を突こうと足掻く。
しかし、キングホースは、カポエラのように足を使い、様々な攻撃を繰り出して、
相手を翻弄する。
時間が経つにつれ、『闇』のメンバーの数が減る。
生き残っている者達も、反撃する気力も、殆ど残っていない。
そんな中でも、ジェイクだけは、諦めずにキングホースに戦いを挑む。
「てめぇ、絶対殺す!」
両手に剣を携え、キングホースに向かう。
「何度やっても同じことだ」
途中から、勝利を確信し、久々の人型での戦いに、余裕を見せる。
━━この時を待っていた!・・・・・・
ジェイクは、何の策もなく、同じことを繰り返していたわけではない。
両手に携えている剣を振りまわし、キングホースとの距離を詰める。
そして、2本の剣を同時に振り下ろした。
キングホースは、距離をもっと詰めると、
ジェイクの懐に潜り込む。
そして、両腕を弾き、剣を飛ばす。
その時だった。
ジェイクは、最後の手段とばかりに、口の中に隠していた針を飛ばす。
回避は無理だと判断したキングホースは、致命傷を避ける為、
腕で針を受け止めた。
そして、ジェイクを蹴り飛ばす。
近距離から、完全な形での蹴りを受け、内臓を破壊され、血を吐き出すジェイク。
だが、その顔には、笑みが零れている。
「へへへ・・・・・お前も道連れにしてやる・・・・・・」
そう言い残し、ジェイクは、息を引き取った。
「旦那・・・・・」
悲しみを露わにする、生き残っている『闇』のメンバー。
彼らは、ジェイクの最後の行動の意味を理解している。
「旦那、最後まで、お供します」
ボロボロの体に、鞭をうって立ち上がる。
その時、キングホースの体に、異変が起きた。
「あれ・・・・・・」
全身が痺れ、視界がぼやける。
「毒針だったのか・・・・・」
視界の定まらないキングホースに襲い掛かる。
剣を振りかざし、襲い掛かる。
間一髪で、剣を躱したキングホースだったが、
『闇』のメンバーの狙いは、別の所にあった。
振り下ろした剣に、未練など無い。
あれは、キングホースの目を欺く為の言わば、囮。
振り下ろされた剣は、そのまま地面に落下した。
そして、当の本人は、キングホースに、しっかりと抱き着いた。
「先に行くぜ!」
男の叫びと同時に、爆発が起きる。
自爆攻撃。
毒が回り、視界がぼやけ、身動きの取りずらいキングホース。
必死に、ガードをしたが、焼け石に水。
殆ど、意味を果たさない。
自爆攻撃により、体中に、怪我を負ったキングホースに、
再び、剣を振りかぶり、接近する者たち。
先程以上に、身動きの取りずらいキングホースは、今度は、剣での攻撃も受けてしまう。
そして、再び、抱き着かれ自爆攻撃。
成す統べなく、吹き飛ばされる。
両足に火傷を負い、左腕が千切れかけている。
所々黒ずんでしまった肌。
「チッ、甘く見過ぎていたぜ・・・・・・」
近くに落ちていた剣を拾い、必死に立ち上がろうとするキングホース。
『闇』の生き残りは、あと3人。
それだけの自爆攻撃を受ければ、間違いなく死ぬ。
その事は理解出来たが、反撃する力が残っていない。
死を覚悟したその時、聞きなれた声がした。
「おじさん、大丈夫?」
キングホースだと気付かず、話しかけるエンデ。
どんな場面でも、その変わらない態度に、キングホースは安堵する。
━━こいつは、変わんねぇな・・・・・・
同時に、疑問が浮かぶ。
━━さっき、『おじさん』って言ったよな。
もしかして、俺の事、気付いていない?・・・・・・
思わず、エンデを、長々と見てしまう。
「僕の顔に、何か付いている?」
「あっ、いや、すまん。
それより、これを治して貰えないか?」
エンデは、胡散臭そうな顔で、キングホースを見つめる。
「おじさん、どうして僕が治せるって、知っているの?」
━━あっ!本当に、気が付いていない・・・・・
思わずため息を吐く。
「エンデ、俺をよく見ろ。
外観でなく、中身をよく見ろ」
エンデは、内に流れる魔力を探る。
すると・・・・・・
「えっ!『駄馬』!?」
「誰が『駄馬』だ!」
思わず突っ込みを入れた。
エンデは、この男が、キングホースだとわかると、直ぐに傷を癒し、
体から、毒を抜いた。
「助かったぜ。
後の事は俺がやるから、お前は、そこで見ているんだな」
復活したキングホースは、死にかけている『闇』のメンバーに向かって歩き出した。
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