王都 悪あがきと悪ガキ
アラーナは、拷問室から出て、エンデとエヴリンと落ち合う。
「ネフィーロは、どう?」
アラーナに問いかけたのは、エヴリン。
「ええ、ぐっすり眠っています」
「眠って?」
「はい」
「・・・・・・・」
深く聞きたい気持ちになったが、聞いては、いけない気がした。
だが、1つだけ確認しようと思った。
「生きているよね?・・・・・・」
「・・・・・・はい」
何故、少し間が開いたのかは、気になったが、深く追求せず、話題を変える。
「それで、何か喋った?」
「はい、やはりビスド男爵が首謀者というのは、嘘のようです。
捕えたあの男は『闇』のメンバー。
依頼主は、侯爵家。
チェスター エイベルです」
「やっぱり、あいつが絡んでいたのね!
絶対に、許せない!」
憤りを感じ、イラつくエヴリン。
エンデも、憤りを感じていたが、表に出す事はなかった。
数日経った日の正午。
エンデは、庭でキングホースに凭れ掛かって、日光浴をしている。
あの日以降も、いつもと同じように、チェスターの手の者が監視をしていたが、
いつの間にか、キングホースが屠っていた。
その為、チェスターも、人手不足なのか、
現在、エンデ達を見張る者の姿は無い。
そのおかげで、エンデも庭でのんびりしているのだ。
「なぁ、僕がチェスター家潰すっていうのは、どうだろう?」
『ブルルル』(知らん)
「冷たいなぁ~・・・・・・
じゃぁ、1人で、行こうかな?」
エンデは、『チラッ』とキングホースを見る。
『ブル』(ダメ)
「ダメって・・・・・
それじゃぁ、どうするの?」
『スクッ』と立ち上がるキングホース。
エンデの服の襟を咥え、放り投げる。
「うわぁぁぁ!」
そして、キングホースは、自身の背中で受け止めた。
「これって、一緒に行くって事?」
『ブルル、ヒィヒィーーーン!』(当然だ!我の力を見せつけてやる!)
「じゃぁ明日でも、行ってみる?」
その言葉を聞き、キングホースは、エンデを乗せたまま、庭を駆け出した。
その頃、エイベル家では、チェスターが、イライラしていた。
「バートランド、報告はどうした!?
あれから、何日経つと思っているのだ!
貴様に頼んでから、一度も、報告を受けておらんぞ!」
「申し訳御座いません」
頭を下げる事しかできない。
初日に、監視の任務に出た者が帰って来なかった為、
新しく別の者達を監視に付けた。
しかし、その者達も、帰って来なかった。
チェスターの雇った冒険者、バートランドが雇った『闇』。
どちらからの報告もない。
それどころか、監視の任務に向かった者達は、生きて帰ってきていないのだ。
「何か策はないのか!?
このままだと・・・・・・」
チェスターの言いたいことはわかる。
すでに子飼いにしていた冒険者達はいなくなり、今では、冒険者ギルドに依頼を出して、
探らせている始末。
勿論、依頼内容は、ぼかしているのだが・・・・・・
だが、冒険者ギルドも、依頼を受けた冒険者が、死体になって帰ってくるので、
依頼に疑問を持ち始め、調査を始めている。
このまま冒険者ギルドに、調査を進められると、
チェスターの悪事が、公のもとに晒される可能性がある。
知らず知らずのうちに、自分の仕出かした事で、
自らの首を絞めている。
その事に、気が付いていないチェスター。
「情報は欲しかったが、仕方がない。
どちらにしろ、これで、終わりにしてやる」
笑みを浮かべるチェスター。
チェスターは、傭兵を雇い、エンデ達に襲撃をかける算段をつけていた。
その部隊が、明日、王都に到着する予定。
「バートランド、『闇』のメンバーも襲撃に加えさせろ」
「畏まりました。
ですが、そうなると、また・・・・・」
「わかっておる。
金なら、心配するな」
「失礼いたしました。
では、早速・・・・・・」
翌日、チェスターの元には、他国から雇った傭兵たちが、集められていた。
勿論、彼らに、チェスターの事は教えていない。
教える必要が無いのだ。
他国から雇った傭兵は、奴隷兵。
大罪を犯したが、死刑にならず、奴隷に身分を落とした者達だ。
死刑にならなかった理由は、『武力』。
死刑を免れるだけの力を持っていた為に、奴隷落ちで済んでいるのだ。
彼らは、一定の金額を稼ぐと、奴隷から解放される。
ただ、その金額は、莫大だが・・・・・・
そのような者達の前で、チェスターは、説明を始める。
「お前達には、盗賊になってもらう」
チェスターの第一声に、流石の奴隷兵たちも驚いている。
戦争や盗賊狩りなどに駆り出されることはあったが、
『盗賊をやれ』と言われたのは初めてだ。
「旦那、質問いいか?」
1人の奴隷兵が、手を上げる。
しかし・・・・・
「まだ、説明の最中だ!
黙って聞け!」
高圧的な態度で黙らせる。
「チッ」
奴隷兵は、手を下ろした。
「いいか、狙うのは商人の屋敷だ。
金目の物を奪え、そして一人残らず殺せ」
どんな恨みがあるのかわからない奴隷兵たちだったが、
チェスターの目が、狂気に満ちていた事だけは、理解できた。
━━あのおっさん、狂っているぜ・・・・・
そう思うと、本来なら引き受けたくない仕事だが、
奴隷兵に、断る事は出来ない。
それに、今回は、裏の事情が絡んでいる為、
どう足掻いても、逃げる事すら出来ない。
傭兵たちと一緒に話を聞いていたバートランドは、
話が終わると、昨日に続き、『闇』のメンバーの元へ向かった。
落ち合うのは、いつもの場所。
地下を進み、ジェイクと落ち合う。
「旦那、それで、どうでした?」
「傭兵の数は、30。
こちらは、別動隊として動いて構わない」
「それは、ありがてぇ。
知らねえ奴と組むなんて、危なくて仕方ねぇ」
「確かに、そうですが、今回集められたのは、奴隷兵ですよ」
『闇』のリーダージェイクは、奴隷兵と聞き、眉を顰めた。
「奴隷兵とは・・・・・・
旦那の主は、本気みたいですね」
「そうですね・・・・・・ですが、やり過ぎているようですから、そろそろ・・・・・」
バートランドは、乗り気ではない顔をする。
「ガキ相手に、騒ぎ過ぎたって事ですか?」
「ええ、冒険者ギルドも動き出しておりますし・・・・・」
「なら、今回でケリがつかなかったら、俺達は、下ろさせてもらいますよ」
「その方が、良いでしょう。
当分は、大人しくしていた方が、身の為です」
「そうさせてもらいますよ」
「では、参りましょう」
バートランドは、話を終えると、ジェイクと共にアジトを出た。
途中からバートランドは、屋敷に向かって歩き出し、
ジェイクは、仲間を引き連れて、ジョエルの屋敷へと向かった。
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