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天魔の子(仮)  作者: タロさ
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隠れ家 草原での戦い

草原で待つエンデの元に、馬に乗った兵士達が迫る。

兵士達も、エンデに気付き、草原に乗り込む。


エンデの正面に陣取り、馬から降りた兵士達。

その中の1人、先程、エンデに疑いをかけた兵長ゲルドが、一歩前に出た。


「エンデ ヴァイス、強盗の罪で逮捕する」


剣先を向けて、エンデに言い放った。


「あれ、僕の物じゃないけど・・・・・」


「恍けるな!

 貴様の乗っていた馬車の荷台から見つかったのだ!

 言い逃れが出来ると思うな!」


ゲルドの命令に従い、兵士達が、一斉に襲い掛かる。

しかし、エンデは、収納ボックスから剣を取り出すと、

兵士の攻撃を躱しながら、次々に切り倒す。


叫び声を上げ、次々に草原に倒れる兵士達の姿に、怯むゲルド。


「たかが、ガキ1人に・・・・・・」


言葉では、そう言っているが、顔色は悪く、エンデに怯えていた。

全ての兵士が倒され、残るは、ゲルドただ1人。


ゆっくりとゲルドに近づくエンデ。


「く、来るな!

 来るんじゃない!」


後退るゲルドは、逃走の為の馬を探すが、

馬達は、何処かに逃げてしまっていた。


「う、馬が・・・・・」


間合いを詰めるエンデ。


「本当の事を聞かせてよ。

 あれ、僕の馬車に無かったよね?」


「だ、黙れ!」


震えながらも剣を構え、襲い掛かる。

しかし、エンデに躱されると、勢い余って草に足を取られ、草原に倒れるゲルド。


慌てて振り向き、起き上がろうとするが、目の前には、エンデが立っていた。


「もう一度、聞くよ。

 嘘は、駄目だから・・・・・」


『あれは、僕の馬車にあったの?』そう問いかけるエンデの表情は、

子供とは、思えなかった。


「ヒィィィィ!」


四つん這いのまま、逃走を図るゲルド。

しかし、脹脛(ふくらはぎ)に激痛が走る。


「ギャァァァァァ!」


エンデの剣が、脹脛を突き刺し、右足を地面に縫い付けていた。


「ヒィィィィ!

 たす、助けて・・・・・」


エンデは、刺さっていた剣を抜き、今度は、左足の脹脛に突き刺す。


「ギャァァァァァ!」


痛みに転げまわろうとしたが、

地面に縫い付けられた左足のせいで、その場でのた打ち回るしかない。


「ねぇ、本当の事聞かせてよ・・・・・

 それから、これ、誰の命令?」


エンデは、そういった後、収納ボックスから、もう一本剣を取り出すと

ゲルドの顔の前に突き刺した。


「気が長い方じゃないから・・・・・・」


顔をぐしゃぐしゃに濡らしたゲルド。


「わかった、話す。

 話すから・・・・・」


ゲルドは、直接の指示を受けた訳では無かった。

ただ、『ヴァイス家の話は聞くな!

 奴らをこの街で孤立させ、追い詰めろ』と命令されていただけだった。


しかし、ゲルドは、今回の一件を利用し、功績を上げれば、昇給と報奨がもらえると思い、

勝手に、エンデを犯罪者に仕立て上げようとしたのだ。


「ふ~ん。

 それで、ここまで、殺しに来たんだ」


「違う!

 殺そうなんて・・・・・」


「でも、兵士達は、襲って来たよ。

 あれ、殺そうとしていたよね」


兵士達も、功績を得る為に、我先にと、エンデに襲い掛かった。

それは、見ていたゲルドにもわかった。


その為、言葉に詰まる。


「・・・・・それは」


「もういいや、面倒臭いから死んでよ」


エンデが、ゲルドに左手を翳した。


「覚悟はいい?」


「ヒィ!」


怯えるゲルド。

しかし、エンデが、魔法を放つことが出来なかった。


馬だ。

馬がエンデを咥え、邪魔をしたのだ。


「なんで、邪魔するの?」


エンデが、馬に問いかけると『ブルゥゥゥ』と鳴き、

馬は、ゲルドを蹴り上げ意識を失わせた。


「え?」


馬は、エンデに『乗せろ!』と言っているかのように嘶く。


━━なんで、僕、馬の言葉がわかるんだろう・・・・・


そう思いながらも、馬の指示に従い、荷台にゲルドを放り込んだ。


エンデが再び御者台に乗ると、馬は勝手に走り出す。

馬の身勝手な行動に、既に諦めているエンデは、手綱さえ、握っていない。


馬の行き先は、王都。

道なりに、のんびりと進む。


すると、逃げだしていた馬達も集まり、エンデの馬車に同行し始めた。

王都の出入口が近づくと、周囲の馬達が、一斉に門に向けて走り出した。


順番を待っていた人達を巻き込み、王都の出入口は、パニックになる。

逃げ惑う人々。


そんな中、馬の集団は、王都の中に向かって走る。

出入口で兵士達を吹き飛ばし、勢いのまま、王都に突撃する。


その隙を縫うように、エンデを乗せた馬車が王都に入った。


『ブヒィィィ!』(どうだ!俺様の作戦は?)


自信満々の馬に、『イラッ』とするエンデだが、

馬のおかげで、無事に王都に入れたので、文句が言えなかった。


その後、エンデの馬車が逃げ切ったのを確認した馬達は、市場のニンジンを盗み、

再び、王都の外に、駆け出して行った。


ジョエルの屋敷に向かうエンデ。


貴族街に入ると、馬が手綱を咥え、エンデに『案内しろ』と言わんばかりに視線を向ける。


「わかったよ・・・・・そこ右」


面倒臭そうに、馬に指示を出すエンデ。

エンデを睨みながら、仕方なく指示に従う馬。


その光景は、屋敷に到着するまで続いた。

ジョエルの屋敷に到着すると、馬は、そのまま庭まで進み、嘶く。


その声に驚き、外に飛び出して来たメイド達。

御者台にいるエンデを見つける。


「エンデ様!!!」


「うん、ただいま」


エンデがメイド達に挨拶をすると、

その後ろに隠れていたエヴリンが、怒りの表情で近づいてくる。


「エンデ、遅かったじゃない・・・・・」


「お姉ちゃん・・・・・ただいま?」


「『ただいま』じゃないわよ!

 ちょっとこっちに来なさい!」


エンデは、エヴリンに連行された。

その姿を、憐れみの表情で見送るメイド達と、何故か嬉しそうな顔の馬。


その後、メイド達は、荷台の荷物を屋敷に運び込み、捕えたゲルドは、地下牢に放り込んだ。

荷車を外された馬は、何故か馬房に入ろうとはせず、庭で休憩をし、そのまま居座った。





屋敷に連れていかれたエンデは、事の次第をエヴリンに話した。


「そう、それで、メイドからも聞いたけど、あの男も共犯なのね」


「うん、仲間の兵士は、やっつけたけど、あいつは、馬が持って帰れって、五月蠅かったんだ」


「馬?」


「馬・・・・・」


「エンデ・・・・・どこか、打ったの?」


「打ってないよ。

 あの馬、普通じゃないんだ。

 僕、あの馬の話していることわかるし、王都に入れたのも、あの馬のおかげなんだ」


エヴリンは、目を丸くして答える。


「そんなこと出来るのは、伝説の『キングホース』だけよ」


「なに、その偉そうな馬?

 あの駄馬は、そんなんじゃないよ。

 それに、伝説の存在なんて、いる訳無いよ」


ケラケラと笑うエンデに、エヴリンは真顔で返す。


「伝説の存在なら、いるわよ」


「何処に?」


「ここ」


エヴリンは、エンデに向かって指を差した。


「あ・・・・・」


「貴方、自分の事、棚に上げて、『キングホース』がいないなんて、

 よくも言えたわね」


「・・・・・そうでした」


すっかり、自分の事を忘れていたエンデだった。



不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。

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