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天魔の子(仮)  作者: タロさ
32/236

王都 とある貴族の謀略

ロナウ達が収監されて30日が経った。

今日は、鉱山へ護送される日。


護送車に乗っているのは、ロナウとその仲間達。

彼らは、ロナウと違い、1年間の鉱山労働で済んでいた。


だが、ロナウの仲間も1人を除いては、貴族の息子達。

その日、護送馬車の兵士達に金を渡し、良からぬ事を企む者がいた。

男爵家、当主【ビスド ドレイド】。


彼は、ロナウの仲間だったワグナ ドレイドの父である。

あの一件で、子爵への昇級話が流れ、

財産の大半も没収された。


それに、1人息子が捕えられてしまった事により、跡取りもいなくなっていた。


「何故、この儂が・・・・・このままでは、腹の虫が治まらん」


今回の一件で、悪さをして捕まったのは、ロナウ達。

それは、当然の事なのだが、ビスドは、この裁きに納得していない。


『貴族が、平民を好きに扱って何が悪い?』


その思いが強く、証人として立ち会ったエブリン達の行動が理解出来ない。


「わざわざ、これくらいの事を大事(おおごと)にしおって・・・・・」


その思いから、エヴリン達を恨み、仕返しを目論む。

同時に、盗賊の仕業に見せかけ、息子の救出も計画していた。




そして、決行日。


王都を出発していた護送馬車が、山道に差し掛かる。

斥侯に出ていた男が、合図を送る。


合図の方法は、召還した鳥。

片足に、赤い紐を括り付け、仲間のもとに送った。


山中の洞くつで、合図を待つビスドに雇われた者達。

そこに、斥侯から送られた鳥が戻って来た。


「赤か・・・・・予定通りだな」


【デイミアン】は、紐の色を確認した後、鳥を解き放つ。

すると、召還された鳥の姿が消えた。


「おい、お前ら、計画は順調だ。

 予定通りに、馬車は、ここを通る。

 いいか、失敗するんじゃねえぞ!」


「「「おう!!!」」」


デイミアンと手下、その数15名。

護送馬車を守る兵士は8名。

そのうち3名は、ビスドから賄賂を受け取り、この計画を知っている者。


何も知らない兵士5名では、相手になる筈も無い。

それに、デイミアン達は、名目上だけの『冒険者』。

実際は、金の為なら、誘拐だろうと、殺人だろうと、

なんでも引き受ける『裏ギルド』のメンバー。

それなりの場数を踏んだ者達だ。


そんな者達の前を、護送馬車が通りかかる。

すると、タイミングよく馬車が止まった。


「どうした?」


何も知らない兵士が、御者に声をかける。


「へぇ、今、車輪の方から変な音がしたもんで・・・・・」


「音だと・・・・・私には、何も聞こえなかったが・・・・・

 まぁいい、早く確認を済ませろ」


「へい、承知致しました」


御者は馬車から降り、後部の車輪へと向かう。


これが、合図だった。

一斉に飛び出し、デイミアンの仲間達は、兵士に襲い掛かる。


「全員抜剣!」


護送の隊長である兵士が叫ぶ。

しかし、同時に隊長の胸には、剣が突き刺さった。


「うぐっ!

 貴様・・・・・・・」


「悪いね、隊長さん・・・・・」


金で雇われていた兵士の仕業だ。

裏切り者の兵士が、隊長から剣を抜き、盗賊達に向かって剣を振る。


「1人、片付いたぜ!」


自信満々で伝えた瞬間、その兵士も、近づいて来たデイミアンの手下によって斬られた。


「な、なんで・・・・・俺達、仲間・・・・・」


「悪いな、これは盗賊の仕業だ。

 お前達が生きていては、面倒でな」


裏切り、金を受け取っていた兵士達も、デイミアンの手下によって次々に殺された。

勿論、御者も例外ではない。

仲間以外は、信用しないデイミアン。


兵士達を全員殺したことを確認し終えると、馬車の後ろに回り込み、鍵を開ける。


「おい、ワグナ ドレイドってのは、どいつだ?

 親父さんが、待っているんだ早く答えろ!」


「父上が!?」


「ほぅ、お前か?

 さっさと行くぞ、ついて来い」


デイミアンの指示によって、馬車を降りたワグナ。


「この馬を使え」


与えられた馬に跨り、手綱を握る。

その時だった。

ワグナを見つめる仲間達の姿が、目に映る。


「待ってくれ、あいつ等は、どうなるんだ?」


デイミアンに尋ねたワグナ。


「知らん、俺達が頼まれたのは、お前の救出だけだ。

 それに、余分な金は貰っていねぇ」


この場で放り出されたら、魔獣や魔物に襲われる可能性が高い。

その為、、他の者達は、ワグナに縋り寄った。


視界に入るロナウを気遣う者はいない。


「ワグナ様、お願いです。

 私を連れて行ってください」


「ワグナ様、何でも仰って下さい。

 これからは、貴方様にお仕え致します」


次々に、掌を返し、ワグナに媚びを売り始める仲間達。


「お、おい!

 お前達・・・・・・」


呼びかけるロナウの声に、誰も耳を貸さなかった。


彼らは、ロナウについて来たのではなく、

地位と金について来ていた事を、初めて理解した。


しかし、生き残るためには、仲間達と同じ様に振舞うしかない。

今は、それが最良の手段だと、わかっている。


「わ、ワグナ・・・・・。

 私も、助けてくれないか・・・・・」


今まで散々、好き放題に命令していたロナウが、命令ではなく、懇願している。

そんな、ロナウの姿に、思わず笑みが零れる。


最高の瞬間だった。

既に、ロナウが貴族の地位を失った事は知っている。

だからこそ、改めて聞く。


「ロナウ、貴様は、平民だったな」


「・・・・・・はい」


「ならば、それらしく、貴族である私に、頼む姿というものが、あるのではないか?」


遠まわしに『土下座しろ!』そう伝えているのだ。

拳を握りしめ、地面に膝をつくロナウ。


「ワ、ワグナ・・・・様、どうか、お助け・・・・・下さい」


声を絞り出し、頭を下げるロナウ。

その頭を踏みつけるワグナ。


「貴様には、今まで散々やられて来た・・・・・なので、助ける義理は無いが、

 せめてもの情けで助けてやる。

 その代わり、下僕として、この僕に仕えよ」


「・・・・・下僕だと?」


思わず、声に出した。

聞き逃さなかったワグナ。

ロナウを睨みつける。


「なんだ、その口の利き方は!?

 嫌なら、この場に置いて行くぞ!」


高圧的な態度を取り、自身との格の差を、見せつけるワグナ。


悔しさを滲ませながらも、ワグナの提案に乗るしかない。


「下僕として、お仕え致します」


「いい心がけだ。

 ついて来い」


ロナウの態度に、満足したワグナは、デイミアンに指示された馬に乗り、

その場から立ち去る。


暫くデイミアン達に護衛されながら、来た道を引き返していると、

途中から道を外れ、再び、山の中に入る。


そして、その先には、2台の馬車が待機していた。

デイミアンが、大声で叫ぶ。


「旦那!

 約束通り、連れて来たぜ」


すると、馬車の中から降りてくる男。

ワグナ ドレイドの父、ビスド ドレイドだ。


「息子よ!

 元気だったか!?」


「父上!」


ワグナは、近づき、膝をつく。


「父上、この度の事、感謝致します」


「気にするな、私は、お前の無事な顔が見れただけで満足だ」


肩を叩き、息子を労う姿。

そして、息子であるワグナの後ろに集まり、並ぶ者達。


一斉に膝をつく。


「ビスド様、この度は、私共もお救い下さり、感謝申し上げます。

 今後は、ご子息のお力になれるように、精進して参ります」


「そうか、頼んだぞ」


「「「はっ」」」


評価、有難う御座います。


不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。

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