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天魔の子(仮)  作者: タロさ
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王都 連行

不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。

ロナウの仲間達は、逃げ道を塞ぐように、エンデ達を取り囲む。


「お前ら、絶対に逃がすなよ」


ロナウの言葉に、仲間達は笑顔で頷く。

それぞれが、腰に携帯していた武器を手に持ち、距離を詰める。


周囲には、野次馬が集まっているが、誰も止めようとはしない。

だが、偶然、巡回をしていた兵士達が通りがかり、声を掛けて来た。


「お前達、そこで、何をやっているんだ!」


「これで、なんとかなりそうね」


そう思ったエブリンだったが、ロナウの顔を見て、声を掛けて来た兵士が態度を変えた。


「ロナウ様では、ありませんか。

 いったいどうなさったのですか?」


「なんだ、【ユーゴ】では、ないか」


兵士は、ロナウの知り合いだっいたらしく、雲行きが怪しくなり始めた。

ユーゴは、ロナウから事情を聞く。


「こいつらが、俺の仲間に手を上げてな、それで、問い詰めていたところだ」


「わかりました。

 では、後の事は、お任せください」


ロナウは、エブリンを見て、笑みを浮かべる。


「俺に逆らった事を、牢獄の中で、精々、後悔するんだな」


それだけ伝えると、踵を返し、その場から離れようと歩き出す。

しかし・・・・・・


エンデが、立ち塞がる。


「ジャステーンに謝っていないのに、何処に行こうとしているの?」


「貴様!」


エンデの言葉に反応したのは、ロナウではなく、兵士のユーゴだった。

ユーゴは、エンデとロナウの前に立ち、エンデと向き合う。


「ロナウ様に、逆らうとは・・・・・・

 貴様は、何を考えているんだ!」


ユーゴは、エンデを怒鳴りつけ、ロナウの話だけを聞き、

『捕えろ!』と他の兵士達に、命令を出した。


兵士達も、ロナウの事を知っているようで、

ロナウの仲間達と一緒に、エンデ達を取り囲んだ。


完全に兵士達も、ロナウの言いなりだ。


「これ、最悪じゃない・・・・・」


「うん、そうだね」


エヴリンとエンデは、顔を見合わせて面倒臭そうな顔をする。

その時、ずっと後ろに控えていたメイドのアラーナが、前に進み出た。


「貴方達は、この方達が誰か、わかっているのですか!?」


「は?

 そんな見たこともないガキの事など、知るわけが無いだろ!

 それに、メイドの分際で割り込むとは、どういう了見だ!?」


アラーナは、呆れた表情を見せた後、

兵士達の、余りにも身勝手な行動に溜息が漏れた。


「貴方達・・・・・・

 私は、確かにお嬢様専属のメイドです。

 ですが、王都に出向くことが決まった時、

 旦那様から、私の判断で、動いてもいいと許可を頂いております。

 それに、『お嬢様を守れ』

 と厳命されておりますので・・・・・」


アラーナは、そう言い切ると、スカートの下に隠していた短剣を取り出した。


「お嬢様は、必ず守り抜きます。

 たとえ、貴方達と刺し違えたとしても・・・・・」


兵士達を睨みつける。

この時、初めて兵士達の間に、動揺が見えた。


「おい、あの言い方からすると・・・・・」


「ああ、もしかして・・・・・」


当初、何処かの金持ち程度にしか思っていなかったエヴリンが、

貴族ではないかと思い始め、兵士達の戦意が一気に萎えた。

それを見たロナウの仲間達にも、動揺が見え隠れする。


「もしかして、俺達・・・・・」


その態度に、怒りの表情を見せるロナウ。


「相手が貴族だから、どうだと言うのだ。

 お前達は、私が誰だか、忘れたのか!」


その言葉に便乗して、悠然と語るユーゴ。


「この方はな、かのオーディン子爵家のご子息様だ。

 それに、次期当主を約束されたお方なんだぞ!」


ロナウが子爵家の人間だと聞いても、誰にも驚いた様子が無い。

どうやら、周りの野次馬も含め、誰もが知っていたらしい・・・・・


「お前達は、この俺に逆らった事を後悔するんだな」


そう言い放つロナウ。

エヴリンは、アラーナと同じ様に、溜息を吐いた。


「あんたねぇ、子爵家は、この世界に1件だけじゃないんだから・・・・・」


「そんな事、分かっている。

 だから、どうしたというのだ!」


ロナウは、強気な態度を崩さない。

エヴリンは、仕方なく名乗る事にした。


「私は、エヴリン ヴァイス。

 こっちが、弟のエンデ ヴァイス。

 父は、あなたの家と同じ、子爵のマリオン ヴァイスよ」


「子爵だと・・・・・」


「ええ、そうよ。

 それで、私達の事を知っても尚、武器を、こちらに向けるのですか?」


エブリンは、そう言い放つと、取り囲む兵士達を睨む。

『はっ』と我に返った兵士達。


「失礼いたしました!!!」


慌てて、武器を手放す。

それは、ロナウの仲間も一緒だった。


「お前が、子爵だと・・・・・

 そんなの嘘だ!

 貴様、平民が貴族を名乗れば、どういう事になるかわかっているのか!?」


未だに、事実を認めないロナウ。

そして、思い出したように告げた。


「そうだ、貴様など王都のパーティで見たこと無い。

 絶対に貴族でないぞ!

 お前達、騙されるな!

 こいつらは、偽物だ!」


大声で、騒ぎ立てるロナウ。

だが、兵士や、ロナウの仲間達は、どうしたら良いのかわからず、

他の者達の出方を待った。


その姿に苛立ち、痺れを切らしたロナウは、怒鳴りつけた。


「兵士ども、さっさと捕えろ!

 父に言いつけるぞ!」


「あっ、はい・・・・・た、只今!」


慌てて武器を構えるが、足取りは重く、何処かオドオドしている。

そこに、エヴリンが追い打ちをかけるような言葉を吐く。


「私は、子爵家の人間だと伝えましたよ。

 それでも、こちらの言い分も聞かず、私達を捕えるのですね」


その言葉に、動揺する兵士達。

再び、動きが止まった。

だが、急かすように、ロナウが命令をする。


「早く捕らえろ!

 本当に、父に言いつけるぞ!」


兵士達は、顔を見合わせた後、仕方なくエヴリン達に迫る。


そこに、立ち塞がるエンデ。

その表情は、穏やかではない。


しかし、エヴリンがエンデを止める。


「エンデ、私に考えがあるから、大人しく捕まりましょ」


一瞬、驚いた表情を見せたが、直ぐに、いつものエンデに戻った。


「姉上が、そう言うなら仕方無い・・・・」


諦めたエンデを兵士達が取り囲んだ。


「大人しくしていろ・・・・・」


兵士達は、エンデに続き、エヴリン、ヘンリエッタ、ジャスティーン、

それと、お付きのメイド達も捕えた。


その様子に、ご満悦のロナウ。


「残念だな、俺の言う事を聞いていれば、こんなことにならなかったのだ」


『さっさと連れて行け!』と兵士達に告げるロナウ。

だが、捕えた兵士達の顔色は良くない。


エブリンやエンデが、本当に子爵家の縁者だったら、

このままでは終わらない事は、わかっている。

エヴリン達を捕えた兵士達も、ただでは済まない。


なので、最低限の保険として、縛っていたロープも緩めている。

その事に気付いているエヴリン達。


わかっているから、拘束されているにも拘らず、

普段と同じように振舞うエヴリン。

そして、近くを歩くヘンリエッタ、ジャスティーンと会話を楽しんでいる。


理解出来ていないエンデだけが、心配そうに見つめている。

目が合ったエブリン。


「大丈夫よ、直ぐに釈放されるから。

 まぁ、そうならなかった時は、貴方に頼るから、お願いね」


「うん、わかった。

 みんなの事は、絶対に守るから」


その言葉に、笑顔で応える。


「頼んだわよ」


エンデが頷くと、エヴリンは、ヘンリエッタ達との会話に戻って行った。



暫く歩かされると、高い壁に囲まれた建物が見えてくる。


「申し訳ないが、少し静かにしてくれるか?」


「えっ!

 何?」


「もうすぐ、着くんだ。

 だから、静かにして欲しいのだ」


高い壁に囲まれているのは、兵舎。

街を巡回する兵士の他、常備、数百人の兵士達が、寝泊まりしている。


そして、捕えられた者達も、ここに連れて来られる。

入り口となる門には、4人の兵士。


「ユーゴ様、お疲れ様です」


「ああ、この者達を地下牢へ・・・・・」


「畏まりました」


その場で、エンデ達を引き渡された門兵。


「ほら、さっさと歩け!」


拘束しているロープを引き、強引に、連れて行こうとした。

その様子に、何かを伝えようとしたユーゴだったが、

この場で、騒ぎを起こされたら困るので、急いでその場から立ち去った。



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