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天魔の子(仮)  作者: タロさ
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アジト2

エンデが向かったのは、たった1つしかない出入口。

逃げる者の大半が、やはり、そこに向かった。

しかし、空を飛ぶエンデの方が早く、あっという間に、

盗賊達を追い越し、出入口を塞ぐ。


目の前に現れたエンデに、盗賊達の足が止まる。


「くっ、畜生ぅぅぅぅぅぅ!」


判断を誤った3人の盗賊が、形振り構わずエンデに襲い掛かった。

そんな男達にむかって、エンデは、言葉を紡ぐ。


「大地の礎たる者達よ、我が命に従い、かの者達を射抜け」


何処にでもある小石。

エンデの魔力を受けて、宙に浮く。


それらが、尋常とは思えない速さで、

エンデに襲い掛かろうとした者達に向かって飛んだ。


石の弾丸。


丸い石は衝撃を与え、尖った石は盗賊達を貫いた。


辺りには、石が衝突する音とだけが響き、

盗賊達は、悲鳴を上げる事も出来ず、その場に倒れた。


一瞬の出来事。


足を止め、躊躇した者達は、生き残っている。


「まだ、戦う?」


年相応の子供の声。

先程の声の主とは、別人に思えた。


盗賊達は、その場で崩れ落ち、項垂れる。


「勝てっこねぇ・・・・・」


「ああ・・・・・」


エンデは、唯一の出入口を、魔力を使って塞ぐ。

そして、落ちていた木の枝を拾うと、盗賊達を囲うように、線を引いた。


「この線から、外に出ないでね。

 もし、一歩でも出たら・・・・・」


盗賊達は、首が捥げるかと思うくらい必死に、頷く。


「じゃあ行くね。

 約束、守ってよ」


子供らしい言葉を残して、再び空へと上がる。

そして、次なる獲物を目指して飛んで行った。


囲われた線の中にいる盗賊達は、ここでようやく気が抜けた。


その中の誰かが、ポツリと呟く。


「俺達、助かったのか?・・・・・」


その言葉をきっかけに、会話が始まる。


「・・・・・わからん。

 相手は、悪魔だ」


「あれ、本当に悪魔なのか?」


「知らねぇよ・・・・・でも、あんな羽根、見たことねぇ・・・・・」


「・・・・・そうだな」


少しの沈黙の後、1人が口を開く。


「俺さ、子供のころ、母ちゃんから聞いた話によ

 悪魔が出てくる話が、あったんだわ・・・・・

 その悪魔ってのは、こう、角が生えててさ、背中に4枚の羽根を持ってんだわ」


身振り手振りを加えながら、皆に伝えた。


「でも、あいつは6枚だったよな・・・・・」


「そうだな、それに一番下は、白い羽根だったぜ」


「・・・・・うん」


「なぁ、俺達、これから、どうなるんだろう・・・・」


男達は、見えない先の事を考えながら、空を見上げた。




その頃、別の方向に、逃げだした男達を探すエンデ。


周囲を土の壁に、覆われているから逃げ場はない。

そう思っていたのだが、エンデの目に、面白い光景が飛び込んできた。



何処かからか算段したロープを、崖の上の木に上手く引っ掛け、

そのロープを使って、脱出を試みている者達の姿。


数本のロープが、上手く木に絡みつくと、

盗賊達は、壁を登り始める、

そのロープの丁度、半分まで登ったところで、エンデに見つかったのだ。


エンデは、崖の上に着地すると、目の前にある木々に絡みついたロープを

持っていた小刀で、切った。


「うわぁぁぁぁぁ!」


ロープを切る度に、聞こえてくる悲鳴。

途中まで登っていた者達に、訪れた恐怖の瞬間。


先に落とされた者は、地面に衝突し、呻き声を上げていた。

『次は、俺の番かも・・・・・』

そう思っていた時、不自然にロープが揺れだした。


━━まずい、まずい、まずい・・・・・


額から、嫌な汗が噴き出す。

男は、急いで引き返そうとした。

だが・・・・・


突然、体が軽くなる。


気付いた時には、男の体は、宙に浮いていた。


「え!?」


時すでに遅し・・・・・


宙に投げ出された男は、重力に従い、

地表まで、真っ逆さまに落ちてゆく。


結局、前者と同じように、男も地面に衝突し、

呻き声を上げる事となった。


全てのロープを切り終えると、エンデは降りて来た。

足元には、呻き声を上げている者達。


他の盗賊達は、自然と後退り、エンデと距離を取る。


「降参するなら、戦わないよ」


エンデのその言葉に、お互いの顔を見合わせた後、

盗賊達は、意思を示した。


「わかった、降参する。

 だから、命だけは・・・・・」


エンデは、盗賊達の降伏宣言を受け入れ、次の場所に向かった。

やはり、この砦のボス、セルグードと、息子のセルゲルがいなくなったことが大きく、

2人の部下だった者達は、次々に降伏した。



その後も、エンデは、逃げだした者達を発見し、

降伏させてから、エブリン達のもとに戻る。


「ただいま」


「お帰り、終わったみたいね。

 それで、逃げた人達は?

 もしかして・・・・・全員、殺したの?」


「ううん。

 降参した人達は、生きているよ。

 今、こっちに向かっているよ」


「そう・・・・わかった」


「ところで、その人達は?」


エヴリンやジョエル達の他に、子供を抱いた女性達の姿が見受けられた。


「捕まって、ここでの生活を強要されていた人達よ」


「そうなんだ・・・・・」


母親に抱かれる子供を見て思う。


━━僕も、あんな感じだったのかな・・・・・・


エンデは、夢の中で出会った両親の事を思い出していた。

夢の中でしか、会った事はない。

でも、目の前の親子を見ていると、夢の中の二人を、思い出さずには、いられない。


そして、最後にエドラを思い出した。


いつも明るく、優しかった母。

僕が一番好きだと、抱きしめてくれる母。


みんな、もう、いない・・・・・


思い出してしまうと、勝手に涙がこぼれる。


「エンデ、どうしたの?」


エンデの異変に気が付いたエヴリンが覗き込む。


「ううん、何でもないよ。

 ちょっと思い出しただけ・・・・・」


エンデの悲しい顔。

エヴリンは、そっと抱きしめる。


「大丈夫よ、貴方には、お姉ちゃんがいるんだから

 もう、1人じゃないのよ」


抱きしめる腕に、力を込める。


「ありがと。お姉ちゃん・・・・・」


エンデも、エヴリンを抱きしめた。



暫くそのままでいたが、逃げていた盗賊達が戻って来たので、

2人は離れた。


四方に散っていた盗賊達が、集まったところで、

エヴリンは、全員を連れて王都に行くことを告げる。


それは、『裁きを受けろ』と宣言したようなものだ。


その為、多少の反抗は、覚悟していたが、

横に並ぶエンデのおかげで何事もなく、話は終わった。



いくら降伏したところで、罪が消えることはない。

だから、王都で、裁きを受けてもらう。

それが、貴族としての義務であり、正しい判断だと思った。




王都へ行く為の準備を進めていると、

夫婦と思える2人が、エヴリンに話しかける。


「お嬢様、あの・・・・・お願いがございます」


2人は、地面に膝をつき、頭を下げた。


「俺は盗賊で、沢山の人を殺した。

 だから、大人しく裁きを受ける。

 でも、この子と妻には、関係ない。

 妻は、元々商人の娘で、俺達が襲った馬車に乗っていたんだ」


『だから、頼む』と地に額をつけて懇願した。




ブックマーク登録、有難う御座います。


不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。

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