新たな勇者②
リチャードを倒したホルストたちだが、
『勇者』が現れたことで、また、教会が何か始めたのではないかと考え、
ゴンドリア帝国内のの警備を強化し、何時でも迎え撃てる体制を築き上げた。
それと同時に、アンドリウスに戻っているエンデたちにも、この情報を送り、
情報の共有を図る。
その頃、各大国の教会で認定された勇者たちは、
それぞれにアンドリウス王国を目指していた。
だが、彼らは同志ではなく、ライバル。
もっと悪い言い方をすれば、任務を遂行するのに邪魔な存在。
エンデを倒して報奨金がもらえるのは、1組だけ。
その為、道中でかち合えば、最悪の事態を招く。
その最悪の事態が
アンドリウス王国より、ずっと東の小さな宿場町で起き始めていた。
最初に、この町に到着したのは、スラム出身の『勇者』スラート。
彼らは、早々に宿を決め、酒場へと繰り出していた。
そこで彼らは、耳にする。
「この町に、勇者様が滞在されているんだってよ」
スラートたちの隣の席で、酒を飲んでいる男たちが、そんなことを話し始めた。
━━━俺たちのことが、バレているのか?・・・・・・
疑問に思いつつも、再び、聞き耳を立てた。
話を続ける男たち。
「そうかい、それで何処に泊っているんだ?」
「あそこだよ、あの豪華な宿屋だよ」
「へぇ~、やっぱり勇者様ともなると、金を持っているんだな」
「そりゃ、そうだろ。
なんてったって、勇者様だからよ。
それにな、その勇者様ってぇのが、もの凄ぇ別嬪さんでよ。
驚いたの、なんのって・・・・・」
「おめぇ、見たのか?」
「ああ、見たぜ」
男たちの会話から、他の勇者がこの宿場町に来ていると知ったスラートは、
酒場を後にして、宿屋へと戻った。
宿屋に戻ったスラートは、宿屋の主人に問う。
「この辺りで、一番豪華な宿屋ってどこだ?」
店主は、勇者が泊っていることを知っていた為、笑顔を見せる。
宿場町だが観光する所など無いので、勇者が泊っているというだけで
一大イベントであり、金を儲けるチャンスなのだ。
「あんたも、勇者様を見に行くのかい?」
「ああ、そのつもりだ」
スラートの返事を聞き、店主は、『スッ』と手を差し出す。
━━━金か・・・・・
スラートが金を手渡すと、素直に話し始めた。
「ここを出て右に進んで、4つ目の角に、大きな酒場があるんだ。
そこの角を左に曲がって3つ目の通りの角にあるよ。
大きくて豪華な建物だから、直ぐにわかるよ」
「そうか、わかった」
宿屋を出ると、教えられた場所へと向かうスラート。
当然、仲間たちも同行する。
教えられた場所は、直ぐに分かった。
ただ、勇者を見ようと、大勢の人が集まっており、混雑している。
「頭、どうしますか?」
「・・・・・裏口に回るぞ」
「へい」
スラートが、裏口に回ろうとして角を曲がった時、妙な視線を感じた。
視線を辿って見上げると、
そこには、3階の部屋から見下ろしているルドミラの姿があった。
━━━あれが、勇者だな・・・・・
離れていても、はっきりわかる程の威圧感。
見下した感じで、集まっている民衆と、スラートたちを見ている。
「頭・・・・・」
配下たちも、スラートの視線を辿り、見上げた。
「あれが、勇者ですかい?」
「多分・・・いや、間違いない」
━━━部屋は、わかった・・・・・
もう、ここに用はない・・・・・
スラートは、勇者だと気付かれる前に、配下と共に、その場から去る。
宿に戻ったスラートたちは、早めの食事を摂った後、一部屋に集まった。
スラートが号令を掛ける。
「今晩、仕掛けるぞ」
「へい」
彼らは盗賊。
夜襲など、お手の物。
着々と準備を進め、その時を待つ。
そして深夜・・・・・
スラートたちは、動き出す。
狙いは、『勇者』だ。
寝静まった町の中を、黒装束の男たちが駆ける。
目的の宿屋に到着すると、3方に別れた。
一組は、裏口から忍び込み、1階にいる者たちを始末する。
もう一組は、屋根伝いに2階から忍び込み、そのまま2階にいる者たちを始末する。
そして最後の一組は、同じく2階から遅れて忍び込むのだが、
2階は、素通りして3階を目指す。
その3階を目指す組の中に、スラートの姿があった。
1階と2階を任された配下たちは、音を立てず、心臓を一突きにして、次々と屠る。
騒がれると、後々、面倒な事になるのが分かっているので、
誰一人として、見逃さない。
予定通り事が進み、1階、2階と制圧している頃、
スラートたちは、3階の勇者が泊っている部屋の前に到着した。
後は、この部屋にいる勇者を倒すだけなのだが、スラートは違和感を覚える。
「おい、この階に人はいたか?」
「いえ、誰もおりません」
配下の返事を聞き、スラートは違和感の正体に気付く。
勇者の配下がいないのだ。
今迄、覗いた部屋には、ベッドが2つしか無かった。
ならば、勇者が泊っている部屋にも、ベッドは2つの筈。
勇者が1人で行動しているとは思えない。
また、連れが1人しかいないなどという事も考えにくい。
ならば・・・・・
考えられるのは・・・・・
スラートは、配下に命令する。
「気を引き締めろ。
勇者たちは、この部屋に集まっているぞ」
警戒を強め、静かに扉を開ける。
「待っていたぞ、盗賊ども!」
開け放つと同時に、ルドミラの声が響く。
観念したかのように、部屋の中に入るスラート。
「チッ、バレていたか・・・・・」
両手を上げ、降参したかのようなポーズをとった。
そんな態度をとっても、ルドミラが許す筈が無い。
「盗賊風情が・・・・・
この私の部屋に押し入ったこと、後悔するがよい!」
魔法で明るくした部屋の中で、剣を抜いた。
不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。




