ゴンドリア帝国での出来事
未だ困惑しているダバン。
悪戯っ子のような顔をしてエンデがダバンに近づく。
「なぁ、ダバン。
そろそろ年貢の納め時じゃない?」
「はっ?
なっ!?
主!!!」
エンデの予想だにしなかった言葉に、ダバンは正気に戻る。
一呼吸置く。
「サーシャ姫。
もう少し待ってくれ」
「えっ?」
真剣な眼差しで、サーシャを見つめるダバン。
ダバンも謁見の間で出会った時から、その様な予感はしていた。
━━━この女は、真剣だ・・・・・
なら、俺も・・・・・・
『キングホース』のダバン。
何度かサーシャと会っている内に、
草原を走り回っていた時には感じたことのない気持ちになっていた。
勿論、その事には気が付いていた。
だが、それが、動物の本能としての『繁殖行為』に基づくものなのか
それとも、人族が言うところの『恋』や『愛』というものなのかはわからない。
しかし、彼女の気持ちは、『繁殖行為』に基づくものとは何かが違う。
そう思えた。
草原と違う温かさ。
悪い気のしないダバンは、受け入れることにした。
突如現れ、『結婚』を迫るサーシャに驚きはしたものの、
はなから否定する気など、毛頭無い。
だが・・・・・
「今は、やることが多過ぎる。
だから、もう少し時間をくれ」
真剣にサーシャを見つめ返すダバン。
『ぽわぁ~』と瞳を潤ませるサーシャ。
「それって・・・・・
待っていてもよろしいのですね?」
「ああ、必ず、王都に戻る」
周囲の仲間たちが見守る中、ダバンが了承したことに拍手が起こった。
次々と駆け寄る仲間たち。
口々に『おめでとう』とか『浮気しないように見張ってあげる』などど声を掛けられるが
1人、浮かない顔をしている男がいた。
グラウニー マルコール。
ゴンドリア帝国に到着するや否や、直ぐに本国に向けて手紙を送ったのだが・・・・・
『はぁ~』とため息を吐くと、ダバンとサーシャのもとに歩み寄る。
「姫様、1つ、お伺いさせて頂いても宜しいですか?」
「グラウニー、どうかしたのかしら?」
現在、ダバンに受け入れてもらえたことで、頭の中は『お花畑』。
『フフフ・・・・』と笑い、笑みを浮かべている。
「幸せそうなところ、誠に申し訳ないのですが、
ご婚礼となると、勝手に決めてしまうわけには・・・・・
この事は、陛下にどのように、ご報告をなさるのですか?」
「えっ!?
そんなの簡単よ。
『旦那様と結婚します!』って伝えるだけよ」
「・・・・・」
「駄目なの?」
「・・・・・ええ」
「なんで・・・・・」
「・・・・・」
「どうして?」
「貴方様は、仮にもアンドリウス王国の姫君であらせられます。
突然『婚約』、まして『結婚』など許される筈がありません」
「グラウニーは、この結婚に反対なの?」
「反対などでは・・・・・」
「なら、何とかしなさい!」
姫君としての本領発揮、無茶ぶりである。
自ら振った話題が、ブーメランのように帰って来たグラウニーは、意識を失いそうになる。
ふらつくグラウニー。
優しく体を気遣うサーシャ。
「グラウニー、体調が悪いなら、横にならせてもらったら?」
『一体、誰のせいで・・・』と口にしかけたが、『グッ』と堪えて言葉を飲み込んだ。
そして・・・・・
「そうですね、そうさせて頂きます」
グラウニーは、そう返した後、兵士に連れられ、謁見の間から退出した。
皆に見送られ、グラウニーが姿を消した後、エブリンが疑問を投げかける。
「ところで、叔父様がなんでここにいたのかしら?」
「ああ、その事なら、儂から話そう」
サンボームは、何故、グラウニーがここにいたのかを説明し始める。
それは、以前エンデが渡した手紙に理由があった。
アンドリウス王国の国王、ゴーレン アンドリウスは
危機的状況にあるゴンドリア帝国に、手を差し伸べたのだ。
内容はこうである。
相互の不可侵条約を締結し、今後は両国発展の為に助け合う事。
その為の第一段として、アンドリウス王国からの食物提供。
対価は、放置している鉄を使った武器。
次に、今回の争いで、家族を失った子供たちの保護。
(国所有の孤児院の設立)
手始めとなる食物提供、それと子供たちを浮浪児にしない為の提案。
ゴンドリアにとって悪い話ではない。
エンデ1人に、壊滅状態まで持ち込まれたゴンドリア帝国に、拒否する理由は見つからない。
サンボームは直ぐに使者を送り、不可侵条約の締結に向けて動き出した。
そこからは、早かった。
不可侵条約を結び、アンドリウス王国から物資が届くと、
王都の国民への配給が開始された。
同時に、家族を失った子供たちは、国王の名の元に建設され始めた、保護施設に集めらた。
こうして、第一段がうまく事を為したので、
更なる提案と、今後の話し合いの為に、
グラウニーが、サーシャと一緒にこの地を訪れた所だったのだ。
そして、現在に至る。
話を聞き終えると『いい事だね』と満面の笑みで答えたエンデに
サンボームも、言葉を返した。
「ああ、そうだな。
これからも、良き隣人でありたいと儂も願っておる」
教会とグルになり、この国の乗っ取りを考えていた輩はもういない。
やっと、肩の荷を下ろすことが出来ると感じたサンボーム ゴンドリアだった。
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