ジョエルの提案
マリオンとエンデが、そろそろ他の場所への挨拶に向かおうと思い。
ジョエルに断りを入れる。
しかし、その挨拶をジョエルが遮った。
「マリオン様、少しご相談といいますか、お願いがございまして・・・・・」
「相談ですか?
この場では、話しにくいこともあるでしょう。
後日という事で、宜しいかな?」
ジョエルにしてみれば、今は、その言葉だけで十分だった。
「はい、有難う御座います。
では、後ほど・・・・」
ジョエルは、マリオンに頭を下げる。
2人の娘も、内容を知っているらしく、ジョエルの後ろで頭を下げた。
パーティから5日後、屋敷にジョエルと娘二人が、マリオンと面会を果たしていた。
当然、その場にエンデが、呼ばれることはない。
しかし、自室で勉強をしているエンデに、声がかかる。
入って来たのは、お抱えのメイドのエリアルだ。
「エンデ様、旦那様がお呼びです」
「わかった、すぐ行くよ」
エンデは、エリアルと共に、マリオンの待つ、応接室に向かった。
部屋の中には、ジョエル、ヘンリエッタ、ジャスティーンのパーティーで出会った3人の他に
もう一人、女性が座っていた。
エンデに気付き、全員が立ち上がる。
「エンデ様、ご無沙汰しております。
ご挨拶が遅れましたが、こちらは、妻のリオノーラです」
ジョエルに続き、リオノーラが挨拶を始めた。
「初めまして、お会いできて光栄ですわ。
ご紹介にあずかりましたリオノーラで、御座います」
凛とした出で立ちの、リオノーラ。
何故、こんなぽっちゃりとした男と結婚しているのかが不思議に思える程だった。
そんなことを考えていると、マリオンから声がかかる。
「エンデ・・・・・」
「父上、失礼いたしました」
エンデは、気を引き締める。
「大変失礼を。
私は、 子爵家長男のエンデ ヴァイスです」
差し障りのない挨拶を終え、マリオンに顔を向ける。
「それで、父上、ここに私が呼ばれた理由ですが・・・・・」
「立ったままでは、なんだから、取り敢えずは、座ろうか」
全員が座ると、マリオン付きのメイドが、エンデの前にお茶を置く。
エリアルは、エンデの後ろに控えている。
「実はだな、先ほどジョエル殿から提案を受けたのだ」
それは、思いもしない内容だった。
「ジョエル殿のご息女が、この度、王都の学校に通うことになったのだが、
その学校に、お前も一緒に行かないかという事だ」
「学校・・・・・ですか・・・・・」
ジョエルは、二人の娘からの了承を得ている。
ジョエルの思惑・・・・・それは、娘とエンデを引っ付けること。
一緒に王都の学校に通い、その間のエンデのお世話を2人にやらせて、
仲を取り持とうとしているのだ。
これは、娘達にとっても悪い話ではない。
エンデと結婚すれば、子爵家の妻の座が得られる。
それは、願ってもないこと。
また、ジョエルとしては、子爵家と縁を持てば、何かと煩い下級貴族を牽制できる。
そうすれば、今まで以上に、仕事がやり易くなるのだ。
親子の利害は、一致している。
この世界は、一夫多妻制。
なので、選ばれるのは、1人だけとは限らない。
その為、娘達は、一緒にエンデのもとへ、嫁ぐことを願っていた。
ジョエルは、話を続ける。
「エンデ様のご住居は、こちらで準備しているお屋敷に住んでいただけますので、
何のご心配も御座いません。
一度、お考え頂けませんでしょうか?」
「わかった。
この事は、息子と考えさせてもらおう」
マリオンは、今後の事も考え、この話に乗り気だ。
その為、ジョエルが帰った後、エヴリンとルーシアを呼び、
いつもの家族会議を行った。
「それで、お父様は、この話を、お受けになるつもりですのね」
「ああ、今後の事を考えると、同世代との関りを持っておくことは、悪い事ではない。
それに、後数年もすれば、婚約の事も考えねばならん」
婚約という言葉に、敏感に反応するルーシアとエヴリン。
「貴方、エンデちゃんに婚約の話は、早すぎます。
絶対に認めません!」
「私もお母様と同意見ですわ」
「まぁ待て。
これは先の話だ」
マリオンは、2人に、そう言い聞かせる。
「ですが・・・・・」
女性陣は、エンデを手放す気はない。
まして、見ず知らずの女性に持っていかれるなて、考えたくもなかった。
その為、婚約の為に王都に行くのは、絶対に反対。
マリオンは、溜息を吐く。
「確かに婚約の話は、今するべきでは、無かったかもしれんな」
あっさりと、引き下がるマリオン。
だが・・・・・
「まぁ、その話は置いておいても、
一度、同世代と共に、勉学に励むのは悪い事では、無いだろ」
マリオンの意見は、尤もだ。
その事には、2人も同意した。
「ならば、後は、エンデの意思次第だな・・・・」
エンデの気持ちは、決まっている。
この屋敷を離れるのは、寂しい。
しかし、覚えることに楽しさを感じていたエンデは、王都行きを決心し、
マリオンの提案を受け入れた。
「そうか、分かってくれたか。
荷物などの準備、メイドの手配、それらの事は、私に任せておけ
エンデは、王都でしっかり学び、戻ってきたら、私の力になってくれ」
「はい!」
自らの意思で、王都行きを決めたエンデ。
話は、このまま終わるかと思えたその時・・・・・・
「私も、王都の学園に行くわ」
スクッと立ち上がり、そう宣言するエヴリン。
「姉上・・・・・」
「エンデは、いくら勉強が出来たって、世間を知らなすぎる。
それに、この子、可愛いから悪い虫が寄り付くかも知れない。
だから、私も王都の学校に通って、エンデを見守ることにするわ」
エヴリンの言葉に『うんうん』と頷き、肯定の姿勢を見せるルーシア。
結果・・・・・・
2対1。
ルーシアとエヴリンの意見が採用された。
この結果は、いつもの事。
結婚当時、『家族の事は、話し合って決めよう』そう言いだしたマリオン。
今は、その言葉を後悔している。
何故ならば、マリオンの意見が通った事など、一度も無いからだ。
エンデが、息子になった事で、同じ数になった。
今後は、対等な数で話し合いに迎えると思っていた。
しかし、今回は、エンデの事、エンデは数に入れない。
今までと変わらない2対1の構図。
エンデとエヴリンの王都行きが決まった。
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