王城への道
その後、エンデの脳裏には、森で暮らす2人の姿が映し出される。
━━━見たことがある・・・・・
エンデは、夢で見た景色に似ていて、懐かしさを覚えたが不安もあった。
━━━夢の通りだとすれば・・・・・
この先、何が起きるかわかっているエンデは、不安に駆られる。
だが、これは過去の出来事。
今更、どうする事も出来ない。
夢で見た通りに事が進む。
逃げ延びることに成功し、廃村で過ごす魔王ベーゼと天使ノワール。
そこにいる2人は、幸せそのもの。
だが、長くは続かなかった。
悪魔たちに居場所が見つかると、徐々に追い詰められてゆく2人。
そして、逃げ場を無くした2人は、最後の時を迎える。
家の中には、逃げ場を失ってしまった魔王ベーゼと天使ノワールの他に
もう1人、ノワールに抱かれた赤子の姿。
現状が理解出来る筈もなく、『キャッキャッ』と声を上げ
ノワールの指を掴んで笑う。
込み合上げてくる感情を『グッ』と堪え、笑顔で語り掛けるノワールだが、
頬を伝う涙は隠せない。
『ずっと一緒にいたかったけど・・・・・ごめんね』
涙を流しながらも、微笑むノワール。
その横で、赤子の頭を撫でるベーゼ。
『我が子よ、どうか強く』
夢で見た通りに事が進む。
でも、これは夢ではない。
過去に起こった出来事。
転生前の自分の両親の最後に、涙が頬を伝う。
「・・・・・エンデ」
ルンがぽそりと呟く。
エンデに反応は無い。
2人が最後の時を迎える瞬間まで、誰の声も届かなかった。
そして、魔王ベーゼと天使ノワールが『リ、インカネーション』を使い
エンデを送り出した所で、映し出されていた映像が消える。
呆然とするエンデ。
━━━やっぱり、あれは事実だったんだ・・・・・
そんな気もしていた。
何度も繰り返された夢。
そのお陰もあって、事実を受け入れることに戸惑いは無い。
だが、ルンは違う。
この時の事を思い出す度に、心が打ちひしがれる。
あの時、助けられなかったことを後悔しているのだ。
彼女は、精霊女王。
中立を貫く者。
その立場上、傷ついた魔王ベーゼを助けることが精一杯だった。
だが、そのせいで2人が死んだと思っている。
俯いたままのルンに、呆然としていた筈のエンデが手を差し伸べた。
「ありがとう。
ルンのお陰で、あの夢の意味が分かったよ」
ルンに笑顔を向けるエンデ。
顔が赤くなったルンは、 そっぽを向きながら答えた。
「そ、そう、それなら良かったわ」
『それで、これからの事なんだけど・・・・・』
ルンの話は、終わっていない。
ルンからの提案は、この先、ルンがエンデたちに同行すること。
「僕は別にいいけど、精霊界の事はいいの?」
「それは大丈夫。
その為にこの『精霊回廊』を創ったんですもの」
『ふふんっ!』と無い胸を見せつけるように踏ん反り返った。
ホルストと合流したエンデたちは、ホルストたちが乗ってきた馬車で王城へと向う。
その道すがら車窓から見えた光景は、以前と違い、
人々の目や街が活気に満ち溢れているように感じた。
「なんか、街が明るくなったみたいだね」
「ええ、これも主様方の功績です」
「僕たちの功績?」
キョトンとするエンデに、含んだような笑みをみせるホルスト。
「先ずは、陛下にお会いください。
それに、見て頂きたいものも御座いますので・・・・・」
「うん・・・・・」
返事を返したエンデだが、未だ、理解が追いつかない。
確かに、エンデたちは、この国の教会とそれに従う貴族たちを始末した。
だが、その時も『悪魔』と揶揄され、恐れられるだけだった筈。
それなのに、『主様方の功績』などと言われても、腑に落ちる筈が無い
1人、考え込むエンデに、ホルストが再び声を掛けた。
「陛下にお会い頂ければ、おわかり頂けるかと存じますので」
念を押すように繰り返すホルストの言葉に『わかった』とエンデは告げた。
暫く進み、王城が見えてくると、生い茂る木々も目につく。
「ねぇ・・・・・」
「・・・・・」
無言を貫き、皆が見えていないふりに皆が励む。
ただ1人(?)エンデの肩に座っていたルンだけが鼻歌を歌い、ご機嫌だ。
エンデたちは王城に到着すると、その意味を理解した。
圧巻の景色。
殺伐としていた王城の壁一面み緑が生い茂っている。
「ここ、ゴンドリア帝国だったわよね・・・・・」
「え、ええ・・・・」
花々が咲き乱れ、木々は豊穣の恵みを実らせていた。
「中へご案内いたします」
立ち尽くしていたエンデたちに声を掛け、城内へと案内するホルスト。
エンデたちは、その声に従い城の中へと入る。
外もそうだったが、中も圧巻の景色。
柱には、蔓が絡みつき、隅々には花が咲き乱れている。
だが、人の通り道を邪魔してはいない。
まるで、計算し尽くされたかのような配置。
「私の城へ、ようこそ!
どう、凄いでしょう!」
子供の様にはしゃぐルンと、先程まで隠れていた筈の精霊たち。
城の中を飛び回る。
『貴方にこれを見せたかったのですよ』
そう言ってルンは、エンデの頬にキスをした。
「ちょっ!」
見てしまったシャーロットが思わず声を漏らすと
ルンは、勝ち誇ったように、再びエンデの頬にキスをする。
「貴方は、何をしているのですか!」
声を上げたシャーロットに、ルンは『ホホホホ・・・・』と笑い。
「貴方は、したこと無かったの?
それなら残念ね、この子の初めては頂いたわ」
勝ち誇るように告げるルン。
だが、空気の読めないエンデが爆弾を落とす。
「僕、キスならしたことあるから、初めてじゃないよ。
ねぇ、お姉ちゃん」
「「は?」」
女性とは思えないほどの低い声がハモる。
視線は、エブリンに釘付けだ。
「シャーロット、ルン、落ち着いて。
エンデと私は姉弟なんだから、普通に、よくある事でしょ」
首を横に振るシャーロット。
「そんなの、聞いたことがありませんわ。
それに兄弟が『キスをする』のであれば、
マリウルとガリウスだって・・・・」
「「は?」」
2人は唖然とする。
「おいおい、待ってくれよ。
俺たちは、兄弟。
男同士だぞ!
そんな気持ち悪い事出来るかよ!」
ガリウスのもっともな言葉に、マリウルも頷くが、
何故か、この城で働いているメイドたちを筆頭に
通りすがった女性陣たちの動きが止まっており、
懐疑的な目を2人に向けていた。
「おいおい・・・・・頼むぜ・・・・・」
精神ダメージを負うガリウスとマリウル。
2人に襲い掛かる疲労感。
「頼むから、先に進んでくれ・・・・・」
「私からも頼む。
そうしてくれると有り難い」
2人の言葉に背中を押され、ホルストは歩を進めた。
この後、密かに『兄弟愛(禁じられた遊び)』という
どう読んでも、2人が主役という本が売り出されることを
今の2人には、知る由もなかった。
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