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天魔の子(仮)  作者: タロさ
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変化のもたらしたもの

エルマがジルフを伴って街に向かった頃、エンデは、アルマンド教国の本殿に戻っていた。


目を覚ますと、そこはベッドの中。

寄り添っていたエブリンは、ベッドにうつ伏せになって寝ていた。


「目が覚めたようですね」


声を掛けたのは、シャーロット。


「うん・・・・・お姉ちゃんは・・・・・」


エンデが声を掛けようとすると、

シャーロットが指を1本、口元にあて、『静かに』というジェスチャーで止める。


「ずっとあなたの看病をして起きていたのよ。

 だから、今は寝かせてあげて」


『うん』と頷くエンデ。


辺りを見渡し、窓の外を見ると日が昇っている。


「あれから、2日も眠っていたのよ」


驚きである。


それ程大きな怪我をしたわけでもないのだが、

疲労だけで、こんなに長く寝ていた事なんて、初めての経験だった。


「2日も寝ていたなんて・・・・・」


そう呟いた時、寝ていたエブリンも目を覚ました。


「エンデ・・・・・起きていたのね」


「うん、お姉ちゃん助けてくれたんだね、ありがとう」


「いいの、それより・・・・・」


エブリンは、シャーロットと目を合わせる。

エブリンは、意を決して告げた。


「あの戦いの後から、みんなの体がおかしいのよ」


「おかしい?

 病気にでもなったの?」


「そうじゃないの」


エブリンは、シャーロットに合図を送る。


シャーロットは頷くと、左手を伸ばした。

掌ににゆっくりと魔力を乗せる感じで集中すると

そこには、エンデの『黒い塊』に似た物体が現れた。


「すごーい!

 僕と同じ力だ!」


喜ぶエンデ。

再び目を合わせたエブリンとシャーロット。


大きく溜息を吐く。


「エンデ、シャーロットは、光の魔法の使い手で、闇魔法は使えなかったのよ。

 それなのに、今ではこうして使える。

 これが、どういうことかわかる?」


「・・・いいこと?」


「確かに、いい事かもしれないわ。

 でも、同時にあり得ない事なのよ」


彼女の様に、子爵の娘ともなれば、幼き頃から『魔法適性検査』を受けている。


なので、自分の適性は知っているのだ。


彼女の場合、光の魔法にしか適性は無く、

闇の魔法が使える事などあり得ない。


なんとなくだが、シャーロットの身に起きたことを理解したエンデ。

自身の掌を見つめる。


「僕が関係あるのかな・・・・・」


「多分だけど・・・・・それで間違いないと思うわ」


「そっかぁ・・・・・」


エンデは、シャーロットと向き合う。


「シャーロット、なんかごめん」


「えっ!?

 なんで謝るの?

 私は、感謝したいくらいよ。

 今までより、魔力も上がった感じだし、それに・・・・・」


シャーロットの掌にある『黒い塊』からシェイクが飛び出す。


「この子を、召喚できるようになったのよ」


いつも連れているイメージだが、流石に連れて行けない所もある。

だが、この魔法が使えることで、もうそんな事を考える必要が無くなったのだ。


『ガゥガゥ』と甘えるシェイク。

頭を撫で、抱きしめているシャーロット。


「だから、感謝しているのよ」


「そっかぁ、わかった」


なにやらいい感じで、話が終わりそうだったのだが、

エブリンが溜息を吐き、付け加える。


「この事だけど、別にシャーロットに限った事ではないのよ」


そう言うと、エブリンも『黒い塊』を出現させ、そこからメルクを呼び出した。


「エブリンも使えるの!?」


驚くエンデ。

諦めたように首を振るエブリン。


「私とシャーロットだけではないわ。

 ともかく、庭に行きましょ」



エブリンを先頭に、3人は本殿の庭に向かった。


近づくにつれ、聞き慣れた『グァ!』という鳴き声が聞こえる。


「もしかして・・・・・あいつ、出てきているの?」


あいつとは、アンデットオオトカゲの事。


庭には、隠せない巨体が見える。

ガリウスと戯れるアンデットオオトカゲ。


「僕、呼んでないよ・・・・

 もしかして、ガリウスも使えるの?」


「ええ、そうよ。

 それに、ガリウスだけじゃなくて、ダバンもマリウルも使えるわ」


そこまで聞くと、流石にエンデでも理解できる。

この現象の犯人は、間違いなくエンデ。


「僕に何が・・・・・」


自分が起こした事に間違いはないのだが、どうしてこうなったかはわからない。

考え込むエンデに、シャーロットが語り掛ける。


「子供の頃読んだお伽話の中に出てくる事なんだけど、

 魔王は、配下に自身の力を分け与え、仲間を強く出来る力があるそうなの・・・・・

 わたしは、夢物語かと思っていたけど、あれは、本当の事が書いてあったのね」


「・・・・・それだと」


エンデは、天使たちに『魔王』と呼ばれたことを思い出す。


「僕、魔王なんだ・・・・・」


人ならざる力を持っていることは理解していた。

だが、人でなかったことに衝撃を受け、その場で立ち尽くすエンデ。


見かねたエブリンは、エンデに抱きつく。


「馬鹿ね。

 そんなのどうだっていいのよ。

 貴方は、私の弟。

 魔王だろうと何だろうと関係ないわよ」


「お姉ちゃん・・・・・」


「それに、貴方のお母さん、生みの親ね。

 その人は、悪魔だった?」


『ううん』と首を振る。


「なら、魔王ではないわね。

 正確に言うとすれば、魔王の力を持って生まれた人族で、私の弟よ」


抱き着いたまま、何度も『弟』と告げるエブリンに、エンデは嬉しく感じる。


「お姉ちゃん、ありがと・・・・・」


エブリンは、エンデの頭を撫で、『わかればいいのよ』という笑顔を向けた。


エンデに笑顔が戻り、嬉しさが込み上げてきたエブリンは、

その後も、抱き着いたまま離れない。


『エンデはいい子ね~』と猫なで声で甘やかす。


そんな、エブリンの様子を見ていたシャーロットは、『コホン!』と咳払い。


「あの・・・・・その辺りにしておかない?」


「あっ!

 ごめん、ごめん」


エブリンは、気持ちのこもっていない謝罪の言葉を口にしながら、エンデから離れた。


苦笑いを浮かべるシャーロットだが、

エブリンに肝心なことを伝えるように促した。


「そうだったわ。

 エンデ、貴方、元の姿に戻っているわよ」


「えっ!」


━━━そうだった。

   僕、姿が・・・・・・


エンデは、自分の頭に手を添えた。

『ワシャワシャ』と手を動かしてみるが、角には当たらない。


「本当だ!

 角が無くなってる」


安堵した。




その後、3人は、ダバン、マリウルの所にも行き、

魔法の事を尋ねるが、誰一人として不安になど思っておらず、

寧ろ、感謝されてしまった。


中でも、一番喜んでいるのがガリウス。


「これからは、何時でもこいつといられるんだ」


『ペシペシ』とアンデットオオトカゲの顔の横を叩く。

アンデットオオトカゲも、それに応えるように『グガァァァァァ』と声を上げた。


1人、寂しくなるエンデ。


━━━この子も、もう僕から離れるつもりなんだ・・・・・

   召喚者は僕の筈なのに・・・・・



そんなことを考えていると、そこにサハールたちも姿を見せる。


「主様!」


見た目は老人だが、何故か、張りや艶が戻ったように見えた。

サハールは、エンデの前で跪く。


後ろに並び、同じように跪くファールとバンダム。


「主様、この度は、このような力を授けて頂き、感謝の念に堪えません。

 今後も、貴方様に忠誠を誓います」


跪く3人は、深く頭を下げた。


本来なら、ここで言葉を返さないといけないのだが、

皆は固まっていた。


長く続く静寂に、疑問を抱いたサハールが顔を上げる。


「主様?」


「サハールたちにも、僕の力が分け与えあられたんだね。

 それは、良かったね・・・・・・この国の事は任せるから、これからも頼むよ」


「嬉しきお言葉、感謝致します。

 今後は、この国の発展の為、尽力させて頂きます」


「うん、宜しく。

 それでだけど、ちょっと、行かないといけない所が出来たから

 これから旅立つよ」


「は?

 はい・・・・・」


突然の事に驚くサハールたちを横目に、

急いで旅支度を済ませ、アルマンド教国を旅立つエンデたち。


行先は勿論・・・・・・


「やっぱり、気になるわよね」


「うん、サハールたちにも、影響があったんだから

 当然、ホルストにも、変化があった筈だよ。

 急いで確かめないと・・・・・」


「そうね」


精霊を連れているホルスト。

どのように変化が及んでいるのかがわからない今、

エンデたちは、急いでゴンドリア帝国へと向かった。



ブックマーク登録、有難う御座います。

不定期投稿ですが、よろしくお願いいたします。

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