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天魔の子(仮)  作者: タロさ
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エルマの旅の始まり

エルマが転移した後、

その場には、光の雨に打たれて、地面に横たわるエンデの姿があった。


「エンデ!」


体から煙を上げるエンデ。

駆け寄るエブリン。

皆も後に続く。


体から煙を上げているエンデに、

シャーロットが回復の魔法をかける。


傷が癒され始めると、エンデの意識が微かに戻る。

エンデはエブリンに力無く、笑いかけた。


「お姉ちゃんごめん、油断しちゃったよ・・・・・」


「うん、こういう事もあるわ。

 次に頑張ればいいのよ」


エンデの頭を膝に乗せ、優しく髪を撫でるエブリン。


「今は、休みなさい」


「うん・・・・・」


エンデは再び、眠りについた。





その頃・・・・・


見事に戦場からの逃亡に成功したエルマだが、気が付くとそこは森の中だった。

四方八方見渡す限り立派な木々。


「ここは、何処でしょう・・・・・」


エルマは、木々の間を通り、山を下り始める。

しかし、1日経っても山の中。

何の変化も見られない。


「迷ったのでしょうか・・・・・」


そう思いながら、暫く進むと、眼下に山道が見えた。


山道には、馬車の通った跡がある。


「この道を行けば、人里に出られそうですね」


やっとの思いで辿り着いた山道を歩き始めたが、まだ山の中。


━━━どちらへ向かえば街に着くのだろう・・・・・

   こちらで、あっているのだろうか・・・・・


そんなことを考えながら歩いていると、背後から馬車の音が聞こえた。


渡りに船とばかりに、エルマは道を塞ぎ、手を上げる。


『ヒィヒィィィィン!』


馬が嘶き、馬車は止まった。


「おい、嬢ちゃん、こんな所で何をしているんだ?」


「旅をしていたのですが、盗賊に襲われかけて逃げて来たのです。

 そのせいで、荷物も何もかも失ってしまって・・・・・

 厚かましいお願いですが、近くの街まで乗せて頂けませんか?」


この世界ではよくある話。


御者の男は、エルマの話しを聞き、なにやら慌てた様子。


「そりゃ、大変だ!

 いつここに来るかもわからねぇな。

 嬢ちゃん、早く乗りな!」


「有難う御座います」


街までの足を見つけることが出来たエルマ。

荷台に座り、安堵の表情を浮かべると同時に、

手に握っていた『白銀の首飾り』を眺めた。


クルルの『白銀の首飾り』は、弾け飛んだ。


今、手の中にあるのは、自身の物なのだが、

転移の為に使っただけなのに、首飾りには亀裂が入っている。


━━━力が強すぎたのかしら・・・・・

   街に着いたら、教会に行き、マリスィ様に連絡を・・・・・


そう決心するエルマだが、まだ不運は終わっていなかった。

荷台に乗っているエルマは、気分が落ち着き、辺りを見渡す。

その後、足元の藁が気になった。


何かを隠しているように膨らんでいる。

エルマは、そっと藁を捲った。


『!!!』


藁の下にあったのは、血の付いた衣類や荷物。

他に剣などの武器もある。


「血が付いている・・・・・

 これ、どういう事・・・・・」


思わず漏らしてしまった言葉。

それは、御者を務める男の耳にも届いた。


男は、急に馬車を止める。


そして、御者台に隠していた剣を手に取り、エルマへと向き直った。



「・・・・・・嬢ちゃんさぁ、余計な好奇心さえ起こさなければ

 痛い目を見ずに済んだのになぁ」


「貴方、これはどういうことです!

 もしかして、貴方は盗賊の一味なのですか!」


エルマの話は、まったくのでまかせだったが、

偶然にも、同じことが、近くで起きていたのだ。


その為、盗賊に襲われたと聞き、男は、エルマを放って置けなかったのだ。


「まさか、生き残りが居たとはな・・・・・」


見た者は、殺さなければならない。

だが、相手は女。

しかも上玉。


初めから、街に連れて行くつもりなど無い。

今、向かっていたのは盗賊たちのアジト。


女は、金になる。

だから、直ぐには殺さなかったのだ。



男は荷台に飛び移ると、剣先をエルマに向けて脅す。


「黙って従えば、命までは取らねぇ。

 だが、逆らえば容赦はしねぇぞ!」


男は、小娘と侮っていた。

語尾を強めて怒鳴れば、言う事を聞くと思っていた。


だが、それは間違いだと気付かされる。


エルマは、向けられた剣先の部分を、指2本でつまんだ。


「えっ!?」


男は、エルマの突然の行動に驚きながらも、剣を動かそうと振り回すが

『ピクリ』とも動かない。


「お、おい、どうなってやがる・・・・・クソッ!」


両手で剣を動かして、必死に抵抗する男。

だが、無駄な抵抗に終わり、

隙をつかれて、エルマに剣を奪い取られた。


「さて、今度は、私の番ですね」


剣先を男に向ける。


『ヒィィィ!』


荷台に腰をつく。

エルマは、表情を変えずに問う。


「それで、私をどうするのですか?」


━━━不味い、殺される・・・・・


『盗賊のアジトに連れて行く』

などと答えたら、今、この場で殺され兼ねない。


男は、感情のままに言葉を吐いた。


「お許しください!

 街でも、何処でも、お連れ致します。

 なので、命だけは・・・・・・」


「何処でも?」


「はい」


「本当に?」


「はい、言っていただければ・・・・・なので、命だけは・・・・・」


懇願する姿勢を見て、エルマは剣を納めた。



「盗賊のアジトに、行かなくていいのですか?」


男は、何度も頷いた。


「そうですか、では、一番近い街にお願いします」


「はい」


男は御者台に戻ると、手綱を引く。



再び馬車が走り出すと、エルマは、忘れていたかのように男に問う。


「そう言えば、

 貴方の名前を、聞いていませんでしたね」


「はい、あっしは『ジルフ』と申します」


「わかりました。

 では、ジルフ。

 当面は、貴方に馬車を引いてもらいます」


「・・・・・はい」


盗賊の荷物運びをしていたジルフは、この時から、エルマの御者兼、使用人にされた。



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