アルマンド教国 新たなる教皇
セグスロードが死に、生き残っている補佐もいない。
アルマンドは、上層部を失ったことで、今後指示を出す者がいなくなった。
だが、この国をよく知る者はいる。
「サハール、これからどうしたい?」
エンデの突然の問いに、驚いた顔をする。
「主様、それは・・・・・いったい?」
「このまま崩壊させ、死の国をつくるか?
それとも、アルマンド教国を建て直すか?
どっちにするか聞いているんだ」
「わ、私にお任せいただけると・・・・・」
「だからそう言ってるんだよ。
それで、どうする?」
サハールの気持ちは、決まっていた。
思い入れのあるこの国の崩壊など、望むわけがない。
「出来れば、建て直しを・・・・・」
「わかった。
じゃぁ、それで」
迷いなく答えるエンデに驚きながらも、嬉しさが込み上げてくるサハール。
━━━やっと、戻って来れた・・・・・・
感謝の意を伝える為、襟を正す。
「畏まりました。
今後、この国の発展に尽力いたします」
膝をつき、頭を垂れる。
「でも、1人だと大変だわ」
「ええ、そうね」
「なら、誰かを付けるか?」
仲間同士、顔を見合わせる。
エブリン、シャーロット、ガリウスは、お互いの顔を見る。
「ここは、やっぱり子爵のお嬢様に・・・・・」
その言葉に反応するエブリンとシャーロット。
二人は、顔を『ブンブン』と横に振った。
「嫌よ、それよりガリウスは次男だから、何処に居ても問題ないでしょ」
ガリウスは、マリウルを見るが、マリウルは、関わりたくなさそうにソッポを向く。
「おい、兄貴・・・・・」
「なら、決まりね」
「いや、ちょっと、待ってくれ!」
仲間同士で押し付け合いをしていると、黙って見ていたサハールが口を開く。
「主様、お願いが御座います」
「ん、何?」
「出来ましたら、あの者たちを頂きたいと思います」
サハールが顔を向けた先には、ファールとバンダムの死体があった。
「いいの?
あいつら、セグスロードの手下だったんだよ」
「はい。
寝返っていたとはいえ、元は、家族を思ってのこと。
ですので、もう一度、チャンスを与えてやりたいのです」
「わかった。
サハールがそれでいいのなら」
エンデは、ファールとバンダムの死体に近づくと、復活した左手を伸ばす。
いつものように、黒い塊が現れる。
2人は、その黒い塊に『ズルズル』と引き寄せられ、飲み込まれた。
エンデは、覚醒したことで、自然と死んだ者の魂を掌握できるようになっていた。
その為、アンデットとして復活させることも容易い。
「じゃぁ、出すよ」
今度は『ボタッ、ボタッ』と黒い塊から、
アンデットと化したファールとバンダムが零れ落ちた。
2人に近寄るサハール。
「・・・・・目を開けよ」
サハールの声に反応し、目を開く。
「私は、死んだ筈では・・・・・・」
「その通りだ、お前は死んだ。
だが、こうして生き返ったのだ。
アンデットとしてな」
「アンデット・・・・・」
お互いの顔を見合わせたが、生前とさほど変わりがあるようには思えなかった。
だが、死んだことは覚えている。
「本当に、アンデットになったのだな・・・・・」
「間違いない。
殺した本人が言うのじゃ。
これからは、主様に仕えてもらうぞ」
「・・・・・」
戸惑う2人だが、主が誰かは理解している。
エンデに、向き直る。
「死してなお、私たちに、何をさせたいのだ!」
反抗的な態度を見せるバンダム。
だが、直ぐに後悔することとなった。
無言で近づいたサハールは、
迷いなく、闇の剣でバンダムの腕を切り落としたのだ。
激痛が走る。
『ぐぁぁぁぁぁ!』
蹲るバンダムに怒りをぶつける。
「貴様!
主様に向かって、何たる態度だ!」
横で見ていたファールは、アンデットなのに、痛みがあった事も驚きだが、
それ以上に、逆らうことが許されないと悟った。
ファールが、改めて問い直す。
「それでは、何故、私たちを復活させたのでしょうか?」
「ああ、それはサハールに聞いてよ」
エンデは、そう告げると、切り落とされたバンダムの腕の治療に向かった。
ファールは、サハールに向き直る。
「・・・・・お前たちが裏切ったことは、正直許せぬ。
だがな、家族の為と知れば、多少の恨みも晴れよう」
「サハール様・・・・・」
「もう一度、この儂に仕え、この国の為に尽くしてみぬか?
そうすれば、今後も家族と暮らせるぞ」
「家族と暮らせるのですか?」
「ああ、勿論だ」
治療を終えたバンダムも、話に耳を傾けていた。
そして・・・・・・
2人は、サハールに使えることを約束する。
だが、これで終わりではなかった。
『ただ1つ、気掛かりがある』と申し立てるファール。
それは『天使』。
ファールは、2人の天使を召喚したことをエンデに伝えた。
「え~、また天使なの!」
呆れたように嘆く。
「主様、どうなさいますか?」
作戦を思いつかない今、何を考えても無駄だとばかりに、エンデは吐き捨てる。
「まぁ、何とかなるでしょ」
「主様・・・・・」
エブリンたちは、いつもの事だと溜息を吐く。
「まぁ、確かに考えても仕方がないかもしれないけど、それより・・・・・」
「ん?」
エンデを見るエブリン。
「随分、成長したわね」
「あははは・・・・・
僕も驚いたよ」
成人の体形に変化したエンデ。
角も生えてる。
「今の貴方、人族には見えないわよ」
「お姉ちゃん、どうしよう・・・・・」
体形は変わっても、内面は変わっていない。
姉であるエブリンに泣きつくエンデだった。
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