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天魔の子(仮)  作者: タロさ
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貴族の思惑 崩壊

黒煙が上がる暗闇の中、エンデがゆっくりと降りてくる。


「主!」


声をかけ、歩み寄るダバン。


「ダバン、応援に来たよ」


「応援と言っても・・・・」


「うん、今ので終わったね」


何でもない事のように告げるエンデ。

目の前で起こった出来事に、愕然としているゲルハルト。


「これが悪魔の力だというのか・・・・・」


集まっていた兵士たちが一瞬にして消し炭と化した。

先程まで、ダバンを倒すことに意欲を見せていた兵士たちは、もうこの世にはいない。


生き残っている兵士もいるが、

今の攻撃を見て、敵対する意欲など消し飛んでいる。


武器を捨て、膝をつき、頭を垂れる兵士たち。


「もう終わりだ・・・・・」


「私たちは、何と戦おうとしたのだ・・・・・」


情報の共有はされていたので、分かっている。

この街に滞在することがわかった時に、厳命として伝えられた一言。


『手を出すな』


大人しくこの街から去ってもらうことが得策だとわかっていたからこその指示

だった筈・・・・・



『何故、このようなことに・・・・』と後悔しても遅い。


全ては、この街の利権欲しさに手柄を得ようとしたアイゼン バラゴのせいだ。

指示をだした筈の男が、権力に溺れ、自ら破り、このような事態を招いた。


全ては、自業自得でしかない。


その様に仕向けたのは、ドミニク デモン。

アイゼン バラゴは、まんまと、彼の思惑に乗せられていた。



ドミニク デモンを知る者からすれば、

挨拶を交わす程度の仲でしかなかったアイゼン バルゴに

街の半分を任せる事などあり得ないとわかっていた。


だからと言って、その事をアイゼン バルゴに親切に教える者などいない。


他の貴族からすれば、アイゼン バルゴがいなくなれば、分配金が増え

自身が潤う可能性があがる。


それに、ドミニクを裏切ることは出来ない。

彼を裏切れば、この街で住むことはおろか、買い物すら出来なくなる。


今までなら、教会が取り仕切っていたから

その様なことは無い。


だが、今は違う。

この街の利権の大半を握っているのは、ドミニクなのだ。

だからこそ、ドミニクに逆らう事など、あり得ない。


ただ例外となる存在もいる。

同じ子爵でもあるアイゼン バルゴだけは、そうとも限らない。


アルマンド教国でも、同じ爵位を持つ者同士の争いは好まれない。


最悪、本国が乗り出し、爵位のはく奪すらあり得るのだ。

その事が解っているからこそ、ドミニク デモンは、このような作戦に出た。


万が一、アイゼン バルゴが勝てば、勝利を称えればよい。

しかし、街の入り口での戦いを知っているので、

それはあり得ないことだと分かっている。


「今頃、どうなっているのでしょうかね」


心配するような言葉を吐くが、

その顔には、言葉と裏腹に、笑みを浮かべている。


「ご心配なさるのですか?」


子飼いの貴族の1人、【スコット ダウン 】男爵も、笑みを浮かべながら

驚いたような顔をし、場の雰囲気を和ませていた。



そこにウオッカ サントーネが入って来た。


「おお、ウオッカ、それで、あちらの様子はどうだ?」


「はい、見張りを増やしたことがばれて、

 あの者共の反感を買い、屋敷にまで攻め込まれています。

 そこで戦闘になり、大勢の兵士が殺されました。


 すでに決着は着いたようなものでしたので

 先に報告をと思い、こちらに伺った次第でございます」


「そうか、ご苦労だった」


報告を終えたウオッカは、再びエンデたちを監視する為に、

部屋から出て行こうとしたその時、廊下側から扉が破壊られた。


「お邪魔するわよ!」


現れたのは、2人の少女と2頭のアンデット。


「貴様は、あのガキの仲間!」


「へぇ~、エンデの事も私たちの事も知っているんだ」


エブリンの言葉に、眉を顰めるウオッカ サントーネ 。


━━━つけられたか・・・・・


「貴様らは、ここが何処かわかって押し入ったのか!?

 許可もなく、貴族の屋敷に押し入れば、その場で殺されても文句を言えないのだぞ」


「知らないわよ

 でも、あんたたちが、何か企んでいることはすぐにわかったわ」



意気揚々と語るエブリンだが、ドミニク デモンは冷静に見ていた。


━━━こいつらの他には、いないようだな・・・・・


エブリンとシャーロットの前に立つドミニク。


「なかなか綺麗なお嬢様方ではないですか、

 どうですか?

 物騒なことはやめて、一緒に飲みませんか?」


「あら、面白い事を言うものね。

 でも、自己紹介も出来ない男に、興味なんてないわ」


吐き捨てるように言うシャーロット。


「それは失礼を・・・・・・

 私、ドミニク デモンと申します。

 このアルマンド教国で子爵の地位を賜っている者です。

 以後、お見知りおきを」


優雅に自己紹介を終えたドミニクに、シャーロットが辛辣な言葉を浴びせる。


「ドミニク子爵様、私は、シャーロット アボットと申しますが、

 1つお聞きしてもいいかしら?」


「なんなりと」


「そう・・・・・」


間を開けて、シャーロットは続けた。


「この国の子爵様は、幼女が好みですの?」


「はっ?

 どういうことかな?」


「ですから、このような体型の娘が好みなんですよね?」


シャーロットが指したのは、エブリン。


「ちょっ!ちょっと!」


思わず体を隠すエブリン。


ふざけたシャーロットの問いかけに、こめかみを『ピクピク』させる。


「何時、私がそのようなことを・・・・・」


「えっ!

 先程、お誘いされていたではありませんか?

 それとも、私の聞き間違いかしら?」


「このガキ・・・・・」


ドミニクが睨みつけていると、シェイクが『バゥ』と吠えた。


「間に合ったようね」


ポツリと呟いた言葉に、反応するドミニク。


「なに?

 どういうことだ」


何のことかわからないドミニクだったが、

直ぐにシャーロットの言葉の意味を理解することとなった。


『ドーン!』と響く音と共に、屋敷が揺れる。


「何事だ!」


うろたえるドミニク、スコット、ウオッカの3人。


再び『ドーン!』と響いた後、今度は『バキバキ』と屋敷が破壊された音が聞こえてきた。


慌ててバルコニーに飛び出すドミニク。


そこで見た光景は、信じられないものだった。

巨大なトカゲが体当たりを敢行し、屋敷を破壊している。


「な、なんだ、あの化け物は!」


思わず後退るドミニク。

横にいたウオッカは、何かに気が付く。


「ドミニク様、あ、あれを!」


巨大なトカゲの背に乗り、合図を送る男とオオカミを見つけた。


「あの者の仕業か、

 誰か、あの男を止めろ!」


大声を上げ、屋敷の中に向かって叫ぶドミニクも、あることに気が付く。


「おい、あの者たちは、何処に行った・・・・・」


部屋の中に、エブリンたちの姿が無い。


「あれも、あのガキどもの仕業かぁぁぁぁぁ!!!」


怒り狂うドミニクは、壁に飾ってあった剣を持ち、

エブリンたちの後を追った。



ブックマーク登録、有難う御座います。

不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。

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