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天魔の子(仮)  作者: タロさ
135/236

奪還と報復 アルマンド教国領内

アルマンド教国に向かうエンデ一行。

その中には、マリウルとガリウスの姿もあった。


エンデたちがゴンドリア帝国の王都を去り、暫くしてからの事。

ホルストからエンデたちがアルマンド教国に向かったと聞き、

マリウルたちは慌てて後を追ったのだ。


そして追いつき、今に至る。


「いやぁ、間に合って良かったぜ。

 それにしても、こいつは乗り心地が良いな」


アンデットオオトカゲの背中を『ペチペチ』と叩き、笑顔を浮かべるガリウス。


「お前、相当、こいつが気に入ったんだな」


「ああ、一家に一頭欲しいと思うぜ」


マリウルとガリウスの会話に、エンデも加わる。


「でも、大きいから場所を取るよ、それに食料にも・・・・・」


『困るよ』と伝えるエンデ。


「確かにそうだが、あそこの砦で飼うなら、問題ないだろ。

 近くには、魔獣や獣も多いし、住処にも困らねぇよ」


その言葉を聞き、マリウルが尋ねた。


「お前、それだと、あの砦でずっと暮らすと言っているのと同じだぞ」


「こいつがいてくれるのなら、それで構わない。

 それに、あそこは砦と言っているが、街みたいなもんだから何も問題ない」


二人の会話を聞いているのはエンデだけではない。

当然のように、他の者たちも聞き耳を立てていた。


そして・・・・・


「もしかして・・・・・ガリウスは、この子が欲しいの?」


直球で問うのは、エブリン。


その質問に、ガリウスも答える。


「ああ、出来る事ならそうしてぇ」


先程、『ペチペチ』と叩いた背中を、今度は撫でた。


『グルルルルル・・・・・』


アンデットオオトカゲは喉を鳴らし、気持ちよさそうな声を上げる。

その態度に、エンデは、一抹の不安を覚えた。


もしかしてアンデットオオトカゲまでも・・・・・


脳裏を横切るのは、メルクとシェイクの2頭の姿。

エンデは、このことを頭の隅に追いやり、考えないようにした。



暫く進み、ゴンドリア帝国とアルマンド教国との境界に近づくと

1つの街が見えて来た。


だが、街に入るには、門を潜らなければならない。

ある意味、ここは敵国。

果たして、自分たちを受け入れてくれるのか不安になる。


「悩んでも仕方ないわ。

 みんな降りて、ここから歩くわよ」


エブリンの指示に従い、アンデットオオトカゲから降りる。

そして、アンデットオオトカゲ、アンデットオオカミを空間の中に戻した。


残っているのは、エブリンのメルクとシャーロットのシェイクの2頭だけ。


一行はゆっくりと進み、街に近づく。

すると門兵が気付き、エンデたちを止めた。


「この街に入るのであれば、通行税として、1人銀貨2枚を払ってもらう」


銀貨2枚・・・・・


何処の街でも、通行税に似たようなものは取られるが、大体が銅貨数枚程度。

だが、ここでは銀貨。


銅貨100枚で銀貨1枚・・・・・・

それを考えれば、どれだけ高額かがわかる。


「ちょっと!

 それ、本気で言っているの!?」


「当り前だ。

 ここは、アルマンド教国。

 神の教えに従い、神に導かれし国の入り口なのだぞ。

 その国に入れるのであれば、銀貨2枚でも安いわ!」


門兵は、『それがこの国のルールだ。払え!』と言わんばかりに手を差し出す。

これ以上、ここで揉めても時間の無駄だと思い

人数分の銀貨を支払う。

しかし・・・・・


エンデ、エブリン、シャーロット、ダバンは無事に通行で来たのだが、

マリウルたちは止められた。


「あんたたちは、ゴンドリア・・・・・ではないようだが・・・・」


「ああ、私たちは、アンドリウス王国の兵士だ。

 この方たちの護衛として同行している」


「そうか。

 悪いが、他国の兵士の通行に関しては、銀貨5枚を頂いている。

 不足分を払っていただこうか」


先程の通行料の話をしている時に、マリウルたちの姿も目に入ってた筈。

百歩譲って、この門兵が気が付いていなかったとしても、

他の門兵が気付いていた筈だ。


それなのに、今になって急に銀貨5枚と吹っ掛けて来た。


━━━怪しい・・・・・

   もしかして・・・・・・


通り過ぎた後、一部始終を見ていたエブリンが門兵に近づく。


「貴方たち、この街の通行税だけど、本当に銀貨2枚なの?

 それに、今度は銀貨5枚だって・・・・・なんか怪しいわね・・・・・」


エブリンは、胸の前で腕を組み、門兵を睨んだ。

『うっ!』と一瞬怯む様子を見せた門兵だったが、直ぐに気を取り直す。


「貴様、この国に仕えている我らを疑うのか!

 いいか、ここはアルマンド教国だぞ。

 我らに歯向かうということは、神に歯向かうのと同義。

 その事を理解した上で、その様な戯言を申すのか!」


兵士の声を聞きつけ、兵舎や近くにいた兵士たちが集まる。

そして、道を塞ぐと同時に、エンデたちを分断した。


まだ街の外にいるマリウルたち。

街の中に入っているエンデたち。

周りを兵士に囲まれ、1人、孤立させられているエブリン。


1人の兵士が、前に進み出る。


「お嬢ちゃん、悪い事は言わない。

 素直に従い、言われたとおりにしろ。

 そうすれば、無事にここを通れるぜ」


兵士たちは、相手が女の子供だから舐めてかかる。

『脅せば、何とかなるだろう』

そう考え、怖がらせる為に剣を抜いた。


それが最悪の選択だと知らずに・・・・・・


エブリンの足元で、メルクが低い態勢を取り、唸り声をあげている。

エブリンに触れることを許さないつもりだ。


メルクの唸り声に反応し、シャーロットの腕に抱かれていたシェイクも腕から飛び降り

兵士たちの足の間を抜け、メルクの横に並んだ。


「子犬が増えたところで、どうってことないぜ」


余裕を見せる兵士たち。


「少し、痛い目を見てもらおうか」


その中の1人が、前に進み出てエブリンを掴もうと手を伸ばした。


それが引き金となる。


伸ばされた手が、エブリンに触れようとした時、メルクが容赦なく噛みついた。

アンデットとは、いわばリミッターの外れた状態、

その為、メルクの咬合力(こうごうりょく)は大木をも粉砕する。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」


襲い来る痛みに、大声で喚く兵士。

手の骨は粉砕され、引き千切られて失っている。


暴れる兵士の姿と、一瞬の出来事に立ち尽くす兵士たち。

その姿に、後方から声がかかる。


「気を保て!

 相手は小娘と犬コロだ。

 遠慮はいらん。

 殺してしまえ!」


指示を出す髭面の兵士。

1人、少し離れたところにいる。


「あれって、逃げる用意?」


シャーロットの見解にダバンが笑う。


「ある意味、そうかもな。

 でも、それには無理があるようだぜ」


「え!?」


慰問に思ったシャーロット。

ダバンが教えるように指先で示す。


「あれだよ」


「ああっ!」


シャーロットも理解した。

髭面の男の背後から迫る黒く小さな物体。


「いつの間にあんなところへ行ったのかしら・・・・・・」


いつの間にかメルクから離れ、髭面の兵士に迫っていたシェイクは、

兵士の足元に辿り着くと、そのままジャンプして喉元に喰らいついた。


喉を食い破られ、地面に倒れた髭面の兵士。

言葉を発しようとする度に、『ヒューヒュー』と音が漏れる。


口元を真っ赤に染めたシェイクは、

『ガウッ』と返事をし、誇らしげにその兵士の上に立った。


この2つの出来事で、兵士たちからは、余裕の表情は消えた。


「なんなんだよ・・・・・」


もう、支持を出す兵士もいない。

お互いに顔を見合わせ、『オロオロ』とするだけ。



その間に、ダバンたちやマリウルたちと合流したエブリンは、兵士たちに詰め寄る。


「それで、先程の件だけど・・・・・」


「えっ?」


「通行税の事よ。

 まだ、払えというなら

 私たちは、貴方たちを全滅させた後、

 ここを通してもらっても構わないのだけど・・・・・それでいい?」


最初に応対し、生き残っていた兵士が首を横に振る。


「そう・・・・なら、通ってもいいのよね」


エブリンの問いかけに、兵士は首が千切れるかと思うくらい全力で頷く。


「ありがと。

 それと最後に・・・・・」


『まだ、何かあるのか?』と疑問に思う兵士。


「通行税って、本当に銀貨2枚と銀貨5枚なの?」


「・・・・・」


エブリンの問いに返事は無い。


だが、周りの兵士たちが騒がしくなった。


『えっ!

 銀貨2枚?・・・・・』


『銀貨5枚ってなんだよ・・・・・・』


顔を見合わせるエブリンとシャーロット。


「巻き上げようとしていたのね」


2人の視線が、1人の兵士に向けられた。


額から汗を流す兵士。

別の兵士がエブリンに尋ねる。


「あの、どういうことでしょうか?」


「こいつらが・・・・・」


エブリンは、この街に着いてからの事を、兵士たちにも聞こえるように話す。

そして、この騒ぎの元凶が、その事だとも伝えた。


静まり返る兵士たち。

少しずつざわめき始める。


『あいつは、そんな事の為に死んだのか?』


『俺たちは片棒を担がされたという事か・・・・・』


仲間の悪事に嫌悪を示す者もいる。


こんな事をしなければ仲間が死ぬことは無かったのだ。

そう考えると、この事件を起こしたものを許せる筈が無い。


兵士たちは素早く対応する。


悪事に加わったと思われる兵士たちを特定し、

直ぐに捕らえて連行した。


そして、一連の作業が終わると、

先程、エブリンに聞いてきた兵士が前に立った。


「改めて、謝罪致します。

 私は、この街の兵士【フロンド】と申します。

 お金はお返しいたします。

 大変ご迷惑をおかけいたしました。

 どうぞ、お通り下さい」


フロンドから全額返金された後、エンデたちは街へ入る。


ただ、何のお咎めも無かったことを、疑問に思いながら・・・・・



不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。

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