奪還と報復 謁見
「エブリン ヴァイス、エンデ ヴァイスよく来てくれた。」
国王、サンボーム ゴンドリアは、申し訳なさそうにエンデたちを出迎える。
「ご無沙汰しております、陛下」
エブリンが、カーテシーで挨拶をした。
続いて、エンデも挨拶をする。
「陛下、お久しぶりでございます。
この度の件、心中、お察しいたします」
ヴァイス家長男として、まともな挨拶をしたエンデの姿に
サンボーム ゴンドリアよりも同行していたガリウスとマリウルが驚いていた。
2人の様子が視界に入ったエンデは、『ムッ』と頬を膨らませる。
そんなやり取りに、笑みが零れたサンボーム ゴンドリア。
「貴殿の周りは、相変わらず騒がしいようだな」
「はい、出来の良い弟ですから」
エブリンの含みのある言い方に、ダバンが笑い出してしまった。
「主も姉君には、叶わないようですだな」
「うるさい!!」
国王の前でもマイペースなエンデ一行に、
謁見の間に集まっていたゴンドリア帝国の貴族たちは眉をしかめる。
その中の一人。
侯爵の地位を持つ【ベンガル ドナー】は、我慢の限界に達し、
大声でエンデたちを怒鳴りつける。
「貴様ら!
陛下の御前であるぞ。
分をわきまえよ!」
謁見の間に響いたベンガルの声。
共鳴するように、水の入った花瓶も揺れ、床に落ちて割れた。
エンデたちもあまりの大声に耳を塞いでいる。
謁見の間に静けさが戻ると、ベンガルは『フンッ!』と鼻を鳴らし、
知らぬ顔をした。
ひとしきりの騒ぎが収まると、サンボーム ゴンドリアは、『コホン』と咳をした。
「話を戻すぞ」
サンボーム ゴンドリアが話を続ける。
「ホルスト、先ずは、ここまでの経緯を教えてくれ」
「畏まりました」
ホルストは、ゴンドリア帝国の領地に戻って来たところから話を始めた。
盗賊が、アンドリウス王国の教会騎士だったこと。
食料、物資の回収。
教会騎士たちの造った新たなる砦の事。
勇者一行を屠った事。
アルマンド教国が関与している事。
最後に、民がエンデを『悪魔』と勘違いをして恐れていると、順を追って話した。
話が進むにつれ、集まっていた貴族たちの顔色が青くなる。
そして、ホルストが話し終えたとき、先程大声を出したベンガルを含め
貴族たちは、言い知れぬ不安に満ちた表情をしていた。
その理由は、『勇者』とアルマンド教国。
この世界で強大な力を持ち、神との交信さえ、やってのけると言われているかの国。
その国が『勇者』を送り込み、民を掌握していたとなれば、
今後の展開が予想できた。
「暴動が起きるぞ・・・・・」
貴族の中から聞こえて来た言葉。
その言葉に、同調するようにほかの貴族たちも頷く。
緊迫感に包まれる。
だが・・・・・
「暴動なんて、起きないよ」
あっさりと言い切るエンデ。
エンデの仲間たちも、『どうして暴動が起きるの?』といった顔をしていた。
「しかしだな・・・・・」
貴族の1人が声を上げたが、その声を遮ってホルストが話した。
「陛下、先程申しましたが、エンデ殿を民は『悪魔』と勘違いをしております」
「ああ、先程聞いたが?」
「その理由なのですが・・・・・」
『チラッ』とエンデを見る。
「僕が、暴動を起こしかけた者たちを屠ったからだよ」
「えっ!」
「えっ!」
「それで、どうして暴動が起きぬと言えるのだ?」
戸惑う貴族とは別に、サンボーム ゴンドリアは訳を尋ねた。
「それは・・・・・」
ホルストは、エンデたちが王都に入ってからの出来事を細かく説明した。
すると、サンボーム ゴンドリアは、慌てて壇上から降りて
ベランダへと向かった。
謁見の間のベランダからは、王都が一望できる。
そのおかげで、サンボーム ゴンドリアは、何時でも街の様子を見ることが出来るのだ。
ベランダに辿り着き、街の様子を見る。
そこに見えたのは、いつもと変わらぬ賑やかな人々の行き交う景色などではなく、
誰一人行き交う者がいない、殺伐とした景色だった。
「民は、何処に行ったのだ・・・・・?」
愕然とするサンボーム ゴンドリア。
追いついた貴族たちも、自分たちが王城に入る前との街の様子との違いに、
言葉に詰まっている。
「陛下・・・・・」
か細い声で、サンボームゴンドリアに声を掛けるベンガル。
憔悴しきった表情のサンボーム ゴンドリアに、ホルストが申し訳なさそうに話しかけた。
「あの・・・・・何か誤解をなさっているようですが、
民は、生きていますよ。
確かに、暴動を起こそうとした者たちは、精神がおかしくなってしまいましたが
生きていることは、間違いありません」
「では、何故、誰もおらんのだ!?」
「それは、先程も申し上げましたが、
この国が悪魔に乗っ取られたと思い、皆、家屋に閉じ籠っています」
「そうなのか?」
「はい、間違い御座いません」
「そうか、それ程に先程の話に上がったエンデ殿の『畏怖のオーラ』は強力なのか?」
ホルストへの問いかけだったが、返事を返す前にエブリンに問うエンデ。
「やってみてもいい?」
「絶対ダメ!!!
あんたは、この国を潰す気なの?」
「そんなつもりはないけど・・・・・」
「なら、ダメよ。
それでなくても誰かのせいで、この国の兵士は少なくなったんだから」
「うん、わかった」
2人の会話に出てくる不穏な発言に、
ホルストとマリウル、ガリウスは苦笑いを浮かべていた。
結局、この日は報告だけで終わり、今後の対策については、
明日からの話し合いで決めることとなった。
不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。




